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SLAYER  作者: かりかり
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第1話

とりあえず続ける努力はしたい。

子供の頃、村を襲われた。

襲われたと言ってもたかがゴブリンだった。被害は最初に襲われた家だけだ。

運が悪かったのだ。父も母も生まれてすぐの妹も。皆死んだ。

たまたま、冒険者ギルドの人が村長の依頼で村に来ていて、すぐに解決した。子供だった俺は理解なんて出来なかった。今だから、運が悪かったし孤児になった俺を助けようなんて善人も村にはいなかった。当時は相当恨んだが口減らしの奴隷売りがよくある村だ。まだ奴隷にならなかっただけマシなんだろう。

魔物、なんてものは身近であり、遠い存在でもあり…。

ドラゴン、悪魔、でかい虫みたいなモンスター。果てには目玉のお化けみたいなグロテスクやつもいた。盗賊や頭のイカれた殺人鬼のお尋ね者なんてのも魔物みたいに扱われる。



俺がスレイヤーなんて呼ばれ出したのはいつ頃だろうか。


子供の頃、村から出て国境近くの町で無一文のままその日暮らし。

色々やった。

殺し、盗み、強盗。スリに失敗して顔が血を吸ったダニみたいに腫れ上がって小便が赤くなるまで袋叩きにされたことだってある。それでも生きたかったから。やめなかった。

孤児なんてのは奴隷商人の猟犬の格好の獲物だったし、スラムや裏路地、地下水路で身を寄せあった名も知らない奴らは一人、また一人と消えていった。

貴族社会では成人だとかいう15の歳まで生きてやった記念に、冒険者ギルドへと飛び込んだ。それからは死に物狂いでボロボロの安いなまくらと国境の戦場で追い剥ぎをしていただいた血の付いたままだった安物の板金甲冑だけで、家族を殺したゴブリン、ウルフ、バットと下級の魔物を倒した。初めてゴブリンを殺したときは自分も死にそうになった。

何せ罠をしかけたり、物陰から投石したりとずる賢いゴブリンに殺されそうになった。見よう見まねで会得したつもりで剣術なんてものは全く知らないもので、どうすればなまくらで相手を殺せるかなんて考えたものだ。

落ちぶれた魔法使いや貧乏貴族の四男坊なんかが冒険者になんてのはよくある話だが、俺はそんな奴らみたいな、剣術や魔法なんてものは使えなかった。

あぁ、世の中は理不尽で不平等なんだ。と嘆いてもしかたない。

生きるためには狩らねばならなかった。冒険者になれたはいいが下級の駆け出し冒険者。しかも仲間はいない。ただの自殺志願者にしか見えないようなガキンチョだった俺を相手にしてくれるような冒険者はいなかったし、自分も子供の頃から仲間を作るなんてのはしたことがなかったから。けど、金はいる。金欲しさに傭兵団へ雇われて戦争にも参加した。

そこで初めて俺には剣の才能があることを知った。どうやら、思ったように剣が振れて、感覚で相手を斬るというのは万人にはできないらしい。実戦向けの限りなく殺しのための剣だった。

小さいナイフで子供ながら大人のどこを刺せば殺せるのかなんてのを考えたのが功をそうしたようだ。傭兵団のシゴキのお陰か前より力もつけてくれたし万々歳だなと。喜ぶのも束の間だったけど。戦場では魔法は飛んでくるわ、火の魔法で丸焼けにされそうになるわ風の魔法で金属鎧も三枚下ろしにされそうだわ、矢は飛んでくるわ投石機から飛んできた大岩が隊の隊長をアリのように潰したのを真横で見たときは背筋が凍ったね。

まあなんにせよ、その戦場も運悪く生き残り金を手にし、運よくモンスターや盗賊、果てにはドラゴン退治まで。

国をあげてのドラゴン退治だったが、ドラゴンっていうのはこれまた不思議で。トドメを刺した奴に無条件で魂の器なんてものを譲渡するらしい。

お陰で使えもしない大量の魔力と、常人にはあり得ない膂力が手にはいった。まあ手にはいった金の方が嬉しかったけどね。


なんにせよ、運が悪く力を手にいれた俺は、ドラゴンスレイヤーなんてあだ名をつけられた挙げ句、冒険者ギルドの等級を中級から上級へと上げられてしまったのだ。

上級冒険者ってのはもっと華やかで正義の味方なんてもんだと思ってたが、どうやら違うらしい。

回りは貴族様だったり騎士家系のやつだったりで英雄級の奴らばなりで息が詰まっちまうよ。


けど、俺は何かに囚われたように狩るのだ。

敵は皆殺しだ。

スレイヤー?いいじゃないか。背負ってやるよ。重苦しいけどよ。

さぁ、次は何を殺してやろうかね…。




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