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油がなくなる前の話

作者: 中辛大臣

夢でも見ていたのかと、そう思うことがある。


あの時代、人はどこへでも行けた。

日本の中なら大抵一日で行けた。

中国だって欧州だって米国だって船に乗って数年がかり命がけで挑まなくても、

空を飛んですぐに行けた。

一週間もあれば、人の住んでいるところなら地球上どこでも行けたと思う。

あ、そう月。

あの空に浮かんでる月に行った人も居た。

これが嘘じゃないんだな。


別にわざわざ行かなくたって、手紙を出せばどこでも届いた。

中国や欧州、米国にだって確実に届いたんだ。

まぁ不便だから手紙なんて使う人はあまりいなかったが。

殆どの人は電話とかメールを使ってたな。これは瞬時に相手に届く。

え、うーん、何て言うかなぁ。

機械を使って伝えたいことを電波の信号に変えて相手に発信する。

向こうの機械がそれを元の文字や音や画像に戻して表示する。

これを高速で処理することで、まるで相手がそこにいるかのようにやりとりできる。

簡単に言うとこんな感じだな。

しかもこの機械は手の平くらいの大きさなんだ。

皆持ってた。君みたいな子供も持ってた。もちろん僕も持ってた。

そういえば、どこで無くしたんだろう。覚えてないな。


今みたいに知りたいことがあった時、調べることも簡単にできたんだ。

紙は貴重じゃなかったからね。本も普通に手に入った。

それだけじゃない。世界中の情報を集めることができたんだ。

インターネットって言うんだけど。

情報を電気信号に変えて大量に機械に保存。

その機械と機械を幾つも繋ぐことでできた人類の英知の結晶。

これが誰でも使えたんだ。

まぁ僕も含めてあまり有意義に活用できてた人はいなかったけど。


後あの時代はモノがたくさんあった。

さっきみたいに本は誰でも手に入れることができた。

本だけじゃない、

服はお洒落さが選ぶ基準だった。少し汚れたら捨てて常に綺麗な服を着た。

電気製品や車も今の様に特権階級のものではなく大勢の庶民が所有していた。

どこでもいつでも食べたいものを食べられた。飢え死になんて考えたこともなかった。

別に海の近くじゃなくても魚を食べられたし、川や井戸の近くでなくても水は飲めた。

冬にトマトを食べること、夏に大根を食べること、当時は至って自然なことだった。

氷に砂糖水をかけて食べる料理があって、僕は夏にそれを食べるのが大好きだった。

今でも北の方なら出してる所があるみたいだけど。

昔の様に気軽に食べられるものではなくなったね。


今考えると、「どうしてこうなった」ではなく、

「どうしてあんなことが成り立っていたのか」と感じる。

でもあの時は誰もが。

そう誰もが、あの豊かな時代が永遠に続くと信じて疑わなかったんだ。

本当に、本当に不思議だな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 独特の世界観、最後も儚い終わり方で余韻が残りました。 [気になる点] 独白形式の為ではありますが、もう少し人物の動きがあれば面白いと思いました。 [一言] 読みやすかったです。
2019/02/21 23:57 退会済み
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