魔物たちはジークにメロメロです~ジークは魔物の王となるため、人間の世界へ旅立ちました
ジークは12歳になり、魔物たちの王となった。皆、ジークを祝福してくれた。愛してくれた。
ジークはとても嬉しい。しかし、心の中に疑問があった。
「このままで良いのかな?」
自分はまだまだだ。ジル母さん、リム母さん、タマモ母さん、ラファエル母さんのほうがずっと凄い。友達の青子のほうがずっと強い。ベル母さんやブラッド母さんは多くの魔物を支えている。バトル母さんには一度も勝てていない。
そんな自分が王? 皆に守られているのに? 母さんたちに恩返しできる力も無いのに?
「僕は王に相応しくない」
ジークは少しずつ、男としてのプライドに目覚めていた。このままではダメだ。
そんな気持ちが出てきた。
「焦る必要はない。ジークは必ず強くなる。私たちよりも」
「そうじゃそうじゃ!」
「いくら時間をかけても良い。慌てるな」
ジル、リム、タマモ、その他大勢の魔物はジークを励ます。しかし、ジークは立派な男の子だ。
自分一人で何か、やり遂げたい!
ジークに少しずつ、自立心が芽生えていた。
転機は15歳になった時だ。
久しぶりに、悪神ロキが現れたのだ。
皆が寝静まった深夜だった。ジークはトイレのため、静かに目を覚ます。
ジル、リム、タマモ、ラファエル、青子、ベル、ブラッド、バトル、その他大勢の魔物たちを起こさないように忍び足で外へ出る。
「僕はまだまだ子供なんだ」
ジークはトイレを済ますと、ため息を吐く。
ジル、リム、タマモ、その他大勢の魔物は乳房を露にして寝ている。
ジークに乳を飲ませるためだ。ジークは15歳になっても母親の乳を飲んでいた。
それは愛の現われだったが、一方で、子ども扱いだと思う。
そして拒否しない自分が恥ずかしい。どうしても、甘えてしまう。
「外へ出てみれば良いじゃないか」
そうやって悩んでいる時、月明かりの下に、悪神ロキが現れた。
「あなたは誰ですか?」
ジークは初めて出会ったロキに警戒心を露にする。ジークは初めて自分以外の男性を見た。
「僕はロキ。君を古の森へ導いたおちょうし者さ」
ロキは人を魅了するような笑みを浮かべる。ジークの心から警戒心が溶けるように消える。
「僕をここへ導いた?」
「そうさ。君の母親に言われたんだ。君を救ってくれって。だからここに連れてきた。僕の予想通り、君はとても幸せになった」
ジークは母親という単語に反応する。
「僕のお母さん! 人間の!」
ジークはロキに色々聞きたくなった。人間の母さんはどんな名前だったのか。どんな人だったのか。なぜ死んだのか。しかしロキは人を食ったような笑みで頭を振る。
「僕は答えを知っている。でも言わない」
「なぜですか!」
「君が調べるべきだからさ」
ロキはスルリとジークに詰め寄る。
「君は自分が王に相応しいか迷っている。ならば人間の世界へ一度行くべきだ。そこで母親のことや自分のことを調べると良い。そして、人間の王がどのようなことをやっているか、調べてみると良い。人間の文明に触れてみると良い。そうすることで、自分がどのような王になりたいか、答えが出る」
「人間の世界!」
ジークの心にムラムラと好奇心が沸き上がる。
ジークは人間と出会ったことが無かった。自分と同じ人間がどのような暮らしをしているのか、知りたかった。
そう思うと、ブルブルと体が震えた。居ても立っても居られなくなった。
「じゃ! 僕はオーディンに鼻毛の悪戯書きをする仕事があるから、頑張ってね!」
悪神ロキはジークを焚きつけるだけ焚きつけて、消え去った。
「人間の世界へ行くだと! そんな! そんなごどをぉ言うなんでぇ!」
古の森は騒然となった。ジルなどジークの第一声で気絶してしまった。
「ま、待て待て! 待つんじゃ! 落ち着くんじゃ!」
「わ、ワシらが何か気に障るようなことでもしたか! もしそうなら謝るぞ!」
「人間の世界など汚らわしいだけです! 考え直しなさい!」
「青子! ジークと一緒! ずっと一緒!」
「わ、私の子が失礼でもしたか? ならば謝る!」
「私の配下たちはジークに忠誠を誓っている! 私もだ! どこに不満がある!」
「お、俺の特訓が嫌になったのか! ご、ごめん! き、キツくやりすぎた!」
もはや大混乱だ。涙で洪水になりそうだ。
「ち、違うよ母さんたち! 僕は母さんたちが嫌いになったんじゃないから! ただこのままじゃいけないって思ったんだ!」
ジークは丁寧に説明した。
「そ、そうか……確かに、一人で人間の世界へ行くのも、良い経験になるかもしれない」
ジルたちはジークの決意と思いを聞くと渋々納得した。
「ジークもついにワシらの手を離れてしまうのか……」
「寂しいのぉ……」
それでも寂しい! どこにも行ってほしくない! 心のざわめきは収まらない。
「ジークが考えに考えたことです。尊重しましょう」
ラファエルはとても残念そうな表情で皆を説得する。
「我儘言ってごめん。必ず帰って来るから」
ジークは皆に愛されていることを実感し、泣きそうになった。人間の世界へ行くのをためらうほどだった。
だがそれではダメだ。それではいつまで経っても成長できない。
「行ってきます!」
こうしてジークは旅立った。そして三年後、追放され、人間の世界に見切りをつけて戻って来る。
しかし収穫はあった!
「僕って、本当に愛されていたんだな」
旅に出ることで、自分がどれほど愛されているか理解できた。
だからこそ、硬く決心する。
「母さんたちに恩返ししたい! 魔物の王として!」
ジークは一つ大きく成って、古の森へ帰ってきた。
今回で過去編終了です。
次話はジークが古の森へ帰ってきたところからとなります。
そしていよいよ国づくりが始まります。もっと甘々したいけど……親孝行だから仕方ない。
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