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第4章ー5

 7月16日、17日の2日間は、ホンジュラス空軍が無敵を謳歌した時だった。

 エルサルバドル空軍のF-51は、残存4機という惨状にあることもあり、ホンジュラス空軍の「雷電」を見かけ次第、逃走に転じる有様だったのだ。

 こうなっては、「雷電」の戦闘爆撃機としての本領発揮の時である。


 7月14日から開始されたエルサルバドル陸軍の進撃は、7月15日以降は、「雷電」の地上支援の前に食い止められるどころか、退却を余儀なくされるようになった。

 7月17日の朝には、ホンジュラス陸軍は、「雷電」を中心とする空軍の地上支援により、ホンジュラス政府が主張する国境線を完全に確保することに成功し、防御陣地の構築に掛かった。


 これに対して、エルサルバドル陸軍は、できる限りの反撃を加えることで、防御陣地の構築妨害を図ったが、「雷電」の空襲の前に、ことごとく失敗してしまい、7月17日の夕刻には、ホンジュラス陸軍は、ほぼ防御陣地の構築に成功した。


 7月18日朝、米国を中心とする第三国連合の仲介により、7月19日午前0時を期しての両国間の停戦発効が決まった。

 また、両国共に動員を解除し、部隊を本来の所属基地に戻す事、米軍を中心とする停戦監視団を受け入れて、国境線に展開することを認めること、また、お互いの国民の財産等の保護に努めること等が決まった。


 だが、現状では劣勢なままに置かれることが明白なエルサルバドルは、ホンジュラス側に停戦破り行為があった等の非難を繰り返し、停戦以外の条件を中々呑もうとしなかったが、7月23日にしびれを切らしたホンジュラス空軍がイロバンゴ国際空港に対する空襲を断行し、これによりイロバンゴ国際空港が使用不能になった事から(ちなみに、エルサルバドル側に物的損害はあったが、人的損害は無し)、終にエルサルバドルは、停戦以外の条件もすべて受け入れる旨、声明を発表し、ここに事実上、「サッカー戦争」は終結を迎えることになった。

 その後、様々な紆余曲折を経て、1990年代に両国間で講和条約が締結され、国境線も画定する。


 そして、この戦争に敗北したエルサルバドルの混迷は酷いものになった。

 停戦直後から、エルサルバドル現政府が腐敗しきっていたことにより戦争に敗北したのだ、として、現政府打倒を訴える反政府武装ゲリラが発生する事態が起きたのである。

 そして、ホンジュラス政府自身は完全否定しているが、エルサルバドルの反政府武装ゲリラは、ホンジュラス領を聖域として活用し、エルサルバドル内戦が展開されることになった。

 1990年代に入り、ようやくエルサルバドル内戦は終結に漕ぎつけられたが、この内戦によって起きた国内の荒廃により、2010年代半ば、未だにエルサルバドルは貧困国にあえぐことになった。


 一方、ホンジュラスは、この戦争の勝利により、国民の結束という得難い果実を手に入れ、それを活用することができた。

 この戦争の後、諸外国から、開発独裁国家のレッテルを貼られつつも、ホンジュラスの内政は安定したものとなり、治安も良好となった。

 それにより、日本等の外国からの投資も活発に行われ、それによって工業化も進んだ結果、バナナ共和国の悪名も消え、ホンジュラスは中米一安定して発展し、中進国の地位を21世紀には占めることになった。


 そのホンジュラスの発展の象徴となったのが、「雷電」だった。

「雷電」を操縦して、撃墜王となったスアソ大尉は、ホンジュラス国民の英雄となり、「雷電」は「救国の戦闘爆撃機」として、ホンジュラス国民の畏敬の対象となった。

 そして、スアソ大尉が操縦した「雷電」は、特に「雷電らいでん」と呼称されて、記念機となった。

 第4章の終わりです。

 次話がエピローグになります。


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