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故郷へ帰ってきた。さぁ、町を作ろう!

 デリックたちに追い出されてからひと月が経った。

「ジーク様! あと少しで古の森だ!」

 草原をのんびり歩いていると、付き人のヤタがワクワク声で声を張り上げる。そこまで来ていたのか!

「分かった!」

 足に力を込めて走る! 早く母さんたちに会いたい!


「ジーク!」

 巨大なる古の森に入ると、真っ先にジル母さんと対面する。僕を待っていてくれたんだ。そしてジル母さんは僕を見るなり、ギュッと抱きしめてきた。


「ああ! ジーク! ジーク! 良かった! 本当に良かったわ!」

 母さんの体はとても温かかった。


「ただいま! お母さん!」

 母さんの体を抱きしめ返す! とっても落ち着く。


「ジーク! ようやく戻ってきおったな!」

「大きくなったのぉ!」

 リム母さんやタマモ母さんも走って来る。


「ジーク。見違えましたね」

 ラファエル母さんの温和な目と目が合う。


「ジーク! 寂しかった!」

 青子が体に巻き付いてきた! 甘えん坊だ!


「ジーク! 待っていたぞ!」

「帰ってきてくれてよかった! 本当に良かった!」

「でっかくなったな! どうだ! 少しは強くなったか!」

 ベル母さん、ブラッド母さん、バトル母さんも走ってきた!


「ジーク様だ!」

「帰ってきたわ!」

 続々と魔物たちが僕を歓迎する!


「皆! ただいま! ありがとう!」

 帰ってきて、本当に良かった!




「やはり人間は醜い! ジークを追放するなど! 私がこの世から追放してやる!」

 僕が人間の世界で感じたこと、体験したことを話すと、ジル母さんはギリギリと歯ぎしりする。


「金か。人間はどうしてそれに狂うのかのう?」

「金は人間にとって神のような物じゃ。人間が生み出したくせにのぉ……」

 リム母さんとタマモ母さんは、お金に戸惑ったと言ったら、ため息を吐いた。


 僕が初めて人間の世界へ入った時、一番戸惑ったのは、お金という概念だ。

 人間の世界ではお金が無いと何もできない。

 それはとても新鮮で、辛い経験だった。古の森だったらお母さんたちが用意してくれた物が手に入らない。

 死んだお母さんと僕の出生を調べたかったのに、お金集めに悩殺されるばかりだった。おかげでほとんど調べられなかった。

 調べものするだけでもお金がかかるなんて、世知辛い世界だ。


「ジークはとても良い子なのに! 結果! 成果! それだけに囚われるなど何と愚かな!」

 ラファエル母さんは、働いても褒めてくれなかったこと、怒られたことを言ったら、綺麗な顔にしわを刻んだ。


 お母さんたちは僕を無償で愛してくれたけど、人間は違った。

 彼らは結果を愛する。成果を愛する。僕個人はどうでもいい感じだった。

 最初はなぜか分からなかった。でも少しずつ分かってきた。

 人間は余裕がない。彼らはいつも、空腹や苦痛に怯えている。その日を暮らすことで精一杯なんだ。お母さんたちは強いから違う。余裕たっぷりだ。だから僕が成果を出さなくても褒めてくれる。

 人間にも優しい人も少しは居たけど、やっぱり大多数が仕事ができないと愚図扱いしてくる。


「人間は自分のことしか考えない。利己的、個人主義。奉仕の心がない。私の子供たちのほうがよっぽど頭が良い」

 ベル母さんは、人間の欲についての感想を聞くと、眩暈を覚えた。


 人は欲望に流される。お金、名誉、地位、女や男、そういった物に惑う。そういったもので簡単に命を奪う。

 僕は魔物の王だ。だから命の奪い合いを否定しない。それに人間の世界は食べ物や素材が少ない。だから生きるために争う。仕方がない。

 だが己が裕福になるためだけに殺し合いや争いをする。よく分からないし、理解したくないことだ。


「俺は人間の強さにがっかりだ! ジークが戦うのをためらうほど弱いんじゃ話にならない!」

 バトル母さんは、一度も人間と戦わなかったことを伝えると、唾をペッと地面に吐く。


 上から目線だけど、人間の強さは肩透かしだった。バトル母さんの剣技を見た後だと、目を瞑っていても避けられるほどゆっくりな動きだった。タマモ母さんから魔術を習った後だと、どうしても程度が低く感じられた。

