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第1章ー2

 二式戦闘爆撃機「雷電」の開発の経緯については、それだけで1冊の書籍が書けるだけの裏話が転がっている、とも言われている。

 それくらいこの「雷電」の開発は、ある意味、迷走を極めたものだった。


 そもそも、「雷電」は、14試重戦闘機として、日本空軍により1939年初頭に、鈴木重工に対して1社特命という形で下されたものだった。

 この背景だが、幾つかの理由が、複合的に組み合わされた結果だった。


 まず第一に、この頃の日本空軍首脳部の戦闘機に対する考え方がある。

 1939年初頭のこの頃、日本空軍首脳部は、戦闘機は3種類が必要だと考えていた。

 まず第一に、対戦闘機戦闘を主な任務とする「軽戦闘機」

 第二に、対爆撃機戦闘を主な任務とする「重戦闘機」

 第三に、戦闘機以外の様々な任務にも使える「多用途戦闘機」である。

 第一と第二は、単発単座戦闘機で、第三は、双発複座戦闘機で賄おう、というのが、日本空軍首脳部の考えだった(何故にこういった考えを、日本空軍が持っていたか、については、説明を省略する。)。

 こうして、各種の戦闘機の開発は、進められることになった。


 だが、1939年初頭の段階で言えば、「軽戦闘機」と「重戦闘機」については、99式戦闘機(日本国内どころか、世界的にも「零戦」として知られているが)によって統合された1種類の戦闘機で、当面は充分であろう、とも考えられていた。

 だが、米国のB-17重爆撃機を、日本でライセンス生産することになり、99式重爆撃機として日本空軍が採用することが決まった段階で、その考えは覆された。

 99式重爆撃機に対処するのに、99式戦闘機では対処は困難、やはり、重戦闘機が必要不可欠であるとの考えが、日本空軍首脳部の間で考えられるようになったからである。


 かくして、14試重戦闘機の開発がスタートした。

 だが、搭載するエンジンからして、早速、難問にぶつかった。

 この当時、重戦闘機として使用可能な日本の国産エンジンは、事実上、三菱の「火星」エンジンしかない、といっても過言ではない状況にあったからである。

 また、三菱は、99式戦闘機の開発、改良に当時は手一杯に近いという状況にもあった。

 更に、日本空軍による三菱と鈴木の競作による12試戦闘機が、結果的にではあったが、三菱の零式艦上戦闘機を空軍が採用して、99式戦闘機になったという結末からして、政治的バランスの上からも、日本空軍は、鈴木重工に、この14試重戦闘機の開発を行わさざるを得ないという話になったのである。

(ちなみに、日本海軍が試作を命じた12試艦上戦闘機を、日本空軍が(陸上)戦闘機として採用する経緯についても、興味深い裏話がごろごろ転がるのだが、それについても、説明は省略する。)

 鈴木重工は、小山悌を設計主務者として、14試重戦闘機を開発することにした。


 ちなみに、この時、後に「日本のロケット開発の父」と謳われる糸川英夫も、小山悌の下で、14試重戦闘機、後の「雷電」の開発に関与しており、回想録の中で、当時の事に触れているのだが。

(小山悌自身は、寡黙な人柄も相まって、自身が開発した各種軍用機の内幕については、ほとんど自らは語っておらず、糸川の回想録は、そういった点からも貴重視されている。)

「本当にね。「雷電」の開発には、いろいろと苦労しました。何しろ、日本初の重戦闘機の開発です。やっとの思いで、試作機を完成させて、それを、空軍のベテラン搭乗員が何人も操縦して、その感想を述べるのですが、はっきり言って、滅茶苦茶に評判が悪い。こんな戦闘機はいらん、と5人の内の4人が言うのです。ですが、1人はいい戦闘機だと言ってくれる。それが頼みでした」 

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