礫
光が現れれば闇が生まれると、確かどこかで読んだ気がする。こんな厨二くさった言葉なんてそのときはただ軽く流していただけだった。それが今となっては、大分重たい言葉となっている。
形も歪で色も定まらない僕は、ずっと安定を探してごろごろと転がっていた。そんな僕を見て、誰も僕に触れようとはしなかった。触れさせもしなかったのだが。
とある日、それはやってきた。はじめまして、こんにちは。どうせお前も周りにいるだけなんだろうと僕はまた転がり始めようとした。だけど、転がろうと思ってもうまく転がらない。微かな温度まで感じる。
それは歪な僕を、少しずつ形どっていった。凹凸を滑らかにして、所々に模様をつけて、たまに失敗して凹ましてしまったり、数えきれない色で彩ったり。定まらなかった僕が、段々定まってくる。この気持ちを2文字で答えなさい。
これが安心
僕はまだ転がるのをやめたわけではないが、帰るところがあるというのはすべての根っことなっている。最後にはここに戻ってくればいい。転がり続ける毎日は終わった。
終わったはずだったんだ。
それは僕を形作ったが、まだ見ていないし触れてもいない部分がある。それは転がる僕の内側のこと。
僕自信もあまりよく分からないところなのであるが、ただひとつ分かるのは色だけ。
今までは僕がころころと変えていた色と反対の色だった。それが現れてからというものの、段々色を持たなくなってきた。ただ、白ではない。どんどんと黒に変わっていくのだった。
全体が黒くなるのではなくまるでダルメシアンのぶち模様のような、半紙に垂らしてしまった墨汁のような、そんな広がりかたで日に日に黒が増えていく。
僕の外側は綺麗に彩られているのに、なぜ内側は色が抜けていくのだろうか。
そして、それが形作った僕はまた、少しずつ歪み始めている。でもそれは、僕に再び触れてこようとはしない。手は伸ばしながら、触れない。
それの見る先は今、僕ではない。何なのか確認する勇気は僕にはなかった。
僕は今、ごろごろと転がっている。
帰るべきところに帰るのか、帰られるのか分からず、ずっとごろごろと転がっているだけだ。
礫はやがて、水に流されてしまうのか
それとも、それにまた拾われるのか