表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ニモ※
76/86

【75】※ Practical training(実技研修) part11 ※


お互い何も言わず、ただ歩いている。

空気が重い。

ニモの目的は復讐……何も知らない俺が口だし出来る筈もない。

だが、『復讐』は何も生まない。いや、悲しみの連鎖を招くだけだ。

それに、ニモの虚ろな眼差しが気になった。

本当に『今の彼』自身が望んでいる事なのだろうか?

『一族の魂の集合体』とニモは言っていた。

一族の怨念に突き動かされているとしたら……。



「……着いたぞ。」



ニモが、ボソッと言った。



「……あぁ、そうだな。」



俺は『浄化室』の扉を見つめながら、そう呟いた。






ドアをノックし、沈む気持ちを振り払うように、大声を張り上げた。



「お忙しい所、すみません!

研修で参りました!」



ドアが開き、黒縁の眼鏡をかけた痩身で白髪混じりの年配の男性が、顔を出した。



「!!」



……日本人?…だろう…が……



「…そんな大声で言わなくても、聞こえていますよ。」



「失礼致しました。

識別番号9793519306、9793519307、以上2名よろしくお願い致します。」



「とりあえず、部屋に入ってください。」



「失礼します。」



俺とニモは促されるまま、部屋に入った。



「…あぁ、Reincarnation-9793519306、ニモさんと、oblivion-9793519307、ユーキさん、ですね。」



「はい、よろしくお願いします。」



「はい、よろしく。私は監督官のウエダと言います。」



……うえだ…やはり日本人だ…しかし、この既視感は?……



「……つかぬことをお伺いしますが、どこかでお会いした事がございませんか?」



ウエダは、不審な表情で、ジッと俺の顔を見つめたが、頭を振りながら言った。



「残念ながら、ユーキさんとお会いした記憶はないですね。」



「…そうですか。」



「ユーキさんは『oblivion』ですね?」



「はい、自分に関する記憶が欠落しています。」



「でしたら、今の質問は、不可解な物ですね。」



「そうですね。唐突にすみませんでした。」



「記憶を取り戻す為に、誰彼構わず、同じ質問をしているのでしょうか?

まぁ、私に似た風貌の人間など、たくさんいますし……

あなたは日本人?…なのですか?」



「はい。」



「それならば、どこかでお会いした事もあったかもしれませんが…失礼ながら全く記憶にございません。

まぁ、私も長年ここにいますし、生前も長く生きていましたから、忘れている可能性は0ではないと思いますが。」



……本当に俺に覚えがないようだ…だが多分、俺はウエダに会った事がある…そんな気がする…全く確証はないが……



「…そうですか。大変失礼致しました。」



「いえ、構いませんよ。

お二人とも、ここに来るのは初めてですね?」



「はい。浄化室は初めてです。」



「……いや、浄化室ではなく、異世界コンツェルンの事です。」



「おわかりになるのですか?」



「……まぁ…わかりますよ。」



……わかる?……



「扉の内側にあるセンサーで、お二人の情報は、こちらの端末に出ています。」



ウエダは、扉近くにある端末を、指で示した。



「画面をご覧になりますか?」



「はい、是非。」



「では、どうぞ。」



俺とニモは端末に近づき、画面を覗き込んだ。



『Reincarnation-9793519306‐1

name ニモ

研修 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇終了

w‐21


Oblivion-9793519307‐1

name ユーキ

研修 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇終了

w-21』



……今迄の研修部署も反映されている。だが『w』とはなんだ?それに識別番号の後の数字には見覚えがない。……



ニモは渋い顔をして、画面を睨んでいる。

ニモも端末など見た事がないのだろう。



……また説明が必要になるかもしれないな。……



「この識別番号の後にある数字は?」



「異世界コンツェルンを訪れた回数です。

お二人とも『1』、要するに1度目という事ですね。」



……運転免許証のようだ……



「それに、wとはなんでしょう?」



「くだらん!……そんな事はどうでもいい。」



俺の質問を遮るように発せられたニモの声は、静かだが苛立っていた。



「おい、ニモ!言葉遣いに気をつけろ。」



「ユーキさん、構いませんよ。

ですが、ニモさん、どうでもよくはないのです。」



「どういう意味だ?」



「今回の研修では、このようなモニターと端末を使って頂きますので。」



「……俺はこんな物見た事もないぞ。」



「ニモ!」



ニモは今迄もこんな調子で、監督官に接してきたのだろうか?不安になる。



「大丈夫ですよ。魂の情報をセンサーが読み取り、画面に表示する。

特に機械を操作する必要はないのですから。」



「………。」



「今回お二人の研修は『(せん)』で実施させて頂きます。」



……『選』?

