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第4章ー1 スアソ将軍とサッカー戦争

 第4章の始まりです。

 ドローレス現国防相は、「サッカー戦争」の英雄、スアソ将軍にあこがれて、ホンジュラス空軍に志願した少年の1人で、長じて国防相になった。

 そして、ドローレス国防相が、スアソ将軍に直接、聞いた話だと、スアソ将軍が空軍士官候補生として、空軍に入隊した当時は、本当に菅野大佐直伝の鬼のシゴキが罷り通っていたらしい。


「もうな。1日の訓練飛行が終わって、下着を着替えようとしたら、下着が乾ききっていて、下着に粉がついているんだ。つまり、汗が出なくなっていて、汗が乾ききって、粉になっているんだ。本当に練習中の事故で死んだ同期の何人かは、訓練飛行中に熱射病にやられたんじゃないか」

 スアソ将軍は、そう語って、死者がそうでなくなった自分の訓練は、まだまだ甘い、と公言していた。


(ドローレス国防相が見る限り、スアソ将軍が、訓練中に水や塩分補給を認めるようになったから、死者が減っただけで、そう訓練内容が甘くなったとは思えなかったが。

 実際、スアソ将軍の異名の一つが、訓練の厳しさからくる「雷クソ親父」である。

 いかにスアソ将軍の訓練が、猛烈だったか分かる。

 伝統ある名門運動部で、自分は先輩より甘い、これくらい耐えろ、という先輩から後輩への猛練習が行われるようなものだろう。)


「ともかく、小便も血の色になるのが、しょっちゅう。訓練の後、荷物をまとめて、退役願いを書く気力まで奪われる有様だった。少しでもたるんでいると見られたら、教官から鉄拳が飛んでくるしな。あの時、菅野大佐の視察が無かったら、自分はどうしていたかな」

 スアソ将軍は、ドローレス国防相に、そう語っている。


 菅野大佐は、何だかんだ、と理由を付けては、ホンジュラスを訪れた。

 ホンジュラスの教え子達も、それを歓迎した。

 スアソ将軍によると、たまたま、菅野大佐がホンジュラスを訪問して、空軍の訓練を視察した際に、思わぬことがあったという。


「今年の訓練生で一番見込みのあるのは、どいつだ、と菅野大佐が尋ねられた際に、その時の教官が、自分を推挙してくれた。すると、菅野大佐が、腕試しをしたい、と言い出して、自分を操縦席に、菅野大佐が教官席に座って、訓練飛行をしてくれた。訓練飛行中に、中々、筋がいいな、と褒められて、これでわしの直弟子だ、ホンジュラス空軍から逃げるなよ、と笑って言われた。あの菅野大佐の笑顔を支えにして、自分はホンジュラス空軍に、あらためて奉職しようと決めたんだ」

 スアソ将軍は、そう語った。


 そして、スアソ将軍は、正式にホンジュラス空軍少尉に任官し、徐々に戦闘(爆撃)機乗りとしての才能を発揮して、「雷電」を乗りこなすようになった。


「サッカー戦争」が起こる直前の「雷電」のイメージについて、スアソ将軍は、次のようにドローレス国防相に語っている。

「もうな。そろそろ引退させてくれ、とかつての悍馬が年老いて、自分に言っているような気がしたよ。何しろ、この頃、「雷電」が現役機で残っていたのは、ホンジュラス以外では、アフリカのどこかの国くらいしか残っていなかった。その国にしても、フランスのお下がりで、大事にしていただけだし。直接、日本から買って、未だに使っていたのは、ホンジュラスだけだったろう。当時の財務省がケチで、ジェットの新型軍用機を買ってくれないんだ。訓練飛行の燃料代を削れば買えます、とは言われたけど、訓練飛行の燃料代を削る、なんて、とんでもない、と空軍全体が猛反発。それで、「雷電」で「サッカー戦争」を戦う羽目になったのだが、そのために却って、「雷電」は半伝説の存在になり、ホンジュラス救国の戦闘爆撃機として称えられることになった。本当に分からんものだ」

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