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無限の王国   作者: STERVEN
1/1

生まれ変わった者

 

 年 0


 カインは幽蓮ゆうれんの王国という辺境の地にて、幼子として再びこの世に生を受けた。この場所には隠された謎が潜んでいる。年若いながらも、彼は集中すると周囲の時間の流れが違って感じられることに気づいていた。時に早く、時に遅く。やがてこの才能が、彼の修行の道を切り開くこととなる。


 年 5


 隣村近くに落下した隕石は、まさに異常な出来事だった。彼はどのように行動すべきか思い悩む。その中で、時間の力がより鮮明に目覚めつつあるのを感じ取っていた。


 村人たちが恐怖に駆られて遠ざかる中、彼は迷わず隕石のクレーターへと足を踏み入れる。隕石から放たれる強大なエネルギーに、一歩進むごとに全身が試される。クレーターの縁に立つと、隕石の表面に古のルーンが脈打つように光を放っているのが見えた。


 内なる声が警告を発していたが、それを振り切って両手を隕石に添え、力を注ぎ込もうとする。解放された力はあまりに圧倒的で、一瞬だけ周囲の時間の流れが混乱する。落ち葉が上へと舞い上がり、空気は凍りつき、太陽は空を早送りするように動くのだ。


 隕石の力のほんの一部を吸収し、時間への結びつきは確かなものとなった。しかし余剰の力が均衡を崩し、以降、時間の力を使うたびに周囲の時間が不安定になる可能性が生じた。


 カインは残された隕石の力を無駄にせず、更なる修行を進めようと決意する。時の結びつきを利用し、力を得たうえで、迫る夜烏教やがらすきょうの男との対峙に備えるのだ。


 夜烏教の男が近づいてくる中、彼の意識は研ぎ澄まされていく。目を閉じ、時間の流れに溶け込むように集中する。やがて彼の周囲に時間の粒子が渦巻き始め、隕石の残響が心の奥で脈動を刻むのを感じる。


 時間を遅くする力を使い、自らだけが動ける泡のような領域を生み出す。泡の中では時間が引き伸ばされ、カインは隕石の時間の本質を吸収し続ける。だが、その力の危うさをも同時に感じ取っていた。扱いを誤れば、自らを飲み込むかもしれないと。


 目を開けると、男は目前に迫っている。だが、泡の中では彼の動きは遅く、空中で止まったかのようだ。時計の針は進み続けているが、カインにはまだ行動の余地が残されている。


 彼は大量の時間エネルギーを得て、わずかな時間であれば自身の動きを加速または減速できるようになった。だが、長時間使えば使うほど、周囲の時間の流れを乱す危険は高まる。


 夜烏教の男は、カインの力に気づいてもなお、怯むことなく薄笑いを浮かべる。

「不安定な力を持つ者など、滅多に見ないものだ」

 男の体が黒い影へと溶け、瞬く間に暗黒の雲がカインを包み込む。雲は周囲の時間さえ呑み込み、息苦しいほどに圧をかけてくる。


 カインは男の作る歪んだ時の流れに対抗することを選ぶ。吸収した隕石の力を頼りに、時間の構造そのものへ意識を向ける。


 目を閉じ、心を深く沈めて時間の層を感じ取る。空気のさざめき、空間の波打ち――それを確かに捉えた。鍵は、自分と相手の時間を再び釣り合わせることにある。


 彼は相手の生む歪みを遅くし、影の雲が徐々に緩むのを感じ取る。周囲の空間は、砂がスローモーションで崩れるように変わり、やがて暗黒の雲は消え去った。男の姿が露わとなり、苛立ちを隠せない様子で息を吐く。


 こうして、半径1メートルの範囲で時間を操作できる新たな力「時間領域」を編み出した。


 歪みを打ち消し、周囲の時間の流れを正常に戻すことに成功した。時間の扱いはさらに精密になったが、その分、精神的な消耗は激しい。この力を長く維持するのは今の彼には困難だ。


 男は一歩後退し、興味深げにカインを見つめる。

「力を侮ったわけではない。だが、その不安定さはお前自身を破滅へ導くぞ」

 そう呟くと、背後に影の扉が開く。

「時の力の真髄を知りたければ、夜烏教へ来るがいい。こちらからは探さぬ。だが――見ているぞ」

 そう言い残し、男は完全に姿を消した。



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