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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ トーマ ※
7/84

【6】※ Practical training(実技研修)part1 ※


いよいよ実技研修の初日が来た。



((…初日?時などあまり関係ない世界だし、魂には睡眠も必要ないから、入社式以来ずっと稼働している。初日とは言わないのか…))



「初日で間違いない。」



俺の心の声に応えたのは、トーマではなく、意外にもアンリだった。



「初めての実技研修である。生前の感覚で例えるならば、初日でよろしい。」



「…そうだよな。…ありがとう。」



軽く頭を下げて顔を上げると、アンリは真顔で俺の顔をまっすぐに見た。



「お前は礼儀正しいな。」



アンリとは直接話をした事がなかったので、どんな人物か知らなかった。



銀髪の巻毛、白い肌、背はそこそこ高く、姿勢がとても良い。

俺を見つめる目の色は薄いブルー、なんとなく憂いを帯びた表情をしているが、端正な顔立ちだ。



「…アンリは紳士だな。」



「お褒めの言葉、痛み入る。お互い死力を尽くし、我がチームに貢献しよう。」



「ああ…」



『真面目な礼儀正しい紳士』…俺の中でアンリのイメージが固まった。



「お~~い!」



俺の中で、最も紳士的でなく礼儀正しくないヤツから声がかかった。



「みんな、そろそろ行こうぜ。」



トーマの号令を合図に、俺のチームは、最初の研修部署『案内人室』へ向かって移動を始めた。



……しかし、魂なのにみんなでゾロゾロ移動か…魂だったら、瞬時に目的地に行けそうなイメージがあるが…妙に人間っぽい…これも会社内だけの特例ってやつか?……



「『案内人』って、何を案内する所なんだ?」



「前にも言ったろ、迷える魂さ…とは言っても、ここではややこしい案件は扱っていない。まぁ、過去に戻りたい魂が殆んどだ。

この世界の簡単な説明をして、本人が納得したら、戻りたい時空の扉に案内する。」



「………。」



「なんか神妙な顔つきしてるな、大丈夫!俺はここでの経験あるからな。アニキに任せろ。」



仕事のプレッシャーではなく、『過去に戻りたい』という言葉に何か感じたのだが、トーマは勘違いしたようだ。



「初心者のユーキくんの為『だけ』に、難易度が低く、且、俺が経験している職場を最初の研修場所として勝ち取ってやったんだ。感謝してくれていいぞ。」



トーマはニヤニヤしながら言った。



「はい、はい、ありがとよ。」



俺はなげやりに感謝の言葉を述べたが、確かにありがたい事ではあった。



2回目以降の研修先とバディーは会社からの指示通りになる。

最初の研修先は、少しでも多く点数を稼いでおく為、無難な所がいいと、トーマは言っていた。



俺のような初心者にはわからないが、この世界の経験者にはどの部署がやり易いか、わかっている者も多いらしい。



なので、難易度低めな部署を獲得するにはだいたい争奪戦(どういった方法かは知らないが)になるとの事だ。

俺のチームはトーマが代表で臨み、思惑通りの部署を勝ち取ってきた。



……要領の良さでトーマに敵う者はいないのかもしれない…



入社式の光景…あれだけの魂が犇めいていた。おそらく凄い数のチーム、バディーがあるのだろう。

…そして…研修後、どれだけかはわからないが、消滅するチーム、魂もある。





『案内人室』に着いた。



ドアを開けると、意外に広い空間に沢山の白い人々?が蠢いていた。



「…っ!なんだ?」



生理的悪寒を覚え、俺は少し身を引いた。



(((何って、案内人に決まっているだろうが…)))



「お忙しい所、すみませ~ん、研修で参りました。

識別コード9793519305~9793519314

以上10名、よろしくお願い致します!」



トーマが声をかけると、手前にいた白い人が、振り向き、こちらへ歩いて…いや、滑るようにやって来た。



「ご苦労様。人手が足りなくて困っていたのよ。助かるわ。」



間近で見ると普通に人(魂)だった。ただ顔はボヤけて、顔つき、表情迄は伺いしれない。言葉の使い方からすると、女性のように思えた。



「じゃ、早速着替えてちょうだい。」



((…着替える?))



その白い女性?は、俺達に白い布のような物と分厚い本のような物を手渡した。



本のような物がここのマニュアルだろう。だが、この布は……?



「…なぁ…着替えるって?…」



魂でも裸という訳ではない。

俺達は全員、水色の衣服(新入社員の制服らしい)を着ている。

どうやって脱ぐのかもわからない。



「被ればいいんだよ。」



トーマはそう言うと、サッと白い布を頭から被った。



「!」



トーマは見事に周りの人々と同化した。

チームメンバーも皆、着替えた(被った)ようで、誰が誰だか判別がつかない。



「早くお前も被れよ。」



その声は、トーマなのだろうが、あの女性と同じ声色になっていた。



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