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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ ライラック ※
56/86

【55】※ conversation with~(会話)  ライラック①  ※

今回は…

ライラックのマシンガントークが炸裂します。


不穏な雰囲気で幕を閉じた情報交換会の後、俺は次のバディー相手と一緒にいる。



「………。あんた、私を無視する気!?」



「……あぁ、ごめん。」



メンバーの様子が気になって、ついライラックを無視する形で、周りを見渡していた。

2人でいるバディーもあるが、1人でいる者もいた。



「ふぅ……あんたと組むのは、やっぱり不安だわ。」



ライラックは、顔を歪めて、露骨に不快そうな様子だ。



……美少女が台無しだな。……



行く先々で、何かしらのトラブルを起こしている彼女……

むしろ、俺の方が不安なんだが……



「……そうか、ごめん。」



俺がそう言うと、ライラックは少し沈黙したが



「そういう所!なんで自分に自信を持たないのよ!」



かなりキツメにそう言った。



「自信?」



((俺はそんなにも自信無さげに見えるのだろうか?))



「そう、見えるわよ。なんか、自分ってものを持っていない。

だから、他のチームの女に拐われそうになったんじゃないの!?」



拉致事件が、まるで全面的に俺のせいだと言わんばかりの言い方だ。



「だいたい、なんであんたはここに来た訳?どこに行きたいの?」



「わからない。……記憶がないから、前にも言った通り、特に望みもない。」



「どうせ、記憶がない、記憶がない、って言って、他の人の同情買おうとしてきたんでしょ?……

そんな事、言い訳にもならないわ!」



ライラックはかなり苛ついた様子で言った。



「あんたは今ここにいる。

ここにいるって事は、何か理由があるはず……なんでそれを自分で考えながら行動しないの?」



……ライラックは最初から喧嘩腰だ。反論する気もしない。

あまりに色々有りすぎて、考えがまとまらない。……いや、それ以上に、余計な事を言ったら、何百倍にもなって返ってきそうだから…か?……



「………。」



「あんたは多分、ここに来る前から、そうだったんでしょうね。

礼儀正しく、いい子ぶって、周りが右って言ったら逆らわず右を向く。

みんなと一緒なら安心できる。

お勉強はできるし、知識も豊富だけど、その知識を使う頭はない、ただの馬鹿!

ただ周りの状況に流されている事が当たり前。流された先で悪い事が起きたら、それは自分のせいじゃない、と思う。

考えもせず、流れに乗った自分のせいなのにね!

それにきっと誰かがなんとかしてくれる……そんな甘ちゃんだったんでしょうね!」



だが、ライラックのマシンガントーク……

言葉の数々がいちいち俺の胸を貫いた。



……本当に、そうだったかもしれない。……

何も言い返せなかった。



「………。」



「またダンマリを決め込むつもり!?

自信は、自分で責任を背負える覚悟がなければ持てない物よ。

あんたにはその覚悟もない!」



「………。」



「…これだけ言われて、よく黙っているわね。……もっと真剣に『自分が何者なのか』、探りなさいよ!」



「!?」



「トーマにも言われなかった?」



「えっ!?」



……何故トーマが出てくる?……



「ライラックはトーマを嫌っていたんじゃないのか?」



「嫌いじゃないわよ。ウザイけど…。ある意味、恩人だしね。」



「恩人!?」



「……トーマの良くない噂も聞いたわ。

……だけど、私はトーマと実際に関わり、信頼出来る人物だと自分で判断したの。

もし違っていたら、それは自分のミス、誰のせいでもないわ。

私は誰かのせいにしたりしない。」



「………良くない噂?……サミーか?」



「……なんで知ってるのよ!?」



「……いや、俺も……。」



「そんな事はどうでもいいの!」



言いかけた俺の言葉をライラックが遮った。



……どうでもいいのか!?……



「あんたは研修でも優秀だし、いいヤツだって、みんなが言っていたわ。

でも、私は今は認めない。私は、他人の噂話を信じない。

自分で見聞き、体験して判断した事だけを信じるから。」



「!!」



『他人の噂話を信じない。自分で見聞き、体験して判断した事だけを信じる』



《……俺にそれが出来ていたら……》

ライラックに言われた言葉に、俺の心が反応している。ひどく胸が苦しくなった。



「記憶がないって言えば同情してもらえるとでも思っているの!?

