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きょうは もう終わり

「お母様は自分がお父様側だと知っていたから、ルディアンお兄様を支える存在が必要だと考えてて。イーギルドお兄様が生まれたんだよ。ルディアンお兄様の補佐役で、ルディアンお兄様の意見に賛成し、いつか王となる兄を立てるようにと少し力を抑えられてる。それでも相当強い」

とはゼクセウムさん。

怖い顔のイーギルドさんはまた肩をすくめてみせた。

「しかし被害は収まらず、その他大勢に目を配る事の出来る存在を母は望んだ。結果、次のゼクセウムが誕生。こいつは調停役が多くて、魔族や人間関わらずに引っ張りだこで」

「人気者」

と、嬉しそうにリィリアさんが呟くように一言。


私は聞いた。

「パパは? パパだけ強くなくて寂しかったって。意地悪したの?」

ジィジが私の頭を撫でた。

「意地悪ではない。だがディーゼには悪い事をした。ディーゼの妊娠中は、子どもたちがそれぞれ好き勝手に動いて、ノクリアも私も本当に困っていた時期だ。それで、手のかからない大人しい子を願ってしまった。そうしたら、ディーゼがあまりにも弱くて。本当に驚いた」

「母の浮気を疑いかけたって聞いてますよ。兄から」

「あいつは俺が全て気に入らないだけだろうが。浮気をノクリアがするはずないだろう。だがあまりの個体差に驚いたのは事実だ。すまないな」


パパは本当に弱いんだ・・・。大事にしてあげなきゃ・・・。

と思って、私は首を傾げた。

重い荷物も持ってくれるし、パパも男の人だし強いと思うけどなぁ?


魔王ジィジがちょっと情けない顔をして私を見た。

「ディーゼが幸せでやってくれていて良かった。ディーゼが生まれたから、ノクリアの願う子がそのままできると分かったんだ。次のリィリアは、きちんと意識して生むことができた」


「リィリアと、お母様似てると思わない? リンちゃん」

と、気さくなゼクセウムさんが聞いてきた。

「うーん」

私はリィリアさんを見たけど、バァバは今いないから、見比べられないので答えられない。


「あれ、似て無いのかな」

とゼクセウムさんが驚き、

「そっくりのはずだが」

と怖い感じのイーギルドさんが苦笑した。


困ってリィリアさんを見つめていると、嬉しそうにニコ、と笑う。

「私は、お母様の性質を純粋に受け継いでいるの。家族には無効になる制限だけはあるけど。種族を保つ子を産まなくっちゃ、ってお母様は思ったのよ」

小さくて可愛くて、お人形みたいにキラキラしている。


「リィリアは良いよね。人生が思いのままだよね」

ゼクセウムさんが、まったりとテーブルの上の2つ目のアイスクリームに手を出すリィリアさんに声をかける。リィリアさんは少し不思議そうに首を傾げた。

「本人に自覚が無いのが不思議だよな」

「ノクリアもそうだから、ああいう質が強い種族なのかもしれない」

と魔王のジィジまでがリィリアさんを観察している。


「ねぇねぇ、パパを一番大事にしてくれたのは誰ですか?」

と私は聞いてみた。

「ゼクセウム」

「俺だよ」

「私。リィリア」

「全員だ」


違う返事にじっと正解を待っていると、魔王のジィジが苦笑した。

「家族が気にはかけていた。とはいえ、一番行動に現れていたのはゼクセリウムとリィリアだ。ゼクセリウムは強者が気づきにくい物事に気付きやすい。よくディーゼを助けた。リィリアもディーゼを守った。生き延びたのは兄弟のお陰だ」

頷いているリィリアさんと、困った顔になったゼクセウムさんに、私は、

「パパを助けてくれてありがとうございます」

とお礼を言った。


ゼクセウムさんは、

「ディーゼは可哀想だったよ」

と呟いた。

「だが今はこんなに可愛い娘にも恵まれている。良かったじゃないか」

と怖い顔のイーギルドさんがゼクセウムさんを慰めるように声をかける。イーギルドさん、お兄さんだなぁ。


***


バァバが、やっと戻って来た。

今度は素敵に美味しいアイスクリームを持って来てくれた!

