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Unrealistic  作者: クロ
5/8

4

ネフォ。

そう名乗った少女は、かつてあの空間で出会ったプレーンと、驚くほどよく似ていた。


けれど、決定的に違うとも感じた。

黒い髪を二つに結い、黒いワンピースを纏っている。

風に揺れる姿は壊れそうなほど儚いのに――その瞳だけは、妙に静かで、揺らぎがなかった。


彼女は言った。

**「世界を壊す」**と。


普通なら、子供の空想だと笑い飛ばしていただろう。

けれど、あんなものを見た直後では、否定する言葉が見つからなかった。


「君は……世界を壊すって言った」


僕の言葉に、ネフォは一度視線を落とす。

眉間に小さく皺を寄せ、ひと呼吸置いてから、口を開いた。


「ここは、《Unrealistic》っていうゲームの中」


淡々とした声だった。

感情を語るというより、事実を並べているだけのような。


「“リアル”って呼ばれてる街。

現実でゲームを起動すると、ここに来られる」


「でも――戻れない。行き先は、ここだけ」


一瞬、胸の奥がざらついた。


「長くいればいるほど、みんな忘れていく。

元の現実も、自分が何を選んできたのかも」


彼女は足元に落ちていた葉を拾い上げた。

枯れかけたそれを、指先で挟む。


「私は、この世界で生まれた」


ぽつり、と。


「どうして生まれたのかも、自分が何者なのかも……分からない」


一拍、沈黙。


「でもね」


彼女は顔を上げた。


「この世界は、存在してはいけない。

それだけは、はっきり分かる」


ネフォは指を離す。

葉は抵抗することもなく、地面へと落ちた。


《Unrealistic》。

通称――アンリア。


一年前ほど前から、急に流行り出したゲーム。

それ以上のことを思い出そうとすると、頭の奥に靄がかかる。


「さっきの男は……?」


貼り付いた笑顔。

次の瞬間、形を失い、化け物へと変わった姿。

思い出しただけで、背中が粟立つ。


「この世界には、“間違い”がない」


ネフォは即答した。


「じゃあ、あれは何だ?」


問い返すと、彼女は一瞬だけ遠くを見る。


「人が“選ばなかった未来”

正しくないと切り捨てられた可能性」


「その、成れの果て」


その言葉と同時に、視界の端が軋んだ。

黒く歪んだ何かが裂け目から滲み出し、ゆっくりと人の形を作る。


視界の中央へ――にじり寄ってくる。


(ああ、見るんじゃなかった)


そのとき、響いた。


少女の声。

感情のない声。


「ERROR」


反射的に、目を伏せた。


「この世界は、止まってる」


ネフォの声だけが、続く。


「進むことも、戻ることもない。

だから誰も、自分と向き合わなくていい」


沈黙。


「君は――」


彼女は、僕をまっすぐ見た。


「このまま、裏切り者のレッテルを一人で抱え続けるの?」


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