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第1章ー3

 さて、何で、こんなに「雷電」の評判は悪かったのか、それなのに、何故、日本空軍は「雷電」を制式採用したのか。

 これまた、幾つかの原因が複合している。


 まず、「雷電」が、これまでの日本空軍の古参搭乗員が慣れ親しんでいた戦闘機と言う概念から外れた存在だった、というのがある。

「雷電」が登場するまでは、戦闘機の主な相手は、まず戦闘機だったのである。

 勿論、味方の基地等の防空任務を考えると、第一に戦闘機にとっては、敵爆撃機への対処が最重要ではないか、という反論が当然出てくるだろう。

 だが、敵の爆撃機に随伴してくる護衛戦闘機を排除しなければ、敵爆撃機をそもそも戦闘機は襲撃できないではないか、という反論も一理あるのだ。

 また、戦闘機の搭乗員にとって、敵戦闘機と戦うというのは、武士同士の戦いではないが、ある意味で心躍る戦いであったというのも大きいだろう。

 そのため、日本空軍の古参の戦闘機搭乗員程、対爆撃機戦闘を主任務とし、対戦闘機戦闘は他の機種(軽戦闘機)に基本的に任せるという「雷電」の存在を感情的に拒絶した。


 だが、B-17やそれ以降に登場してくる(4発)重爆撃機を迎撃するのには、重戦闘機が当面は必要不可欠である、と日本空軍首脳部は考えざるを得なかった。

 99式戦闘機では、火力不足であり、そう役に立たない、と日本空軍首脳部は考えたからである。

 そのために、試作機を運用する現場の評判が悪くとも、「雷電」の開発は続行された。


 だが、開発されている内に、「雷電」への風向きが微妙に変わって行った。


「雷電」が増加試作段階に入った1941年当時、日本本土を空襲可能なソ連空軍の基地は絶無と言ってよい状態になり、対重爆撃機戦闘を主任務とする「雷電」を大量に量産する必要はない、という意見が、日本空軍首脳部内で強まり出した。

 だが、その一方で、別の任務に「雷電」は、大量に必要であるという意見が、日本空軍内で噴き出すようにもなったのである。

 その任務とは、地上部隊の支援任務、戦闘爆撃機としての任務だった。


 この任務に1941年当時、日本空軍で当たっていたのは、99式襲撃機であり、それなりの評価を関係各所で得ている。

 だが、この頃、敵国たる独ソの戦闘機は、まだまだ強力な戦力を誇っており、米英仏日の連合軍は航空優勢を完全確保しているとは、とても言い難い現状で、99式襲撃機は、独ソの戦闘機の攻撃の前に大損害を被ることが稀ではなかった。


 この任務に「雷電」を充てるべきではないか。

「火星」エンジンが生み出す大出力は、大量の爆弾等を搭載しての、地上支援任務に打ってつけではないだろうか、それに、そもそも「雷電」は、戦闘機として開発された存在でもある、独ソの戦闘機ともそれなりに戦えるはずだ、という考えが日本空軍内に台頭し、かくして「雷電」は、戦闘爆撃機として転用されることになったのである。


 かくして、1942年初頭、「雷電」は、戦闘爆撃機として制式採用された。

 20ミリ機関砲4丁を主翼内に搭載して、この時点で最大500キロ爆弾1発を胴体下部に懸吊可能。

 爆弾を搭載しなければ、高度6000メートルにおいて、最高630キロの高速が発揮可能という高性能は、日本空軍を狂喜させるものだった。

 これは、主に米国から供給される100オクタンガソリンの使用等によるものであり、「雷電」の心臓ともいえる火星エンジンも、2000馬力という高出力が安定して発揮される状況にあった。

 そして、高出力エンジンにより、主要部の防弾も充実していた。


 最も、この初期型の「雷電」は、機体の振動問題等、様々な問題も抱え込んでおり、更なる改良を早速、求められる存在でもあった。

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