作り直してくれたそうだ。


ニコニコして食べているのを、皆が嬉しそうに眺めてくる。

私は、途中で皆に照れてしまった。

でもアイスクリームは美味しい。チラチラ周りを気にしつつ、でも美味しい。


「ルディゼド。リンに勝つなど無理だろう?」

「そうだな。勇者リンには勝てないな。降参だ」

ニコニコ私を見つめながら、バァバとジィジがそんな会話をした。


全然魔王に見えない優しい顔をしながら、魔王のジィジは私に言った。

「人間どもに、『リンに降参した。リンに従おう』と魔王が言ったと伝えてくれ」

「うん」


「それで無事に元の世界に戻してくれないならば、また戻っておいで。怒鳴りに行ってやるから」

「うん。魔王のジィジ、バァバ、それから、皆さん、」

「名前省略された・・・」

ボソッとリィリアさんがショックを受けたように呟いたので、私は慌てて、言い直した。

「えっと、いないけど、ルディアンさん、いないけど、セディルナ様、えっと、えーと、」

焦って名前が出て来なくなった!

「イーギルド」

「イーギルドさん、えーっと、」


「ゼクセウム」

「ゼクセウムさん、」


「リィリア」

「リィリアさん、みなさん、今日は、ありがとうございました!」


「ふふ。リン、また来てくれたら嬉しい」

バァバが擦り寄って抱きしめてきた。

兄弟の人と握手したり頭撫でてもらったり抱きしめてもらったりした。

最後に魔王のジィジが高い高いをして天井に頭をぶつけそうになったので驚いてバァバにジィジが怒られたけど楽しかった。


***


「ただいまー」


元の世界に戻ると、すっかり夜になっていた。

はー。

「リン! どこに行ってたの!」

家の扉を開けると、ママが飛び出してきた。

「異世界」


「異世界! リン! リンが見つかりました! 異世界行ってた! 誰かディーゼさんに伝えて、リン見つかりました! それから島崎にも、すみません、電話、まだ探してて、すみませんご近所も!!」

ママは外に向かって声を張り上げた。

振り返れば、3人がワラワラッとこちらに走り寄ってきた。

「リンちゃんいた! 良かった、異世界行ってたの!」

「タクマさんに電話! ディーゼくんどこだ、交番もだ!」


現実世界は、大騒ぎになっていた


***


温かいご飯を食べて、パパとママにたくさんお話をする。

大丈夫だったよと報告する。

勇者のジィジとこちらのバァバとオオジィジまで家にやってきた。


たくさんの人が、ものすごく心配してくれていた。

勇者のジィジが勇者になってしまった時もそうだったそうだ。


でも、大丈夫だったよ。

パパの兄弟の人たちもいたし、イフェルさんもいたし、魔王のジィジとバァバは優しかったよ。


そう話すと、皆安心して、泣いたりするけど笑ってくれる。

良かった良くやったと褒めてもらった。


***


「リンは、向こうのジィジとバァバにちゃんとご挨拶したんだね」

「うん」

「偉い。リン、良い子。無事に帰ってきて、ママ本当に良かった、安心した」

「帰ってきてくれて、ありがとう、リン。無事でよかった」

「パパ、魔王のジィジとバァバがパパに元気でね、って言ってたよ」

「うん。ありがとう、リン」


***


また、勇者召喚されてしまう日が来るかなぁ。

でもそうしたら、また魔王のジィジたちと色々お話しできて楽しみだなと思う。


春には弟が生まれてくるから、お誕生日のお祝いに、勇者の力をあげようかな。

勇者のジィジに相談してみよう。

そしたら、弟も向こうのジィジとバァバに会う事ができる。


でも、私が勇者で頑張ったから、しばらく召喚はないかもって、パパたちは言っているけど。


***


~ シマザキ リン:【勇者リン】 ~

  5歳の華奢な少女だったと伝えられている。

  知力と英気に富み、召喚日のうちに、次期魔王と魔王に次々と圧勝。世界を救った。

  歴代最年少で歴代最強の勇者と言われている。

  勇者リンの帰還後、世界は人類の勝利を祝い喜びに沸く。

  備考:劇で有名となるセリフ「人類は魔王に勝った!」はこの時代をモデルに生み出された創作である。

  『召喚勇者名簿』より






おしまい

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