吹雪の中、轢かれた貴女を待つ
先輩を待つ少年の話。
「待ち合わせしない?」
「待ち合わせ、ですか?」
高校受験の近い1月21日。
先輩は急に言ってきた。
今は昼休み、まだ放課後とかあるのに。
待ち合わせ?
「うーん、いつがいいかな?」
「いつでも大丈夫です」
「そう? じゃあ、今夜6時。スマホで見たら7時から雪がひどくなるらしいから、早目にね。いつもの公園に」
「早目に、ですか」
何だろう?
もしかして、それは。
「お楽しみっ」
笑顔で言ってきた。
だが、先輩は死んだ。
帰り道、車に轢かれて死んでしまった。
異世界に行った、とか、そういうのはどうでもいい。
どちらにしても、この世界から席を外したことに変わらないから。強制的に、押し退けられるように。理不尽に。
そして、僕は。
―夜7時
「本当だ、先輩の言った通り、吹雪になった。7時ぴったりに」
笑いが出る。
制服姿、ウィンドブレーカーは着ていない。
それは、僕も死にたいから、なんだろう。
凍死したら、再会できるかもしれないから。
でも、僕は期待している。
この世界で先輩に再会することを。
夜の7時、この公園で。
先輩は、笑顔で来るはずなんだ。
きっと、僕に、言うために。
淡い希望。
8時になっても、日にちが変わってしまっても、僕は先輩を待っていた。
笑顔で来てくれる、そう信じて。
死んだ人を待つのはおかしい、自分でもそう思う。でも、希望を、これだけは失いたくないから。これがなかったら、僕に生きる勇気がなくなってしまうから。
吹雪は止まず、むしろ強くなり。
通行人はいない、雪がひどいから。
そして、僕の意識は、だんだん薄れていく。
先輩との思い出が次々と浮かんでくる。
『あの、あのさっ。趣味とか、ない?』
陰キャで、ぼっちだった新入生の僕に、苦笑いをしながら、声をかけてきてくれた。
それが、はじまりだった。
『はい、修学旅行のお土産。八ツ橋っ』
微笑んで、僕に京都で買った八ツ橋の箱をくれ。
『ど、どこか出かけたり、しませんか?』
『おっ、いいね、どこ行く?』
僕の提案を受け入れてくれて。
『待ち合わせしない?』
そして、今朝、言ってきた。
「ああ」
薄れていく意識、その中で僕は考える。
「だから、僕は期待をしたくて仕方ないんだ」
これが走馬灯でありますように、そしたら、今度こそ、先輩と再会を。
ありがとうございました。




