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金策~王様と認められて下僕ができました

「こちらになります。どうぞお座りください」

 ジェーンさんに案内された部屋は、ふっかふかの長いすに長テーブルが、部屋の中央にデンと置かれる応接室だった!

「凄い部屋だ!」

 内装を見て心躍る。壁には高級そうな絵が飾られている。装飾品も飾られている。豪華で、綺麗だ!


「こういう部屋や家を母さんたちにプレゼントしたいんだよなぁ」

 古の森の実家も悪くない。木をくり抜いた部屋、泥などを固めた家。作りは単純だけど、あれはあれで良い。

 ただ人間の家を見ると、どうしても見劣りしてしまう。

 母さんたちは、もっと綺麗な家、綺麗な家具、綺麗な服が似合っている。この建物のように豪勢な家が良い。

 そう思うからこそ、人間の技術が欲しい。


 冒険者だった頃、町を探索していた時に、服屋や家具屋を見て思ったことだ。


「どうされました?」

 ジェーンさんが怪訝な顔をしたので咳払いする。


「綺麗な部屋だなって思って」

「ありがとうございます」

 ジェーンさんは優しく頭を下げる。礼儀正しい人だ。


「黄金を売りたいとのことでしたが、差し支えなければ理由をお聞きしても?」

「町を作りたいんです。そのためにお金が居るんです」

 素直に事実を話す。後ろめたいことをする訳でもないし、問題ないだろう。


「町ですか! 素晴らしいです! 場所はどこでしょう?」

 これは少し考える。古の森付近は人が近寄らない。怪しまれたら?

 だが誤魔化してもしょうがない。僕は奴隷や職人を雇うつもりだ。ならここで誤魔化しても後で困る。


「古の森の近くです」

 それにジェーンさんの反応も見たい。もしもこれで渋られるなら、場所を移すなど対策が必要だ。


「古の森ですか? あそこは国際条約で接近が禁止されている地区ですよ?」

 なんてこった! さすがにそれは知らなかった! こうなったら町を作る場所を移すしかない。

 怪我の功名だ。ここで聞いておかなかったら取り返しのつかないことになっていたかもしれない。


「ジークはワシら魔物の王じゃ」

「我が家を出入りするのに禁止も何も無かろうに」

 母さんたちが明け透けにばらした!


「か、母さんたち!」

 焦ってリム母さんとタマモ母さんを見る!

 しかし二人はとても落ち着いていた。


「この女子なら大丈夫じゃ」

「ジークを好いとる。なら合格じゃ」

 二人は目力を解き、ジェーンさんに向き直る。


「魔物の王ですか?」

 ジェーンさんは母さんたちの言葉が信じられないようだ。


「事実じゃ」

 メキメキとタマモ母さんが九本の尻尾を現す!

「これで信用できるじゃろ」

 メリメリとリム母さんの顔がオオカミに変わる!


「ひ!」

 ジェーンさんはひっくり返って、椅子から転げ落ちた。


「母さん!」

「ここはワシらに任せておくんじゃ」

「ジークは王のくせに謙虚じゃのう。とてもいい子じゃと思うが、時にはふんぞり返ることも必要じゃ」

 母さんは微笑んで狼狽える僕を宥める。

 二人の様子を見るに、何か考えがあるようだ。


「これで信用できたかの?」

 タマモ母さんはジェーンさんをじっと見る。

「お、黄金に輝く九本の尻尾! 銀色に輝くオオカミ! あなたたちは! 九尾とフェンリル! はるか昔! 数百の国を滅ぼしたと言われる伝説の魔物!」

 ジェーンさんは酸欠の魚のようにパクパクと口を動かす。


「昔の話じゃ。今はジークの母親じゃ!」

「退屈しのぎに暴れたが、すぐに飽きた。やっぱりジークが一番じゃ!」

 二人はクスクスと僕に腕を絡ませる。嬉しいけどそんな場合?


 ジェーンさんは頭が真っ白なようで何も言わない。


「お前、ジークが好きじゃな?」

 タマモ母さんは僕から腕を離すと、ジェーンさんの前に立ち、人差し指で顎をクイッと上げる。


「す、好きです!」

 ジェーンさんは恐怖の顔色で肯定する。

 好き? そうだったの? 初めて会ったのに?


