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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ ハル ※
55/86

【54】※ information exchange (情報交換会) part5 ※


「もう、他の方々は、おそらく戻られていますね。」



「そうだね、意外に長々やらされていたからな。

ハルも俺も5人ずつ接客したし……。

ガスパーさんの話も長かったよな。」



俺とハルはチームの部屋に向かって歩いていた。



「あの部署、いえ、会社の事をご存知の方は他にいらっしゃるのでしょうか?」



「最近出来たって言ってたから、俺達がチーム内では、初めてなんじゃないかな。」



「そうですね。……それにしても全く違う『異世界』とは……。

私には到底理解出来ないように思います。」



「うん、俺も同感だ。」



「ですが、ユーキは、『まほー』や『ゆーしゃ』という言葉をご存知のようでしたが?」



「言葉は知っているけど、それが実際にある世界なんて、想像は出来ないよ。

小説やゲーム、アニメの世界に転移転生とはね……。」



「げえむ?あにめ?……」



「あぁ、ハルの時代にはなかった物だよね……。

いや、小説はあったかも?」



「小説……。」



「誰かが書いた物語だよ。

例えば、紫式部が書いた『源氏物語』とかは知らない?」



「確か……一度転生した折に、流行っていた書物ですね。」



……晴明として生きた時代には、なかった物なのか。……



「『竹取物語』とかは?」



「『竹取の翁』の事でしょうか?」



「そうかな……かぐや姫の話。」



「はい、ありましたね。」



「多分、その物語の登場人物に転移転生するって事だね。

例えばハルが、竹取の翁として人生を送るとか…。

ゲームやアニメも、誰かの想像力によって出来た世界、小説と同じようなものだよ。」



「そうなのですね。人間が創造した世界……。

では、その『異世界』の神は、その書物を書いた人間という事になりますね。」



「!?」



……確かに。

ハルの言ったその言葉に、俺は一瞬言葉を失った。

何かが引っ掛かる。……





「お帰りなさ〜い。ハルもユーキもお疲れ様〜。」



「フィン、暖かい労いのお言葉、ありがとうございます。」



「………。」



「ユーキ、どうしたの?」



心配そうに俺の顔を覗き込む、フィンの顔が目の前にあった。



「……なんでもないよ。」



俺は努めて明るく応えたが、フィンは



「ユーキ、なんでもなくないね。」



そう言って、俺の背中に張り付いてきた。

俺がフィンをおんぶしている状態だ。



「フィン、それはちょっと……恥ずかしいかな……。」



「ユーキはね、色々有り過ぎて、疲れてるって。

色々一人で考え過ぎて、頭パンパンなんだって。

お友達とお話しすればいいのに。」



……お友達?フィンは誰の事を言っているのだろう?……



「これ、フィン。

ユーキが困っておる。

如何にお前が軽くとも、ユーキでは耐えられまい。

上るのなら、我の背にしろ。」



……いや、レオン。

俺もそこまで貧弱じゃないとは思うが。……



「レオンは、もう大丈夫だから、おんぶしないの。」



フィンの言う事は、相変わらずよくわからない。

結局、俺はフィンをおぶったまま、部屋の真ん中迄移動した。



「全員揃ったな。

それでは交換会を始めよう。」



いつも通り、マイケルの言葉で、俺達は車座に座った。

フィンは漸く俺から離れたが、隣に座った。



いつも通りに、マニュアルの回し読みの後、バディ毎に研修先の説明が行われた。



「『異世界』……ここではよく使われる言葉だが、ハルとユーキの研修先は、また変わった『異世界』への窓口だな。」



アンリがそう言うと、マイケルが頷いた。



「私も初めて聞く部署だ。」



「まだ新しい部署、いや会社だと監督官が言っていたからな。

おそらくは、あまり知られていない会社なんだろう。」



……いや、確かトーマが以前

『最近はまた特殊な別世界も増えたらしいしな…』

と言っていた。

トーマは少なくとも、存在自体は知っていたのかもしれない。……



そう思って、トーマの方を見ると、目があった。

トーマはすぐに目を逸らした。



「トーマ、お前は知っていたんじゃないのか?」



俺はトーマの態度に怯む事なく、尋ねた。



トーマは睨みつけるような眼差しで、俺を見ながら言った。



「それがどうした……。」



「どういう意味だ?」



「だ・か・ら・俺らのやる事に変わりはない!……どんな会社だろうが、仕事だろうが、な。」



「トーマの言う通りだ。

些末な事に囚われて、あれこれ考えたところで、結果が変わる訳ではあるまい。

我々は、与えられた通り研修をこなすだけだ。

正直、この情報交換会も無駄だと俺は思う。」



ニモが珍しく饒舌に語った。



「そうさ、無駄だ。

チームで情報共有?

んなもん、マニュアル回し読みすりゃ、わかんだろ。」



サミーがニモに呼応するように言った。



「チームは馴れ合う為の物じゃないぜ。

いずれは、お互い、足を引っ張りあう仲なんだからな。」



……足を引っ張りあう?……



「確かに今迄『想像異世界』転移転生の為の部署はなかった。

だが、案内人室では『異世界』への案内もあっただろうが。」



トーマがそう言うと、ライラックがコクコク頷いている。

異様に瞳が輝いているように見える。



「……それは、あくまでも派生が同じ『異世界』の筈だ……。

少なくとも、人間が創造した世界ではあるまい!」



マイケルが、少し顔色を変えて言う。



「別にそう、ムキになる必要はないだろうぜ。

マイケル様は、(いた)くご立腹のようだがな。

そんなに人間様が造った世界が許せないのか?」



「……いや、そういう訳では……。」



馬鹿にしたように言う、サミーの言葉に、珍しくマイケルが動揺している。



「くだらん!

『異世界』の解釈など、どうでもいい。

情報交換会とは、不毛な議論の場なのか!?

ならば、俺は参加しない。」



ニモは苛立ちを隠さず、そう言って、その場を離れた。

続いて、サミー、トーマも立ち去った。

通常なら、マイケルが止める筈だが、何も言わなかった。



こうして5度目の情報交換会は、終了した。


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