表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

夏空と雹(1)

 暖かい手で運ばれた気がする。

 気付いた時には、知らない場所にいた。私は横たわっていて、その私の顔を母が覗き込んでいる。傍らに父もいる。

 

「お母……様?」

 

「エル! ああ、気付いたのね!」

 

「……」

 

 私は何が何だかわからなくなって、ぼーっと母の顔を見つめてしまった。

 

「エル、わかる? マクスウェル公爵令息が、ポータルを使ってあなたを首都まで運んできてくださったのよ。でも、卿はすぐ帰ってしまうし、あなたは、うわごとのように、公爵令息に助けていただいた、と繰り返すだけだし……。いなくなったと聞いてから何日も何の連絡もなくて、私たち……」

 

 うわごと? 私が……?

 

「エル……? 聞こえてるの?」

 

 母は一旦言葉を切ると、不安げな表情で、私に問いかけた。

 

「え、ええ……」

 

 ――声が出る。

 

「あの、ここはどこですか……?」

 

「首都の病院よ」

 

「首都……!? 何故、首都に……私は六日も眠っていたのですか?」

 

 私はひどく混乱していた。両親が偶然東部に居合わせていた、と言われた方がまだ現実的だった。東部から首都へは馬車で六日かかる距離なのだから。

 だが、母も困惑した顔をした顔をしていた。「だから……」と説明し始めた母を押しとどめるように、父が口を開いた。

 

「エル。東の砦にはポータルがあることを知っているだろう。お前はそのポータルを通って首都まで来たんだ。……皇室の許可がなければ使えないもののはずなのだが、マクスウェル公爵令息が融通してくださったようだ」

 

「え……」

 

「何があったか聞きたいところだが、今は混乱しているみたいだ。体も辛いだろうし、今はゆっくり休んだ方が良い」

 

「ええ、そうね。それがいいわ」

 

 父が言うと、母もうなずいた。

 

「ありがとうございます、お父様、お母様……」

 

 ぼんやりとした思考がまとまりだし、状況が把握できると、思い出したかのように体のあちこちがズキズキと痛んだ。

 マクスウェル公爵令息が――。

 結局、あの屋敷では何が起こっていたのだろう。両親には何と説明すれば良いのだろう。

 答えが見出せず、私は瞼を閉じてやり過ごすとにした――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