「ジークはワシらの子じゃ! 女なら誰でも好きになる!」

 リム母さんがニコニコと頬っぺたにキスをする。嬉しいけどついていけない。


「よしよし。純粋な好意じゃな。もしも裏があればかみ殺していた。まずはそれを覚えておくんじゃ」

「はい!」

 タマモ母さんが睨むと、ジェーンさんは大粒の涙を流した。


「心を読んだの?」

 母さんたちは心を読むことができる。それを思い出した。


「ワシらに任せておけ。人間のことは知らんが、こいつは心を読んだから分かる」

 リム母さんが微笑する。

 その笑みに敵意や殺意はない。ならば静観したほうが、良い結果となるだろう。


「ジェーンよ。話をする前に、まずはジークの手の甲に口づけじゃ。そして永遠の忠誠を誓うんじゃ。そしてお前の王に媚びるんじゃ。生かしておくれと」

 タマモ母さんは冷たい目と声でジェーンさんを見下す。

 ジェーンさんは、目を白黒させた後、這いつくばって僕の前に跪く。


「じ、ジーク様! あなたは私の王です! どうかお慈悲を! 永遠に従います! 体も差し上げます! ですから命だけは!」

「そんな怖がらないでください。僕は何もしません」

 命も体も要らないです。というか忠誠も誓わなくていいです。

 僕は黄金を売りに来たんですよ? なんで下僕が増えたの? しかもこんな綺麗な人が? 何かの冗談ですか?


「ワシらはジークの母親じゃ! ワシらにもしっかり敬意を払うんじゃぞ!」

 タマモ母さんが優しくジェーンさんの頭を撫でる。ジェーンさんは心底ほっとしたように頷いた。


「ジークが好き! 我が子が好き! そういう奴は嫌いになれんのぉ! 母親の情じゃ! 人間でも甘くなってしまう!」

 リム母さんは考え深いという感じにため息を吐く。


「じ、ジーク様! 従うことを許していただきありがとうございます!」

 ジェーンさんは床に額をこすり付けている。


「良いか? ジークの子を産みたいじゃろうが、それはジーク次第じゃ。気に入られるように、しっかり働くんじゃぞ」

 タマモ母さんはジェーンさんの頭を優しく撫でる。


「ジェーン! 頭いい! ジーク好き! 青子もジーク好き! 同じ!」

「まさかジークの凄さに気づく奴が居るとは! 人間もなかなかやるな!」

 青子とブラッド母さんは僕を置いて納得する。


「か、母さんたち? 僕は下僕が欲しい訳じゃないんだけど?」

 ヘラヘラッと苦笑いする。しかし母さんたちは目をキッと吊り上げる。


「ジーク! いくら何でも王としての自覚が無さ過ぎる! さすがに怒るぞ!」

「ジークに忠誠を誓う。命を懸ける。町に住む人間の条件じゃ! こればっかりは我儘言っても聞かんぞ!」

「ジーク! 優しすぎる!」

「ジークに従うのは当然だ。好意を持って接するのが当然だ。それもできない馬鹿は殺すしかない」


 母さんたちに睨まれると、ムッとする。


 僕の意思を無視しているような気がした。


「でも、必要な事か」

 狼狽したけど、よく考えたらお母さんたちは僕のことを考えている。

 お友達気分では人の上に立てない。

 上下関係は必要だ。

 それにジェーンさんが部下になってくれれば、行動しやすくなる。情報やアドバイスも貰える。


 不利益は無い。僕の意識がまだまだだっただけだ。

 何より、人間嫌いの母さんたちが妥協点をはっきりと示してくれた。

 僕が好きなこと。それはとても納得できるし、沢山のメリットがある。

 僕を思っての行動だ。


「ジェーンさん。出会いは唐突で展開も急だったけど、僕に協力してほしい。そのかわり、絶対に幸せにする。後悔させない」

 僕はジェーンさんの手を握って、笑った。


「よ、よろしくお願いします」

 ジェーンさんは震えながらも、ほんのりと顔を赤くして頷いた。

お母さんたちはジークが追放されたため凄く警戒していたようです。


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