町作りは意外と順調です~奴隷の子たちはジークが大好きです
奴隷を買って1週間が経った。彼女たちは僕が作った居住区に住んでいる。
「今日も皆の様子を見て回ろう」
朝ご飯を食べたら一人で居住区へ行く。母さんたちはお留守番。
彼女たちはまだ魔物を怖がっている。
「2週間経ったら、魔物と触れ合う機会を作ろう」
やはり人間は魔物を怖がる。
魔物たちはそうでもないが、怯えられると、やはり気分が悪くなる。
その結果険悪になってしまう。
「先はまだまだ長いかな」
欠伸を済ませてから、彼女たちへ会いに行った。
ジークが買った奴隷は50人で全員女性で、貴族の娘や地主の娘、果ては王女である。全員が育ちよく、土や泥とは無縁の生活だった。
彼女たちは皆、借金のカタとして売られた。
幸せが続くと思っていたのに、突然の不幸。
普通なら、人生に悲観し、神を呪い、買い主に怯えるばかりだ。
農業などという力仕事などできないと不平不満を言うだろう。
彼女たちに目を向けよう。彼女たちの様子だが、怯えているだろうか? 土の家にぶつくさ文句を言っているだろうか? 奴隷という身分に悲観しているだろうか?
ましてや、ジークは魔物の王だ! 魔王ジルやフェンリムに九尾などを従えている!
恐怖で死を望む?
答えはNoだ!
彼女たちは強かった。たった一週間で、この生活に慣れた。
「おはよう、ロクサーヌ」
「おはようございます、エミリアさん」
彼女たちは朝起きると、近場の貯水池で顔を洗う。
「お水、泥交じりなのが嫌だね~」
「蟻人と蜂人が作った即席だもの。仕方ないわよ」
「もうちょっと綺麗なお水が使えたらな~て思うの」
「ジーク様に相談してみる?」
「そうだね~」
ロクサーヌの横で顔を洗う女の子たちは、のほほんと世間話をする。
彼女たちは泥交じりの水で顔を洗うことも、体を洗うことも慣れてしまった。貴族や地主の娘とは思えないほどの胆力だ。
「おはようございます、スーさん、アンナさん」
ロクサーヌは顔を洗うと、スーとアンナに笑いかける。
「おはようございます! えっと、ロックさんだっけ?」
「ごめん! まだ名前覚えきれてないの!」
スーとアンナは苦笑い。ロクサーヌも苦笑い。
「ロクサーヌ・アトランタです」
会釈一つとっても中中に気品がある。
「そうだそうだ! ロクサーヌさんだ!」
「アトランタ国の第一王女様だったんだよね! 凄いなー!」
一方、スーとアンナは元気いっぱいだ。笑顔が素敵である。
「もう王女では無いです。売られてしまいましたから」
「そうだね~。私も売られちゃったし」
「奴隷になっちゃうなんて思わなったね~」
三人は暢気に笑い合う。
彼女たちは今の境遇を悲観していなかった。
むしろジークに買われてよかったと思っている。
彼女たちの手足には手枷など無い。首輪も無い。彼女たちは自由だ。
また彼女たちは処女である。一度も殴られたことは無いし、乱暴もされていない。
これらは、彼女たちにとって奇跡的だった。
奴隷として売られた時は、さすがに落ち込み、世界を呪った。性奴隷という人と扱われぬ人生を覚悟した。
だがジークに手枷と首輪を外され、絶対に乱暴しないと誓われた時、心に光が差した。
「ジーク様、お昼くらいに来るかな?」
スーがポツリと呟くと、ロクサーヌの顔がポッと赤くなる。
「そうですわ! ジーク様はお昼ごろいらっしゃいます! のんびりお喋りしている暇はありません!」
ロクサーヌはジークの名前を聞くと、キビキビと顔を洗い、食堂へ行く。
食堂は50人が一斉に食事できるほど大きいが、今は料理当番など決まっていないため、パンと果実の山がテーブルに積まれているだけだった。
ロクサーヌはパンと果実を口に押し込む。その豪快さは姫だったとは思えない。
「お姉ちゃんおはよう」
「おはようございます、お姉さま」
食べ終えたところでロクサーヌの妹たちが欠伸をしながら食堂に現れる。
「あなたたち、遅いですよ? まさか昨日も夜遅くまでお喋りしていたのでは無いでしょうね?」
ロクサーヌがキュッと目をキツクすると、妹たちは苦笑いする。
「だって、メリムのお話が面白いんだもん」
「皆でやると手遊びってとっても楽しいんですよ!」
妹たちはクスクスと、昨日の夜を思い出して笑う。好きなだけ、気の知れた仲間や友人と、他愛の無いお喋りをする。飽きるまで手遊びをする。王族時代では考えられないほど贅沢な時間だった。
もちろん、あの時に比べて生活水準は悪化している。しかし、あの時よりも今のほうが確実に楽しかった。
「あなたたち、自覚が足りませんわ」
ロクサーヌは妹たちをキツく睨む。
「私たちはジーク様の性奴隷です! 今までのようなお気楽な王族では無いのです! 私たちの役目は結果を出してジーク様に喜んでもらうこと! なのにまだ結果を出せていません! 最低限、自分たちで稲や小麦を取り、自給自足ができるようにならないといけないのに、今はそれすらも出来ていません! ジーク様にこうしてパンを買って頂いているのが実情です! 恥ずかしいと思わないのですか!」
ロクサーヌは静かにだが確実に心の奥で怒りを燃やす。王女時代では考えられない姿だった。
「お姉ちゃんはジーク様が大好きだね」
「ジーク様、カッコいいからね!」
妹たちはそんな姉を見てクスクスと笑う。
「な!」
ロクサーヌの顔が真っ赤なリンゴのようになる。
「ジーク様って魔物の王だけどすっごく優しいし、落ち着いてるよね。白馬の王子様みたい!」
「魔王ジルや九尾が怖い! そんな怖い奴らを従えてるジーク様ってカッコいい!」
「ふざけるのもいい加減にしなさい!」
ロクサーヌは妹たちの反撃に耐えられなくなり、急いで食堂から逃げ出す。
そして自室へ戻ると深呼吸して、畑へ行く準備をする。
「ジーク様……」
畑へ行く準備をしている途中、ロクサーヌは考えてしまう。一人になると、妄想が止まらなくなる。
ジーク様は私たちを犯さないと約束した。でも、私にだけ、特別な気持ちを抱いてしまい、犯してくださったら? 子供ができてしまいます。ジーク様はお優しいから、私と結婚してくださいます。私はジーク様の妻として、ジーク様を支えなければ!
一度妄想が始まると、体が熱く成って仕方がない。
「ジーク様……」
熱っぽい吐息が止まらなかった。
ロクサーヌはジークに恋をしていた。
ロクサーヌだけではない。
奴隷たちは、ジークに恋をしていた。
ここから10話くらいはゆっくりとイチャイチャ町作りやりたいけど、ゆっくりし過ぎかな? 5話くらいに収めたほうが良いかな?
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