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2日目 東京→デリー

 ホテルの朝食は和食を頼んだ。思っていたより本格的な料理で絶品の美味しさだった。こんなに美味しい和食を食べたのは京都を旅行した時以来だろうか。


 僕は東京から成田空港までどうやって行くのかを知らなかった。幸いなことに、ホテルから空港まで直行便のリムジンバスが出ているそうだ。値段は三千円と高いけど、しかし、道に迷って飛行機に乗り遅れたら大変なので、バスに乗り込んだ。バスの中は快適で渋滞もなく、空港まで意外に早く着いた。


 成田空港は思っていたほど豪華な建物ではなかった。空港で先ずしなければいけないことは両替。東京三菱銀行で書類に必要事項を記入し、USドルの現金とUSドルのトラベラーズチェックに両替してもらった。そして、搭乗手続きを早めに済ませる。列車のような乗り物(シャトルっていうのかな?)で移動した。


 待合の場所には最初人が少なかったけど、だんだんと同じ便に乗る旅行者が集まってきた。やがて、『地球の歩き方』を読む日本人のバッグパッカーや、立派な背広を着ている裕福そうなインド人などでごった返しになる。僕は独りだったので、ちょっと孤独感を感じた。荷物チェックはそれほど厳しくはなかった。そして、定刻よりやや早い時間に飛行機に乗り込む。航空会社はエア・インディア。バンコクを経由し、十二時間でデリーへ着く予定である。


 僕の隣の座席はインド人のカップルだった。僕は外国人に慣れていないから、ちょっと緊張。CAは日本人とインド人が一人ずつ。インド人のCAは噂通りサリーというインドの民族衣装を着ていた。僕の列はインド人のCAが担当で、コミュニケーションはすべて英語で行われた。長い間勉強していた英語を初めて実際に使う時がやってきたのだ。CAは背の高いきれいな女性で、インド風のお香のような香水のような香りが漂っていた。


 数時間後、機内食の時間になった。インド料理だった。僕はインド料理が好きで、日本でインド料理店に何度も足に運んでいたので、素直に美味しかった。だけど、「インド風小菓」という甘いグラタンみたいな料理は、甘ったるいし香辛料もきついしで、食べるのが辛かった。周りを見渡しても、残している乗客が多かった。機内で酒を何倍もお代わりしている乗客もいた。


 僕は村上春樹の『羊をめぐる冒険』を文庫本で読み、機内で読破した。読むのは今回が二回目だけど、その間は実に十年の間隔があいているので、ストーリーはすっかり忘れていた。


 やがて飛行機は経由地のバンコクに着陸した。窓から風景を眺めると、木々がすっかり南国風で、機内の温度も急に暖かくなって、差し込む日差しもまさに南国のものだった。ああ、異国に着いたんだ、と実感。何といっても札幌では雪が積もっていたのだから! バンコクでは殺虫剤がまかれ、手際よく清掃が行われた。三分の一程の乗客がバンコクで降りて、入れ替わりに多くの外国人が乗り込んできた。


 二時間後、デリーへと離陸する。夕食はタイ料理だった。ナンプラーの効いた独特な料理はなかなか美味しかったけど、とにかく量が多く、半分くらい残してしまった。バンコクからは日本人のCAは居なくなり、機内放送も日本語はなし。英語のアナウンスはほとんど聞き取れず、心細かった。機内のスクリーンではインド映画が流れていた。インド人の女優さんがWヒロインで、演技が大げさなところもかわいらしくてチャーミングだった。


 インドと日本の時差は三時間半。十二時間のフライトを終え、現地時間で午後九時にデリーに到着。腕時計を合わせる。降り際に隣の座席のインド人に話しかけられる。「デリーへ行くのかい?」「あ、そうです」「目的は?」「観光です。あなたは何故日本に?」「ビジネスだよ」などと英語で話し、最後は「良い旅ができるといいね、グッドラック!」と優しい言葉をかけてもらった。


 さて、最初の難関。入国審査。ここで飛行機の前に座っていた日本人三人が話し込んでいたので、思い切って話しかけてみた。男性一人と女性二人。皆初めてのインド旅行だそうだ。中学校の同級生に似ている男性は初日の宿も予約していないそうで、大丈夫なのかな?と心配になった。税関には偉そうなインド人職員が威張って座っていて怖かったが、最後は微笑んでスタンプを押してくれた。


 デリーの空港は首都の空港だとは思えないくらいに質素な建物で、空港の中を蚊が飛んでいた。トーマスクックでトラベラーズチェックを百ドルだけルビーに両替してもらった。一ルピーが二・五円で、一ドルが百二十円ということはわかっていたのだけど、ドルとルピーの関係が即座に計算できなくて困るのであった。


 日本で予約したホテルの人が空港まで迎えに来てくれることになっていた。到着口ではたくさんの送迎が待っていた。その中から自分の名前が書かれている札を見つけ、名乗る。「あと何人か来るので。そこで待っていてくれ」と言われる。先ほどの日本人の女の子がいて、彼女もホテルの出迎え付きらしく、ちょっとだけ話す。彼女は早速虫よけスプレーを腕などにかけていた。僕は虫よけスプレーを持ってこなかった。


 やがて、残りのお客さんも到着。その人たちは同じ便の飛行機で近くに座っていた日本人で、一人は黒ぶち眼鏡をかけていて、もう一人は痩せていて無口だった。この二人とは今後も旅先で何度も会うことになる。


 空港から出て、自動車に乗り込む。ポンコツな車でガタガタの道を八十キロ以上のスピードで飛ばすので、怖かった。道路沿いに露店が並んでいて、木々はヤシの木のような南国の樹木ばかりで、インドへ来たことを実感した。インドには信号がほとんど無いような気がした。ホテルの人は日本語もしゃべれるようで、日本語と英語を交えていろいろ話した。「良ければ明日、デリーを五十ドルで案内してあげるよ」と言われたが、高いので、「ほかの日本人と相談して決める」と返したら、相手は歯切れの悪そうな表情を浮かべた。


 ホテルに着いた。思っていたほどのきれいなホテルではなかった。エレベーターのドアを手動で開け閉めしなくてはならず、戸惑った。背の低い子供みたいな顔をしたボーイに部屋まで案内してもらったのだが、なかなか帰らない。僕が察して「チップ?」と言うと「イエス」と言う。僕はルピーの小銭をまだ持っていなかったので、自分の持っている一番小さなお金1ドル札を差し出したら、「もっとくれ」と言う。おいおい。その後、「僕がミネラルウォーターを買ってきてやるよ」とボーイに言われ、またチップをせがまれたら大変だと思い、「自分で買いに行くから大丈夫だよ」と断る。


 ロビーにはインターネットができる端末が置いてあった。OSはウインドウズ98だったが、日本語の表示ができなかった。とりあえず自分のHPの掲示板に「無事についた」とローマ字で書きこんだ。風呂にはバスタブがついてなかった。お湯は時間がかかるけど何とか出た。テレビは映らなかった。

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