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天竜と天龍

作者: カケル
掲載日:2022/06/08

二頭の圧倒的な強者がいた。


生きとし生きる生物は皆、彼らを見ると動けなくなる。

生命の危機に陥った者は。真に恐怖を味わってしまった者は。

その場から離脱する思考さえ奪われる。


二頭が息を吹けば、山や海が荒れる。

吠えれば強烈な日差しと豪雨に見舞われ。

空を舞えば惑星上から数百種類以上もの生物が消えた。


それほどまでの存在が。


互いに真っ向からにらみ合っていた。


殺意をぶつけていた。


ただの喧嘩ではない。

戦争だ。


「「……」」


天竜が羽ばたく空は、灼熱に染まっていた。

真っ赤に煮えたぎる皮膚の極度の熱によって。

羽ばたくだけで、すべて焼き尽くす高温の熱風が押し寄せる。

星の西は、彼が治める領域。

常に太陽の熱にもさらされ、緑が生い茂っていた大地は砂漠と変わっていた。


一方、天龍が羽ばたく空は、真っ暗な激流に染まっていた。

海をも超える水を貯えられる皮膚によって。

羽ばたくだけで、すべてを流して吹き飛ばす豪雨が押し寄せるのだ。

星の東は、彼が治める領地。

常に暗い雨と雷、そして暴風にさらされ、緑も大地も川も山もすべて海と変わる。


「その水、いつも煩わしいですね」


「その熱、いつも煩わしいな」


彼らの争う理由は単純だ。

自分の望む領土の在り方を損なわれている。


「もう殺してしまいましょう」


「もう殺してしまえ」


星の反対側に住み、一切関わろうとしない彼らであったが。

どちらかが移動する、もしくは活発化するだけで。

その均衡は簡単に崩れた。


住み心地の良い土地が荒れる。

家が壊される。


百年を生きたには、もう我慢の限界だったのだ。


――同時だった。

互いに東西へ赴き、相対している。


その余波で、星は壊滅的だ。


「死になさい」


「死にさらせ」


天竜と天龍が吠えると。

天と地、そして海が割れた。

文字通り、割れた。


両頭はその巨大な咢を開け、エネルギーを圧縮させる。

火と水。

対照的な性質を持つ力が、その一点に集まった。


エネルギーが凝縮するたびに、星が不活性化していく。

彼らの持つ力が強すぎるがために、星が耐えられないのだ。


すべてが燃えて、すべてが沈んでいく。


そして収束したエネルギーの塊が両頭の口腔から放たれた。

一直線に向かっていく破壊の奔流に、天も大地も海も抉られて道ができる。


そして激突。

大爆発が起こり、そこを起点に巨大なクレーターが掘り起こされた。

超巨大のエネルギー衝突により、星の崩壊がますます加速していく。


――拮抗状態。

両頭ますます力の出力を上げて相手を滅ぼそうとするも、その影響で空間が軋みだした。

続けば、激突する保存されたエネルギーが限界を迎え。

ついにはこの銀河系を一瞬にして吹き飛ばす。


「早く終わりなさい」


「さっさと消えろ」


互いにそれは理解していた。

長引けば何もかも失う。

だからこそ、余計に力が入る。


故にこそ。


それは突然訪れた。


――――


一瞬だった。


――――


目の前が真っ白に染まり、すべてが無に帰った。


――――


両頭が何かを口にする時間もなく、何もかもが消えた。


――――


あっけなく、あっさりと。


――――


『――――――おまえたちは阿呆だな』


そして突然聞こえた、老若男女どの世代にも当てはまらない不思議な声。


『なぜこうも同じことを繰り返す』


声の主は頭を抱える。


『また初めから始めないといけないのか』


無機質な空間。

真っ白な場所でただ二つ形のある、豪華絢爛な玉座と宙に浮かぶコントロールパネル。

声の主はそのパネルを操作して、破壊された【世界】の修復作業に取り掛かった。


『まあよい、また作り直せばいいだけだ』


何度も繰り返される歴史。

記憶をもって生まれ直した天竜と天龍であっても。

ましてや、それを作り直すこと百回目を記念する作業であったとしても。


何度でも歴史は繰り返される。


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