 正直、戦う気が失せた。だから戦わなかった。できる限り穏便にことを運んだ。


「ジーク! 優しいのに! 臆病じゃないのに! 人間は嫌な奴! 人間! 敵!」

 青子がグネグネと不定形になって地面を這う。冒険者ギルドで言われたことを聞いて苛立っている。


 僕はジル母さんたちと暮らしたおかげで魔物が怖くない。友達だと思っている。でも人間はそうではない。だからこそ、僕は浮いてしまった。

 冒険者は魔物を倒すことで金を得る。でも僕はそんなことしたくないから、素材集めだけする。結果、貧乏だった。おまけに臆病者の烙印を押された。


「残念だが、ジークは人間の世界に馴染めなかった訳だな」

 ブラッド母さんに頭を撫でられる。優しい。


 残念だが、ブラッド母さんの言う通りだ。


 僕が人間の世界に出て分かったことは、人間の世界より、古の森が楽園であることだった。


「でも暗い話ばっかりじゃないよ!」

 母さんたちに笑いかける。


「なんだ?」

 ジル母さんが僕をひょいと抱っこして、膝の上に乗せる。子供じゃないんだけどなぁ……けど嬉しいから何も言わない。


「母さんたちは僕をとっても愛してくれていた! よく分かった! ありがとう!」

 人間を見て分かった。僕は母さんたちが大好きだ。母さんたちは愛してくれた。それを自覚できた。


「ジーク! お前って子は! なんていい子なんだ! ああ!」

 ジル母さんがエンエンと子供のように泣く。

 リム母さん、タマモ母さん、ラファエル母さん、ベル母さん、ブラッド母さん、バトル母さんも顔を手で覆って泣いている。大げさな感じがして、ちょっと恥ずかしい。


「青子もジーク大好き!」

 青子は感極まった感じでキスしてきた! 嬉しいけど恥ずかしい!


「か、母さんたち! 落ち着いて!」

 母さんたちが泣き止むまで必死に笑いかける。

 やっぱり、嬉しかった。




「町を作る?」

 ようやく母さんたちが落ち着いたところで本題を切り出す。

「人間は醜かった。でもね、良いところもあったよ!」

 人間は高度な文明を持っていた。水車、ステンドグラス、ドレス、ケーキ、アクセサリー。どれも素晴らしいと思った。


「僕はどうやったら母さんたちに恩返しできるか考えた。魔物たちで、魔物たちの町を作ってみたい! そうしたら、もっと面白い世界が見れる! 母さんたちが誇れる町を見せたい!」

 僕の中に一つ、野心ができた。魔物たちで町を作る。人間にできるのだから、魔物だってできる。それは絶対に素晴らしい世界になる!

 人間の欲望に触れて生まれた、僕の欲望だ。


「でも、そのためには母さんたちの力が必要なんだ……ダメかな?」

 僕一人ではできないことだ。だからもし、母さんたちが嫌だと言ったら、諦める。


「嫌だと言う訳ない! ジークが一生懸命考えたことだからな!」

 ジル母さんは目をキラキラさせて皆を見る。

 母さんたちは、笑ってくれた。


「ジークは王じゃ! 王の命令には逆らえん!」

「良き野心じゃ! 王に相応しいのぉ!」

「皆のことを考えて行動する。まさに、王です」

「青子! 頑張る!」

「用があれば遠慮なく申し付けてくれ。ジークは私たちの王、古の森の王なのだから!」

「ジークがどれほど凄いか、下等な人間どもに見せつけるのも悪くはない」

「戦いなら俺に任せてくれ! 勇者だろうと軍隊だろうとぶった切ってやる!」

 母さんたちは、僕を歓迎してくれた!


「ありがとう! 本当にありがとう!」

 さあ! 行動開始だ!

町作りの始まりです。


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