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第4章ー4

 7月14日の空戦は、結果的には、先述の空戦のみで終わることになった。

 あの後、ホンジュラス空軍のスアソ大尉や他のパイロット達は、2機1組の編隊を組み、出撃可能な14機全てを投入して、戦闘空中哨戒任務に取り組んだが、エルサルバドル空軍は、一方的にいきなり8機を失うという大損害から、再度の空戦を挑もうとは、7月14日の間はしなかったのである。


 7月15日朝、ほぼ丸一昼夜を徹した作業により、ホンジュラス空軍は「雷電」16機を出撃可能状態にすることに成功していた。

 損傷が軽微だった機体を緊急補修し、損傷の酷かった機体からの共食い整備を断行した結果だった。

 ホンジュラス統合参謀本部は、「雷電」8機を地上支援任務に充て、残り8機を戦闘空中哨戒任務に充てることにした。

 昼までの間に、地上支援任務に当たった「雷電」8機は、2回合計で12トン余りの爆弾を、エルサルバドル陸軍の地上侵攻部隊に対して投下、更に銃撃を加えることで、追い討ちを掛けた。

 こういった状況から、エルサルバドル側も稼働可能な16機のF-51を投入しての反撃を、夕方に試みることにした。


 先手を取ったのは、エルサルバドル側だった(ように見えた。)。

 地上部隊攻撃のために、またもや6トン余りの爆弾を投下し、銃撃を加えようと降下したホンジュラス空軍の「雷電」8機に対して、エルサルバドル空軍の16機のF-51が緩降下しながら襲い掛かったのだ。

 だが、彼らは驚愕することになる。


 16機のF-51、合計すれば96挺になる12.7ミリ機関銃からの銃撃を、意に介さずに、「雷電」8機は反撃に転じた。

 更に上空から味方機を救援しようと「雷電」8機が急降下してきた。

 16機のF-51は、上下から挟まれた形に追い込まれたのだ。


「全く。もう少し接近して射撃しないと、12.7ミリでは「雷電」に対して効かないぞ」

 スアソ大尉は、最早、憐憫の情すら、エルサルバドル空軍のパイロット達に覚えていた。

 エルサルバドル空軍のパイロット達は、充分に接近して「雷電」を射撃したつもりなのだろうが、スアソ大尉からすれば、300メートル以上離れたへっぴり腰の射撃に過ぎなかった。


 実際、「サッカー戦争」のF-51の惨敗を聞いた、米陸軍航空隊(空軍)の第二次世界大戦時の撃墜王達、イエーガーらは次のように述べている。

「何で、接近して撃たなかった。「雷電」といえど、充分に接近して、12.7ミリ6挺を操縦席に浴びせれば、充分に落せた筈だ。自分達がF-51を操っていれば、「雷電」の射撃を回避して、格闘戦に持ち込み、逆に「雷電」を惨敗させていたものを」


 とはいえ、昨日の悪夢が覚めやらぬエルサルバドル空軍のパイロット達にしてみれば、反射的に撃たないと、「雷電」相手への恐怖心から免れられなかったのだろう。

 更に、この時の「雷電」は翼内タンクに燃料を積んでおらず、主翼に対して被弾しても、単に穴が開くだけの状態だったことも、F-51にとっては不運だった。

 上からの銃撃である以上、もっとも当たりやすい主翼に対する攻撃が、ほとんど効かないのである。


 最終的に、F-51は16機中12機が撃墜され、4機が這う這うの体で逃走する羽目になった。

 逆に「雷電」の撃墜は0、ホンジュラス空軍は、またしても圧勝した。

 スアソ大尉は、またしても3機を撃墜、ホンジュラス空軍初の撃墜王となった。


 この空戦以降、エルサルバドル空軍は、ホンジュラス空軍との空戦を厳禁することになる。

 最早、F-51は4機しか残っておらず、「雷電」16機を保有するホンジュラス空軍に対して、空戦を挑んでも勝算が全くない、との判断を下さざるを得なかったのである。

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