【60】※ Customer support center (お客様対応室) Part③ ※
またまたまたまた…更新が遅くなってしまいましたm(__)m
もう遅更新の常習犯ですね(反省!)
前回本文少なめ、今回は長い…思いつくまま書いているので、区切りが難しい(言い訳)
次回こそは早く更新するぞ!…(と毎回思ってはいるのですが(汗))
「ユーキさん、素晴らしい対応です。ですが…大丈夫ですか?代わりましょうか?」
ジェシーが心配そうに聞いてきたが
「いえ、大丈夫です。」
俺はそう応え、隣のPCに向き直り「転生聖女…新たな妃候補の誕生※初期(第一章)※初期(第二章)※初期(第三章)※聖女マリー※原作と転移後の違い」と素早く打ち込み、 EnterKeyを叩く。
【転移前・原作】
『第一章(転生)
※美しく心清らかな少女マリーは、不慮の事故で死亡する。
しかし、王家の聖女降臨の儀式によって呼び出されたマリーは魔法異世界に転生していた。
戸惑いながらも、王家や国民の為に尽くす事を誓う。
第二章(精霊の祠)
※聖女として降臨したマリーは、精霊の祠で毎日修練に励む。
精霊達の如何なる誘惑にも、過酷な試練にも耐え、回復魔術と精霊召喚を会得し、人々の心を癒やす存在となる。
美しく清らかなマリーは更に輝き、王国の二人の王子達は彼女に恋心を抱くようになる。
第三章(王都)
※王子達には、それぞれ妃候補がいた。しかし二人のマリーへの気持ちは更に深くなり、ついには兄弟の争いが始まる。
その事実と妃候補達の嘆きを知り、心を痛めたマリーは身を隠す事を決意する。』
【転移後】
『第一章(転生)
※美しく心清らかな少女マリーは、不慮の事故で死亡する。
しかし、王家の聖女降臨の儀式によって呼び出されたマリーは魔法異世界に転生していた。
異世界でのステキな出会いを期待し、胸踊らせるマリーだった。
第二章(精霊の祠)
※聖女として降臨したマリーは、精霊の祠で毎日修練に励む筈だったが、精霊達の誘惑に簡単にのり、過酷な試練がある日は修練をサボった。それでも、ショボい回復魔術と低級精霊召喚は会得した。
最初は、美しい聖女マリーに敬意を抱いていた人々も、その振る舞いに呆れ果てた。
王家は再度、聖女降臨の儀式を執り行ない、美しく心清らかな本物の聖女エレンを得た。
エレンは修練を見事に乗り越え、王国の二人の王子達は彼女に恋心を抱くようになる。
第三章(王都)
※王子達には、それぞれ妃候補がいた。しかし二人のエレンへの気持ちは更に深くなり、ついには兄弟の争いが始まるかと思われた。
しかし兄弟、妃候補達には共通の厄介者がいた。
どちらの王子にも色目を使い、妃候補達に対しては露骨に敵意を向けるマリーという存在。
特に聖女エレンに対する殺意ともいえる敵意は、凄まじかった。
自分の身を案じてくれる王子や妃候補達の気遣いや、マリーの乱心は自分の存在による物ではないかと、心を痛めたエレンは身を隠す事を決意する。』
画面に映し出された『原作と転移後』の違いを見て
……そりゃ、そうなるよね……
俺は呆れた気持ちでそう思った。
一緒に画面を見ていたジェシーの溜め息が聞こえた気がする。
ライラックの怒りの波動も肌で感じた。
「……監督官、どうしましょう?」
「…そうですね…。」
「行いを悔い改める方向で話しをした方がいいですか?更に怒りを買いそうですが…。」
「……そうですね……。いえ、それはやめておきましょう。」
「……では、どのようなアドバイスをしたら良いですか?」
「……もう一度、祠での修練を奨めてみてください。本人にやる気があれば、事態は好転すると思います。」
「……もしやる気がなかった場合は、後日更に酷いクレームが来ると思いますが、それでもよろしいのでしょうか?」
不意にジェシーの表情が変わった。
不敵な微笑み……瞬間、背筋がゾクッとした。
「……その場合でも、おそらくクレームは来ないでしょう。」
「……では、そのようにアドバイスしてみます。」
俺は嫌な気分を悟られないように、そう言ってから保留を解除した。
