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第9話 四神教幹部。

「探偵くん!Bランクおめでとう!!これは祝勝会でもしなきゃいけないね。」

まるで自分が勝ったかのような喜び様だな。


しかし、まさかBランク試験の相手が「猛虎」だったとは思わなかった。


だがアイツは本当に二つ名持ちなのだろうか。

まるで魔獣を相手してるかのような知能の低さだった。


「祝うほどの物でもないだろ。相手も大したことなかったからな。」

「そんなことはないよ。Bランクっていうのは主戦力に換算されるってことだからね。それに私はそういう時に褒めてくれる人が恋しかったからさ。」

リルアは少し寂しげな表情でそう口走った。


そうか…。


こいつはBランク、Aランクに上がった時もずっと1人だったんだな。


「じゃあこれはリルアのAランク昇格も含めた祝勝会にするぞ。あんな雑魚に勝っただけで俺だけが褒められるんじゃ、こっちも困る。」


「そんな気を遣わなくていいのに。それに彼は強いさ。でも技を使う君と力任せの彼では相性が悪かったんだろうね…。」


気を遣わなくていいって…気を遣ってるのはどっちだよ。

思わず俺は心の中でそんなツッコミを入れた。


「これは2人の祝いだ。その条件が呑めないなら祝勝会も無しだ。」

俺が断固として譲らない姿勢を見せると、リルアが遂に折れた。


「まったく、君はいつも頑固なんだから…。」


その後、俺たちは祝勝会と題して、街の少し高いレストランにて夕食を済ませた。


そして2人は、眠りについた。


―――――――――


また、朝が来た。


今日はいつもより一段と面倒臭い日だ。


なんて言ったって今日は連携確認と事件場所の下見を兼ねて低難易度依頼を受注する日だからだ。

あぁ、身体が言うことを聞かない…。もう1回寝よう。


そんな俺の背後から「ドンドンドン!」と扉を叩く音がする。


「探偵くん!もう約束の時間だよ!もしかしてまだ寝てるのかい!?」


やばい、起きなければ…。

だが、昨日飲みすぎたのが原因なのか頭が痛い…。


「もう…。入るからね!」

リルアは容赦なく扉を勢い良く開いた。

あ、まずい。


「え…っと…。100歩譲って君が寝ているのは理解したけど…。どうして裸なんだい?」

リルアはじっと俺を見つめながらそう質問してきた。


「状況を見るに、部屋のシャワーを浴びようと思ったところ、そのまま寝たらしいな…。」

「そうだったんだね…。じゃあ私はギルドで待ってるから!なるべく早く来てくれると嬉しいな。」

そんな状況にも関わらず、2人は冷静に会話をしていた。


いや、俺の場合はまだ寝ぼけていたんだろう。


ガチャっと扉が閉まると同時に、罪悪感と羞恥心が少し俺の中に芽生えたのは言うまでもない。

どうやらそれは、俺だけではなかったらしいが。


「はぁ…。シャワー浴びてギルドに向かうか。」

そうして俺はギルドに向かうため、支度を始めた。




「探偵くん…。さっきはごめんね?返事を待つべきだったよ。」

「謝るのはこっちの方だ。それに元はと言えば俺が寝坊したのが悪い。」


そうだ、非は完全にこちらにあるのだ。


リルアが謝罪する道理は無い。


「そう言ってくれると助かるよ…。ところで、何か良い依頼は見つかったかい?」

「ゴブリン退治ならあるが、これにするか?」


そう、俺たちは今ギルドの掲示板にて絶賛依頼探し中なのだ。

ギルドには毎日大量に依頼が送られてくる。


その中から件の半壊した森の近くから依頼されたものを発見するのはとても難しい。


「仕方ないね。ゴブリンとの戦闘は匂いが着くからなるべく避けたかったけれど…。」

わかりやすいほどに気を落とすリルアだっが、こればかりは仕方ないと諦めている様子だった。


「はい!ゴブリン退治の依頼ですね!ではこちらで受付させて頂きます!お2人とも頑張ってください!」

「エリスさんありがとう。じゃあ行ってくるね。」


クリスにも見習って欲しいくらいに彼女は真面目だな。


似ているところと言ったら髪色と元気のいい所しか無いんじゃないか?


俺たちはエリスに見送られながらも、ゴブリン退治という地獄の作業に足を進めた。




「ところで!そろそろ爆発の件と私の記憶にどんな関係があるのか気になるのだけれど、教えてはくれないかい!?」

「そうだな!まずお前は四神教っていう異教は聞いたことあるか!?」

俺たちはゴブリンの首を互いに刎ねながらそんなことを話していた。


そして、この爆発には異界の神を信仰する四神教が絶対に関わっているはずだ。


そして記憶の件にも…。


「ふぅ…。四神教…聞いたことはあるけど、あまり詳しくは知らないかな。」

「そうか…。この爆発と記憶の喪失は共に四神教幹部が関係していると俺は睨んでいる。というか100%だ。」

俺は過去にあった出来事を思い出し、無意識に手に力を込める。


「つまり…私の記憶はその幹部によって奪われ、爆発も引き起こされたと言いたいのかい?」

「あぁ…。セルシアが記憶と存在を奪われたように、お前も奪われたんだ。」

リルアは驚いたような顔を見せた。


当然だ。ここまで大規模な爆発を起こしたのが人間で、そして記憶まで奪うことのできる能力まで存在するとしたら、それは神の領域であると感じるのが普通だ。


「セルシアさんの記憶や存在が奪われたって…。でもフィーリアさんは覚えていたじゃないか!それにSランク冒険者が後れを取るなんて…!」


「いや。恐らくもう覚えていないだろう。長命種は人間よりも記憶の薄れが遅いようだが、それでも昨日の時点で既に限界だったんだ。恐らく、今セルシアについて覚えているのは記憶に触れられる俺だけだ。」

そして俺はリルアやセルシアに起こった記憶喪失のおかしな点について説明を始めた。


「お前はおかしいと思わなかったか?記憶喪失なら自分だけの記憶が無くなるのが道理だ。しかし、お前は周りの人間にすら忘れられている。詰まるところ、俺たちの目的は全く同じ者に帰結していたんだ。」


通常、自分の身内が記憶喪失になんてなったら、その当人を1人で旅なんてさせないだろう。


ましてや、記憶を失くして未だ1年も経っていないリルアなら、1人での外出すらも憚られる状況であるはずだ。


そして、俺がそう言うと同時にリルアの顔は曇り、その場に膝から崩れ落ちた。


「俺にリルアが記憶喪失した後、何を思い何をしてきたのかは分からない。だが…。1人でよく頑張ったな。」

俺が頭を撫でると、リルアは身体を震わせた。


自分の記憶が誰かによって奪われたということ、そしてそれはSランク冒険者ですら届き得ない境地の者であることを知った彼女の心の中は今、複雑な気持ちが渦巻いていた。



―――「お!居た居た!お久だなぁ!シュンくん!」


そんな声が突然俺の背後から聞こえた。

その声に聞き覚えのあった俺は、嫌々ながらも反応してやることにした。


「今日はお前に会うつもりは無かったがな。四神教幹部が1人、朱雀の権能を持つ者。久しぶりだな、ガル。」


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