表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

第1話:王都の囁きと影の介入 -3

王宮の警備システムは、単なる暴走ではなかった。

それはまるで、ミネルヴァのエージェントたちの思考を読み、その動きを予測して攻撃を仕掛けてくるかのように、執拗に彼らを追い詰める。


庭園の地面が赤く光り、魔力レーザーが火花を散らす。

地下からは重々しい足音を立ててゴーレムが起動し、四方八方から彼らに迫る。


「ぐあっ!レーザーだ!

またパターンが変わったぞ!」


リョウが叫び、間一髪で地面に伏せる。

レーザーは彼の頭上を掠め、背後の石像を粉砕した。


「こんなに柔軟な攻撃パターン、通常の警備システムじゃありえねぇぞ!」


リーラが素早く魔力で結界を展開し、降り注ぐレーザーから一時的に仲間たちを庇う。

だが、その結界も、次々と放たれる高出力のレーザーの前には、長くは持たない。


「このシステム、まるで生きているようだ…いや、我々の動きを読んでいる!」


カイトが驚愕の声を上げる。

彼の魔力パターン解析ゴーグルが、警備システムの複雑な魔力流を映し出していた。


その波形は、彼らの移動予測経路と、驚くほど正確に一致している。



アキラは必死に警備システムのハッキングを試みるが、高度なAIによって防御されており、なかなか突破口が見つからない。

彼のサイボーグの指先が、キーボードの上を忙しく叩く。


「クソッ、こんな高レベルのAIが、王宮の警備システムに組み込まれているなんて……!

こいつ、まるで俺の思考を先読みしているかのように防御パターンを変えてくる!まったく厄介だ!」


エリナは、騎士としての訓練だけでは対応しきれない事態に直面していた。

警備システムは、彼女の剣術の死角を狙うように攻撃を仕掛けてくる。


彼女は、この状況の異常さを肌で感じていた。


隣で恐怖に震えるセレフィアの小さな手が、エリナの服の裾をぎゅっと掴む。

エリナは、セレフィアを守るため、そして騎士としての矜持から、必死に耐える。


しかし、ミネルヴァのエージェントたちの即興的な指示が、彼女を危機から救う。


「右だ!」


カイトが叫ぶ。


「伏せろ!」


リョウが咆哮する。


彼の指示に従い、エリナは咄嗟に地面に身を投げ出した。


彼女は反射的にそれに従い、レーザーやゴーレムの攻撃を紙一重で回避する。

彼女の身体能力と判断力が、彼らの即興的な連携に、図らずも加わっていた。



敵のAIは、エージェントたちが王家古文書庫を目指していることを予測していた。

王宮の主要な通路が、次々と魔力的な障壁や重い鉄格子で封鎖されていく。


「まずい、裏をかかれた!こっちのルートは完全に塞がれてる!」


アキラが焦りの声を上げる。


だが、カイトは冷静だった。

彼の脳裏には、事前に把握していた王宮の内部構造と、古文書庫の位置が立体的に構築されている。

彼は瞬時に新たな脱出ルートを提示する。


「待て、この隠し通路がある!ここなら迂回できるはずだ!」


彼の指先が、ホログラムの隅にひっそりと描かれた点線を示す。


リョウが怒声と共にゴーレムの注意を引きつけ、リーラが魔力で足止めする。

その隙に、アキラが警備システムの最後の障壁を一時的に麻痺させる。

カイトは通信端末でルートを指示し続ける。


「わたしたちも一緒にいきましょう」


セレフィアはとっさの判断で、ミネルヴァのエージェントたちについていくほうが安全であると判断した。


「セレフィア殿下、こちらに!」


エリナもまた同じ判断をし、彼らの指示に従い、時には身を挺してセレフィアと仲間を守りながら、狭い隠し通路へと飛び込んでいく。


息の合った、しかしドタバタとした連携だ。





彼らは、王宮を脱出することには成功した。


間一髪の綱渡りだった。



全員が、汚れた服と息を切らしながら、アジトへと戻るしかない。



しかし、古文書のコピーは、ドタバタの最中に一部しか入手できなかった。


王都全体に広がる不自然な静けさ、そして常に背後に感じる見えない「監視の目」の存在を、彼らは改めて認識することになった。




脱出後、息を切らしたエリナが、ミネルヴァのエージェントたちの正体と、王宮で起こった異変の真相について、彼らに問い詰める。

彼女の瞳には、驚きと混乱、そして皇女の安全と王宮の秩序を守りたいという、隠しきれない騎士としての使命感が宿っていた。


「貴様たち!一体何者だ!?そして、この王都に何が起きている!?」


彼女の声は震えていたが、その眼差しは真実を求める騎士のそれだった。


カイトは、エリナの真っ直ぐな視線を受け止めた。

彼女は、この秘密を知ってしまった。

ならば、もう彼女を巻き込むしかないと、彼の頭の中で結論が導き出される。


「……我々は、アルテア王国直属の極秘特殊機関だ」


カイトは、静かに答えた。


「そして、この王都で起きている『不自然な調和』の裏に潜む、見えない『調律者』の影を追っているんだ」


毎日19時にエピソードを更新します。

ほかのスピンオフ作品も並行連載していきます。


ぜひご感想をお寄せください。

また評価とブックマークもしていただけると嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガイア物語は非常に多くの作品群で成り立っています。
それぞれの視点、文章のテイストを変えています。
この複雑なガイア物語を十二分に楽しんで読んでいただくためにぜひガイア物語の歩き方ガイドを参考にしてください!


中核シリーズ
● S-1 ガイア物語 ~星を紡ぐ者たち~ 普通の高校生、すべてを《コピペする能力》を駆使して異世界で世界最強パーティの最強サポート役に!(本編)
● S-3 ガイア物語 ~影の調律者~ 異世界でスパイに。未来の異世界人たち、最強デコボコチームが世界の調律の真実を暴く!
● S-5 ガイア物語 ~失われた虚構の千年史~ 美しく若き女王が暴く王国の光と影。オッドアイに映る、神と悪魔、過去と未来、すべての真実とは…

短期集中連載
● S-2 ガイア物語0 ~地球奪還作戦~ 奪われた大地を取り戻せ!
● S-4 ガイア物語  ~歴史の調律者の誕生~ シータの旅立ち
● S-6 ガイア物語 ~ガイアに刻まれた残響~ 名も無き彼らはガイアの礎になった…
● S-7 ガイア物語 ~大地を駆ける絆 〜 アークナイツ、旅立ちの足跡〜
● S-8 ガイア物語 ~星屑食堂の地球ごはん~ 異世界で記憶と努力で日本食づくり
● S-9 ガイア物語 ~ほころび日常~ 今日も世界の片隅で淡々と何とかクエストをこなしてます~
● S-10 ガイア物語 ~ほころび日常2~ 今日も世界の片隅でひたすらクエストをこなしてます
● S-11 ガイア物語 ~国造り神話~ 歴史の調律の始まり
● S-12 ガイア物語 ~技術者の攻防〜 技術の融合が最強の仲間と世界を変える
● S-13 ガイア物語 ~記憶の巫女~ 調律の歴史に抗う美しき巫女の一族の物語
● S-14 ガイア物語 ~アルテア通信~新人獣人記者ラナの王国取材日誌①


ショートストーリー
一話完結。本編などの補完のストーリーです。
騎士団長の秘められた夜会 ~赤魔導士と聖騎士、静かなる酒杯~
ツンデレ従姉妹は知っている
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