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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ トーマ ※
9/84

【8】※ guide(案内人)part① ※


俺達は『No.80195373』の部屋に入った。



「それじゃ、俺から行くか。前任者と交替する。ユーキはとりあえず見てろ。」



「ああ、よろしくな。」



部屋の中には俺達と同じ格好をした案内人がいた。

トーマは軽く挨拶を交わし、前任者と入れ替わった。



俺も軽く会釈をした後、部屋の隅、死角になる場所に身を潜めた。



前任者は部屋を出ていった。



……しかし、まるで天国?のようだな……

……多分行った事はないが、俺の中には確かに天国のイメージがあった。…



一面雲のようなフワフワした物で覆われている。そして部屋の筈だが、果てが見えない。無限に続く雲の中といった光景だ。

こんな部屋が無数にあるのか…



中央(らしき所)にトーマが立っているのだが、周りの光景と一体化してまるで浮かんでいるようにも見える。



……神秘的な…とはこういう事を言うのだろう……



そんな事を思っていると、トーマの近くの空間が歪み出した。

そして、その歪みは段々人の形を成し、程なく1人の人間が現れた。



(!!)



「お待ちしておりました。」



(俺は夢を見ている…のか!?)



男の心の声が聞こえた。



「貴方様は人生をやり直したいとは思われませんか?」



「出来るのですか?」



「お望みとあらば…」



「出来るなら、やり直したいです。」



「それではご説明申し上げます。」



「まず…この空間では、貴方様は魂だけの状態でございます。」



「魂…?」



男は自分の身体を眺めている。



……実体はあるのだから、不思議にも思うだろう。……



「パラレルワールド、異世界転移という言葉をご存知ですか?」



(パラレルワールド、異世界転移…魔法とか魔獣とか勇者とかチートとか…ゲームや漫画によく出てきたな…)



……そうだな、俺もそう思ったよ。…だが、ゲーム、漫画?それを知っているということは、この男は、俺と同じような時空から来たのか?……



「皆様よくその様に思われますが、少なくともこの入り口はそういった世界には繋がっておりません。」



(…心を読んだ??)



……俺も読んでるよ……



「現実と似て少し違う平行世界、あるいは現実とは全く違う世界の事ですか?」



……正解!その通り……



「はい、その認識で概ね間違いはございませんが…

こちらの入り口でご案内出来るのは、前者のみでございます。」



(…こちらの入り口で?…

他にも入り口があるのか?…では荒唐無稽なあり得ない世界への入り口もある?)



……俺も未だに信じられないが、そうらしいぜ……



「こちらの空間は数多あるパラレルワールドの入り口の一つでございます。

こちらでご案内出来るのは貴方様が生存されている世界のみとなります。」



……にしても、完璧な説明、態度、言葉遣い…普段のトーマとは別人だ……



「現実と似た平行世界への入り口という事ですか?」



「左様でございます。」



「人生には色々な分岐路がある。人はどれかの道を選び、現在の自分になっているのでございます。」



「分岐路…自分が選択した道の事ですか?」



「選ばなかった道もある。

それらも含めて、選択の数だけ時空を超えて、ワールドは存在するのです。」



「それと、人生のやり直しがどう繋がるんですか?」



「魂がパラレルワールドを渡り、過去に存在するその世界の自分に入り、魂が融合される事で、人生のやり直しは可能となります。」



「選択を間違えた道を選び直す事が出来るんですか?」



「はい。可能でございます。最初はお試し期間がございますが、貴方様が望み、その世界と相性が合えば、正式に転移する事が可能でございます。」



「転移可能…」



……トーマは予備知識と言っていたが、この世界の仕組みをよく知らなきゃ、案内人は務まらないじゃないか!マニュアルを熟読してよかった……



「では、自分の魂は転移を希望する時空に行けるのですね?」



「左様でございます。」



(………心から愛していたよ。今迄大事にしてくれてありがとう。本当に幸せだった………

やり直しが出来るなら、すぐにもやり直したい!)



……?なんの事だ?誰かの言葉を思い出しているのか?……



「逸るお気持ちはお察ししますが…貴方様はどなたかをお待ちなのでは?」



「待つ…?」

(まさか…ミキが来るのか?)



……ミキ?この男の反応からして、彼の想い人か?……



暫くすると、トーマとその男の近くに女性の姿がボンヤリと浮かび上がってきた。



(ミキ…)



男はそのボヤけた姿に微笑みかけたが、暫くすると、その姿は幻のように消えてしまった。



「消えてしまった…」



男は絶望したように呟いた。



……彼の人生をやり直したい願望は彼女絡みか……一人の女性に拘ってこんな世界に迷いこむとは………しかし、トーマの説明では1人一部屋じゃなかったか?……



「………………ものだったのでしょう。」



「また彼女は来ますか?」



「彼女に思いがあるならば、また来訪されるでしょう」



(ミキにも人生をやり直したい気持ちがある?…幸福そうに見えたのに…)



男の少し嬉しそうな心の呟きが聞こえた。



「彼女を待たれますか?」



「はい、ここで会えるなら」



「畏まりました。それではまたお目にかかりましょう。またのご来訪、心よりお待ち申し上げます。」



そして、男の姿はボヤけていき、やがて完全に消えた。



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