馬鹿じゃないの?」



「……そんな事は思っていないよ!それは言い過ぎだろ!?」



「……記憶……私だって殆んどないんだから…」



「えっ!?」



「多分、私は普通の学生だった…でもある小説にはまってね……

で、転移したのよ、非合法にね。」



「非合法?小説って?」



「この異世界コンツェルンでは、当時は扱ってなかったから、別のルートから小説の世界に転移したのよ。」



「小説の……世界?」



……最近出来たというあの会社からではなく、別のルート……

信じられない……この異世界コンツェルン以外にもあるのか?こんな会社が……。



「裏ルートは、小説だけじゃない、ゲームの世界だって行けたわ。

ただ、異世界コンツェルンに見つかって、疲労がどうとか言われて、魂をひっ剥がされてここに連れてこられたのよ。

非合法だと言われたし、実際弊害も出た。

でも、前回あんたが研修に行った新しい部署……合法的に行けるんでしょう?小説やゲームの世界に。

もう、私、それ聴いた時は嬉しくて!……あっ、コホン。」



……表情がコロコロ変わる。……



「あんた、ゲームってわかる?」



ライラックは、満面の笑みを浮かべた後、少し気まずそうな顔をして言った。



「あぁ、知っている。」



「そう。」



……どうでもいい質問で、誤魔化したな……



「ここに連れてこられた時はそりゃあ、頭にきてたわよ。

凄く楽しかったのに、なんで無理やり魂を引き離すのよ!って……でも今は感謝している。

ここで研修を受けるうちに、わかってきたから。」



「何が?」



「非合法に渡った魂の末路は悲惨だわ。転移させるだけして、その後のフォローはない。

転移先で憑依した魂と共に疲弊して、周りに害をなす。最悪、共に消滅する。」



((周りに迷惑をかけるのは、今でも同じな気もするが…))



ふと、そう思ってしまった。



「失礼ね!

元の私は控えめで、頭の良い少女だったんだから!……多分……」



((とてもそうは思えないが……))



また思ってしまった。



「重ねて失礼ね!…

私が怒りっぽいのは、非合法転移の後遺症よ。

転移前の記憶だってあやふやなんだから。」



「……そうか。」



「新しい部署が出来たんだもの。俄然、やる気が出たわ。

ここで働いて魂の修行積めば、合法的に望む世界に転移出来るのよ。

きっと、その後のフォローも受けられる。」



……ライラックも、『おばさん』になりたいのか?……

ふと、あの新会社での出来事を思い出し、そう思ったが…そんな事より……



「……修行を積む?」



「そう、魂の研鑽をするの。ここで真面目に働いて、元の自分を取り戻して、望む異世界に行くのが、私の目標よ。」



確か『輪廻転生』という概念があった。仏教だったか…生前の(ごう)によって、6つの世界に生まれ変わる…

人間界はまだマシで、4つの世界は、(ごう)を改める機会もない絶望的な世界だったように記憶している。

そして、人間界は魂の修行の場だという話も聞いたことがある。……



そんな事を考えていると、ライラックが言った。



「何、難しい顔して考え込んでいるのよ?……

まぁ、最初の頃よりは、あんたも少しはマシになったような気もしないでもないけど……

どうしても記憶が戻らなかったとしても、今後を考えるべきだと思うわ。」



「今後?」



「そう、後ろばかり向いていたら、前が見えない。

人間、前を向いて生きていかなきゃね!

さっ、研修先に行くわよ!」



ニコッと笑って言ったライラックは……先ほど迄とは全く違った。


とても可愛らしい美少女だった。




【あとがき雑学】


業︰ごう(カルマ)


サンスクリット語のカルマン(karman)の訳語。

もともとクル(為す)という動詞からつくられた名詞。


仏教独自の思想と深い関わりがある、人の起こす行為を意味する仏教用語です。


業には必ず原因があると説かれ、善い業(善行)には良い結果が、悪い業(悪行)には悪い結果が訪れるとされています。これは、仏教ならではの思想で、因果応報の考え方にリンクしています。

輪廻(りんね)思想(人が何度も生死を繰り返し、新しい生命に生まれ変わること)により、現在の自分の行いは来世の自分にも影響があるとも考えられています。


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