「マリー様、お待たせして大変申し訳ございません。」
「………遅すぎるわよっ!!」
「誠に申し訳ございません。」
俺は深々と頭を下げて謝罪した。
「それで!?何かわかったの!?あのニセ聖女を排除する方法!!」
……邪魔者は消す!って勢いだな……
不穏な空気を感じたが、俺は通常通りのトーンで話しを続けた。
「排除のお話しではございませんが、マリー様にとって有益なお話しがございます。」
「何よ!あのエレンとかいう余分な聖女を消してくれるんじゃないの!?」
「申し訳ございませんが、マリー様が転移された世界に、こちらから干渉する事は不可能でございますので、そのような事は出来かねます。」
「何よ!!役立たず!!転移後のフォローはしてくれる筈でしょ!」
「勿論フォローはさせて頂きますが、転移された以上、マリー様の本当の人生でございます。あくまでもご自身で切り拓いて頂かねばなりません。」
「切り拓くも何も…最初から小説とは違っていたわ!!」
「お言葉を返すようで、申し訳ありませんが、最初は同じでございます。
前回もお話しさせて頂きました通り、マリー様のその後の生き方が、現在の状況に繋がっているのでございます。」
「何よっ!!私が悪いって言いたいのっ!?」
「いいえ、そうは申し上げておりません。ただ現在が、満足頂けない状況なのであれば、少しアドバイスをさせて頂きたいと愚考した次第です。
お聞き頂けませんか?」
「……わかったわよ。……聞かせて頂戴……。」
だいぶ落ち着いたようだ。しかし声に元気がない。
……自分の行動に思い当たる節があり反省しているならいいが…それとも直接の手助けが期待出来ないからか…それも約款に記載があっただろうに…
「畏まりました。マリー様には、精霊の祠での再度の修練を提案させて頂きます。」
「…それが有益な話?…意味がわからない…」
「あくまでも提案でございます。修練を積むも積まないも、マリー様のお気持ち次第でございます。…ですが……。」
「……ですが……何よ?」
「現状を変えたいと切に願われるのであれば、ご自身が変わられる事が不可欠ではないかと……失礼ながら進言させて頂きます。」
「……わかったわよ。……」
「ご理解頂き、ありがとうございます。」
「……色々……その……悪かったわ。」
「いいえ、こちらこそあまりお役に立てず申し訳ございません。」
「……また何かあったら、相談に乗ってね。」
「畏まりました。どうか、良い人生をご自分の手で切り拓いて下さいませ。」
「……ありがとう。またね。」
「はい。お電話ありがとうございました。クリスティが承りました。失礼致します。」
電話が切れた。終了キーを押し、今回の問い合わせ内容と対応を打ち込み終え、顔を上げるとジェシーと目が合った。
「今回の対応の入力文章は、これでよろしいでしょうか?」
「はい、結構です。それにしても、ユーキさんのクレーム対応はお見事でした。社員でもなかなかここまでは出来ません。」
終了キーを叩き初期画面に戻した。
「お褒めに預かり、ありがとうございます。」
微笑みながら、礼を述べたが、頭の中では別の事を考えていた。
……マリーは「またね。」と言っていたが、多分『また』はないのだろう。ジェシーの先程の言葉「おそらくクレームは来ないでしょう。」
転移後初期のフォローはするが、ある程度経てば回線は繋がらなくなる。あるいは魂の同化が進み、この会社の事も忘れるのか。……
……まぁ、自分の人生だから当然と言えば当然か…
だが、多分マリーは大丈夫だろう。なんか歪みまくっていたけど、元々『聖女』の転移者に選ばれた魂なんだから……
あの最後のやり取りを思い出し、そう思った。
「ねぇ!」
今迄おとなしかったライラックの声がした。
……ヤバい!まだ怒っているのか!?……
「何?」
恐る恐るライラックを見上げると、表情は普通だった。
「聞いてもいい?」
「勿論、俺にわかる事なら、構わないよ。一応、簡単なマニュアル的な物は作ったし、必要なキー…いやボタンには付箋貼ったし…。」