以前ハルに聞いた浄化室の部署にはなかったように思うが……



「浄化室の部署は、『返』と『還』と『孵』の3部署と聞いておりましたが……」



「それはだいぶ古い知識ですね。」



言いかけた俺の質問を遮るように、監督官が答えた。



「……そうでしたか。」



……確かに、ハルが前回この会社に来たのは、だいぶ前の事だっただろう……



「……お二人とも、『守秘義務』という言葉はご存知でしょうか?」



ニモは全く反応なしだ。



「私は知っていますが、こちらでの業務と何か関係でもあるのでしょうか?」



「ユーキさんは、おそらくチーム内でその情報を聞いたのでしょうが、本来、研修中に知り得た情報は、例えチームメンバーであっても明かしてはならないのです。」



……しまった!……



(((余計な事を言いやがって!)))



ニモの心の声が聞こえた気がする。刺すような鋭い視線も感じた。



監督官が言う事が本当なら、情報交換会は、会社の意に反する事になる。だが、チーム内では当たり前だった。



「……しかし、そのような決まり事は、知りませんでした。」



「チーム内であっても、守秘義務違反は感心しませんね。」



「申し訳ありません。」



「未経験者のあなたが、謝罪する必要はありませんよ。」



「経験者のメンバーも、全く知らないようでしたが……何か、罰則でもあるのでしょうか?」



俺の不用意な発言、守秘義務違反で、チームの点数を下げられるのでは?と一瞬危惧したのだが



「…まぁ、今は規則があってもないような状態ですからね。……仕方ない事かもしれません。

ユーキさんが心配されている罰則等、特にはありませんし、監督官の私にはそんな権限もありません。」



ウエダは、ヤレヤレ、といった様子で、肩をすくめて答えた。



「……ありがとうございます。」



「お礼を言われる筋合いはありませんね。

監督官の仕事は、研修生の働きぶりに点数をつける事だけですので。」



「……そうですか。」



「しかし、今後は気をつけてくださいね。

チームメンバーにも、そのようにお伝えください。」



「承知致しました。」



「では、本題に戻りましょうか。

浄化室『選』は、文字通り、魂の選別を行う部署です。」



「…選別?……どういう事ですか?」



「なぁに、単純な事ですよ。浄化室に送られてきた魂の情報を確認して、振り分け、各部署に送る所です。」



「振り分ける……」



「現在、浄化室には、今回の研修部署である『選』、そして『返』と『還』と『孵』と『遷』の5部署があります。」



「『せん』が2つですか?」



「まぁ、字も仕事も違うのですが、マニュアルを読んで頂けたら、ある程度わかると思います。」



「わかりました。」



「ところで、ニモさん、何かご質問はありますか?」



「……ない。早く研修を始めてくれ!」



ニモは相変わらずのタメ口だ。



「そうですね。長話が過ぎました。

では、マニュアルをお渡ししますので、まずはお読みください。

質問はその後でお願いします。」



「承知致しました。」

「わかった。」



「では、また後程。」



ウエダは俺達にマニュアルを渡し、そう言って、部屋の奥に消えた。





俺とニモは扉近くの椅子に座り、机を隔てて向かい合った。



「じゃ、マニュアルを読もうか。」



「……お前は余計な事を言ったな。」



「……情報交換会の事か?」



「そうだ。それに研修に関係ない話をした。」



「……そうだな。すまない。」



「お前の事情はわからんが、俺は一刻も早く研修を終わらせ、転生せねばならんのだ。」



「研修が終わっても、すぐに転生は出来ないだろう?」



「……だが、お前達のように、悠長にしている余裕が俺にはない。」



「……そうか。……だが、急ごうが急ぐまいが、希望の転生先は逃げやしない。」



「そんな事はわかっている!だが、落ち着かないのだ。」



……一族の怨念が駆り立てているのか?……



「だから、ニモはいつも苛立っているのか?

だが、その苛立ちが表に出て、監督官の機嫌を損ねたら、それこそ点数に関わる。言葉遣いにも気をつけろ。」



「……そうだな。……気をつけよう。」



「特にウエダは表面上は穏やかだが、裏で何を思っているのか、わからない。」



「……まるでウエダを知っているような口ぶりだな?」



……!?…何故そんな事を言ったのだろう?……



「…い、いや、日本人にはそういう奴も多いからな。」



「そうか。」



「…ともかく、マニュアルを読んでみよう。」



俺は動揺する自分に戸惑いながら、マニュアルに目を落とした。



【あとがき雑学】


『運転免許証の番号12桁の意味』


※1~2桁目:

免許証の交付を受けた都道府県の公安委員会の番号です。

(例)

北海道「10」

東京都「30」

大阪府「62」


※3~4桁目:

免許証を取得した年の西暦の下2桁です。

(例)

1990年「90」

2000年「00」

2024年「24」


※5~10桁目:

各公安委員会が管理する独自の番号です。


※11桁目:

10桁までの数字が正確かどうかを確認できるチェックデジット(データが誤認識されていないかを判定するために一定の計算式で算出された検算数字)です。


※12桁目:

紛失、盗難などによる再交付の回数です。

最初に免許証を取得した時は「0」

再交付を受けるたびに「1」「2」と数字が増えます。


オマケ:

免許証の5桁、6桁目の数字が「学科試験の減点数」だという噂もあるようですが、全く関係はありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