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【ローファンタジー】 『ありふれた怪異、街の名物』

命繋がりの呪い

作者: 小雨川蛙

 

 恐ろしい呪いをかける悪神が居た。

 それは一方が死ねば、もう一方も命を落とすというものだ。


「この呪いにかかれば、どれだけ憎い相手を殺したくとも殺す事が出来なくなる。そして、生きている間は永遠に貴様らは憎み合うのだ」


 悪神はそう言って大笑いをした。

 自らがこんなにも恐ろしい呪いをかける事が出来ることを誇りに思いながら。

 それと同時に、どこか悲しく思いながら。


 ある時、悪神の下に二人の男女が現れた。


「神様」


 悪神の前で二人は言った。


「私達を呪ってください」


「貴様達をか?」


 悪神が問うと二人は頷いた。


「はい。私達は本気で愛し合っているのです。それこそ、どちらかが死ねば生きていけないと確信出来るほどに」


「だからこそ、私達を呪ってほしいんです。そうすれば、どちらかが死んだ途端、二人で死ぬことができますから」


 悪神はしばらくの間、呆然としていたが、やがて鼻を一つ鳴らして言った。


「このバカ共が。そんなに言うなら呪ってやる」


 そう言って、悪神は夫婦を呪った。

 夫婦は喜んで何度も悪神へ礼を行って去っていった。


 さて、ここからが問題だった。

 その夫婦がこの事を喧伝したらしく、悪神の下に数えきれないほどの恋人が押しかけて来たのだ。


「ふざけるな! 儂の呪いはこのように使われるためにあるのではない!!」


 悪神は大層嘆いたが、結局は人々に押し負けて悪神は数え切れないほどの人間を呪うはめになった。

 もっとも、人々はもう呪いではなく祝福として捉えていたが。

 ・

 ・

 ・

 さて、幾人もの人間が悪神に呪われてから十数年後。

 世間にはすっかり熱が冷めた恋人が蔓延していた。

 いっそ、別れてしまえば良いのだが、もし別れた後に相方が危険なことをして下手に命を落とせば自分も死んでしまう。


「くっそ、こんなことならあんなところに行かなきゃよかった……!」

「それはこっちのセリフだよ! ほんっとうに馬鹿なことをした!」


 かの呪いが『若気の至りの呪い』などと言われるようになっていることを悪神が知らないのは幸運だったかもしれない。

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― 新着の感想 ―
 読後、そんな景色に覚えがあるようにも思え、解けないようにと”かけられたアレ“も若気の呪いの痕跡なのかと思うと、撤去された折に歓喜していた人々も居たのだろう事に気付かされ、さすがの皮肉に笑いました。
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