「そんな事じゃないの。」
「?」
……仕事の質問じゃないのか?……
「ユーキはデンワで謝る時、なんでキカイに向かってペコペコ頭を下げてたの?」
「………。」
「なんか見てて、笑いを堪えるのに必死で、怒りが何処かに行っちゃったわ。」
「……そうか。なら結果的に良かった。」
「何よ、答えになっていないわ。」
「そうだね、俺のいた国では、謝罪する時頭を下げる。」
「でもお客様は目の前にはいなかったわ。ユーキの姿は見えない筈でしょ?」
「癖かもね。でも見える見えないじゃなく、謝罪の時頭を下げた方が、こちらの気持ちが相手に伝わりそうな気がするし……ふんぞり返った姿勢で謝罪しても誠意が伝わらない気がする。」
「ふーん、変なの。」
「変ではありませんよ、ライラックさん。」
それ迄黙って俺達のやり取りを聞いていたジェシーが言った。
「顔が見えないからこそ、声は大事なんです。姿勢が声に反映される事もあります。誠意を持って話せば、自然相手にも伝わりやすいものです。」
「……わかりました、私もペコペコやってみます。」
……いや、それはやらなくてもいいと思うが……
「頭を下げる事を意識してやる必要はありません。
要するに気持ちの問題ですから。」
「……はい、すみません。」
「それではライラックさんの実施研修を始めましょう。途中何かあれば、私が代わります。」
「……よろしくお願いします。」
「ユーキさん、検索のサポートをお願い致します。」
「了解致しました。」
一応簡単なトークスクリプトと画面の情報の見方、各キーの位置用途等々書いておいた。使うキーにも付箋を貼った。
ジェシーがフォローしてくれるから、大丈夫だろう。
……いや…一番の危惧は、ライラックの感情か……
『トンデモないお客様』からの電話だと、また感情を爆発させかねない。
そもそも敬語を使えるのだろうか?
……いや、今更何を心配しても仕方ない。なるようになる!だ……
「ライラック、感情的になるなよ。冷静にな。」
「わかってるわ。」
ジェシーがライラックの隣に座り、俺は検索端末の前に座った。
ライラックが頭にインカムをつけ、準備万端整った。
……自分の時より緊張する……
ライラックがコントロールキーを押し、着信音が流れた。
画面が切り替わり、顧客の情報画面が出た。
『名前:マックス(商人)
スキル・アビリティ:鑑定、強化魔法
転移先:【異世界最強武具伝説(女性騎士シンシア)】(小説)
現在の状況:初期(首都カイザー)
前回の内容:「女主人公じゃなく何故男なのよ!何故武器商人なのよ!話が違う!なんとかして頂戴!」と大変お怒りのご様子でした。
『希望される転移先で必ずしも主人公になれるとは限らない』
契約書の約款にも記載されており、転移前の説明会でもご説明させて頂いた旨、お話しさせて頂きました。
担当者名:ナカニシ』
………かなり厄介な案件だ……
画面上の情報をパッと見て俺は思った。
……それにしても、希望した転移先で希望する人物になれない事もあるのか?…そういえば、異世界レセプションでは転移先の倍率を提示していたが、その倍率は主人公になる倍率だと明言はしていなかった……
「ライラックさん、少し難しい案件です。私が代わります。」
「いえ、私にやらせてください。」
「ライラック、本当に大丈夫なのか?」
俺が声をかけると、ライラックは一瞬俺の方を見て、ニッと笑った。その笑みの意味は……なんだ?
……不安だ。
ライラックは、EnterKeyを指で押し即座に言葉を発した。
「お待たせ致しました。異世界コンツェルンお客様対応室、ナカニシが承ります。」
意外な事に、ライラックは流暢に話せている。
……感情の起伏の激しさばかりに気を取られていたが、実は頭が良い女性なのかもしれないな……
不意に目の前が暗くなり、心音だけが耳に響いた。
……マズい!こんな時に……
〜〜〜〜〜〜〜〜
『なぁ、お前、人魂って見た事あるか?』
〜~~~~~~~
……なんだ!?誰だ!?……
俺の意識はまた暗い闇の中に吸い込まれていった。




