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エピローグ

 エピローグになります。

 ドローレス国防相が見舞った3日後、スアソ将軍は、天国への永遠の旅に赴いた。

 予め、スアソ将軍が亡くなった際には速やかな一報を、と依頼していた入院先の病院からの連絡を受けたドローレス国防相は、感慨の余り、生前のスアソ将軍のことを、しばらく偲ばざるを得なかった。


 ドローレス国防相の気持ちが、今一つ、分かっていないのか、副官が、ドローレス国防相に声を無遠慮に掛けているに、しばらく経ってから、ドローレス国防相は気づいた。

「スアソ将軍の葬儀は、どうなさるおつもりですか?。もう何度も声をお掛けしているのですが」

「済まんな。国葬と言う訳にはいかないだろうが、軍の英雄として、軍全体での葬儀を行うつもりだ。葬儀の際には、「雷電」を記念飛行させたい。その準備を進めるように、関係各所に連絡してくれ」

 副官の問いかけに、ドローレス国防相は指示を出した。


 指示を下してから、約3時間後、副官が慌てて、ドローレス国防相の下に駆けてきた。

「申し訳ありません。「雷電」が飛行不能だと、保管している飛行隊から連絡がありました」

「何だと。私が直接、話す。飛行隊の担当者を電話に出させろ」

 副官の言葉に、ドローレス国防相は怒って指示を出した。


「本当に申し訳ありません。昨年の独立記念日の飛行の際には、「雷電」は、問題なく飛行でき、そのまま格納庫に保管していたのですが、どうも経年劣化から、部品が幾つかやられたようです」

 飛行隊の担当者は、日本人なら土下座して謝っているのでは、と思われる謝罪ぶりだった。

 その言葉を聞く内に、ドローレス国防相の頭も冷えてきた。

「どうなんだ。「雷電」の修理は何とかなりそうか」

「部品を自作すれば何とか。予備の部品は、もうほとんど払底していますから。共食い整備もやりつくしてしまいました」

「そうか」


 ドローレス国防相が、考えを巡らせていると、スアソ将軍の声が幻聴として聞こえてきた。

「わしはな、日本製の部品で修理していない、と「雷電」では飛ばんぞ」

 そうですね、とうとう、「雷電」は寿命が尽きました。

 名馬は、自分を愛した乗り手の跡を追って死ぬ、と聞いたことがあります。

「雷電」も、同様に、あなたの跡を追って旅立つことにしたようです。

 ドローレス国防相は、自分の目が潤むのを覚えた。

「分かった。「雷電」は、現役から引退させ、静態保存機としよう。関係各所に、そのように指示を出すから、そのように準備をしたまえ」

 ドローレス国防相は、そう指示を出した後、しばらく自分の涙が流れるままに過ごした。


 職務をしている内に、気が付けば、退庁の時刻となっていた。

 ドローレス国防相は、自宅へと帰宅することにした。

 執務室を出て、国防省の玄関に向かっていると、国防省の職員の会話が、風に乗って聞こえてきた。


「あの雷クソ親父が、天国に旅立ったらしい。「雷電」に勝手に乗って天国に行ったらしいぞ」

「本当か」

「ああ、その証拠に、「雷電」が飛行不能になったとのことだ」


 雷クソ親父か、スアソ将軍らしい異名だ。

 あの人のシゴキはきついことで有名だったからな。

 そして、あらためてドローレス国防相は思った。

 そう言う見方もできるな。

「雷電」は、スアソ将軍と共に、天国へと向かったのかもしれない。


「おい、「雷電」、一緒に飛ぼうか」

 スアソ将軍の現役時代の声が、自分の耳元で木霊する。


「わしはな、「雷電」に乗っておる限り、被弾はしても、自分は生還できると信じていた」

 スアソ将軍の精神訓話の一節が、頭に浮かんでくる。


 ドローレス国防相は思わず、祈りを捧げていた。

「雷電」、日本で生まれ、我がホンジュラスで活躍し、祖国を救った戦闘爆撃機よ。

 スアソ将軍と、共に天国へと赴け。 

 これで完結します。


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