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第1章ー4

 この世界の鈴木重工ですが、軍用機については、史実の中島飛行機と川西飛行機を合わせたような存在です。

 そのため、小山悌、糸川英夫、菊原静男が同じ会社にいます。

「雷電」の改良等については、鈴木重工の菊原静男を中心とするチームが当たることになった。

 何故、「雷電」の開発を主に担当した小山悌らが担当しなかったか。

 それは、小山悌らが、後に日本のレシプロ地上戦闘機史上最強の存在と謳われる16試戦闘機(制式採用後の名称は、4式戦闘機「疾風」)の開発に、ほぼ専従せざるを得なかったからである。


 このことが、「雷電」の戦後の評価を難しくしている一因でもある。

 菊原自身は、「雷電」のことを好意的に評価していないどころか、むしろ酷評しているのである。

「雷電」の後継機、16試戦闘爆撃機「紫電」を、菊原は設計することになり、実際に増加試作にまで、こぎつけてはいるのだが。


 第二次世界大戦が終結したことにより、「紫電」は、軍用機のジェット化の大波、更に第二次世界大戦終結に伴う軍縮による軍事費大削減のために、

「幻の日本最強のレシプロ戦闘爆撃機」

 と謳われる存在になってしまったからである。


 菊原自身は、余り口に出さず、紳士的な態度を、世間では基本的に通したが、身内の飲み会の席等では、

「自分としては、「紫電」開発に専念したかった。自分の最愛の子を可愛がりたいのは人情だろう」

 と愚痴ることが多く、更に「雷電」については、

「小山先輩に頭を下げられたから、改良を引き受けはしたのですが、正直、「雷電」は、いい戦闘爆撃機ではない、と私は考えています」

 と語った記録が、複数の取材の際の回答として残っている。


 こういったことから、「雷電」については、改良に当たった設計者からもダメ出しされた戦闘爆撃機として、低く評価する者が数多いる。


 とはいえ、実際に「雷電」に対して、菊原が施した改良は、それなりどころか、かなり優秀なもので、第二次世界大戦後の世界各地の「雷電」の活躍は、菊原の改良によるものが大きい。


 日本国内では、菊原が改良した後の「雷電」を、特に「雷電改」と呼ぶ者もいるくらいである。

 だが、この呼称は、世界的には普及しなかった。

 実際、様々な大改造がエンジン等で施されてはいても、「Bf109」を途中から、「Bf109改」と呼ぶ者が世界的にはいないようなもので、「~改」と呼ばない方が、普遍的かもしれない。


 ともかく、菊原が様々な改良を施した最終的な結果、改良された「雷電」は、自動空戦フラップが搭載されると共に、30ミリ機関砲を4挺、主翼内に装備し、胴体下に800キロ爆弾1発を搭載するか、5インチロケット弾12発を搭載するか、という重武装を実現することができた(5インチロケット弾については、現地改造により、最大24発を搭載して出撃したという証言がある。ただ、この証言については、信憑性が疑われており、最大16発と見るのが相当では、というのが通説である。)。


 更に、火星エンジンの究極的な発展型ともいえるハ214エンジンを、改良型の「雷電」は搭載したこともあり、離昇馬力2750hpによる上昇性能は、他の日本空軍の戦闘(爆撃)機の追随を許さない、と謳われるものになった。

 また、この大馬力エンジンの搭載は、「雷電」の防弾、耐久性能を高めることにもなった。

 少々の防弾を施したくらいでは、性能の低下を招かずに済むという利点をも生み出したのである。


 実際、「雷電」の後期型が急降下に入った場合、900キロまで平然と耐えた、という複数の搭乗員による回想録が残っているし、防弾性能については、

「少々、敵戦闘機の射弾が当たっても、びくともしなかった」

「撃たれたこと自体に、気が付かないこともあった」

 という証言がある。

 これは、戦闘爆撃機と言う任務から要請されたことであり、小山や菊原が様々に気を遣った結果だった。

第1章の終わりです。

次話から第2章になります。


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