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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ ハル ※
54/86

【53】※ conversation with~(会話)  ハル③  ※


……俺は何故、ストレートに

『安倍晴明だったの?』と聞けないんだろう?……なんとなく聞いてはいけない気がする。……



「あなたのいた時空では、貴族はまだいるのでしょうか?」



「えっ?…いや、いないよ。国民全員が一応平等だ。」



「では、権力闘争など、無縁な世の中なのですね。」



((権力闘争……無縁ではないな……。))



「無縁ではない?」



「そうだな……例えば会社とか……。」



そう呟いて、ザワッとした。

なんだ?この嫌な感じは……



「どうかしましたか?」



「いや、なんでもない……。」



「あなたはとても素直で、優しい。真面目だと思います。

そして、失礼な言い方になるかもしれませんが、まだ自我が弱い。」



「自我が弱い…。」



「特に最初にお会いした頃は、全く、ご自分が無いご様子でした。

……トーマはそんな貴方を放っておけない、最初はそう思ったのかもしれませんね。」



((だとしたら、トーマの望む『俺』の理想像とは……最初の頃の、ただ不安を抱え、怯える俺なのか?))



「……いえ、そうではないと思いますよ。

トーマはおそらく、貴方に変わって欲しいのだと思います。」



「変わる?」



「貴方は……そうですね。

サミーとの言い争い……いえ、顕著なのは『救助隊室』の研修後、だいぶ変わられた。」



「『救助隊室』後……。」



……俺が戦時下の日本、更に深く落下し、何かが俺から乖離した後か。

レオン、シン、サミー、そして俺自身が感じた違和感、ハルも感じていたのだろう。……



「そして、今回の研修中……途中でまた貴方は、更に変わられた。……」



ハルは何かを見透かすように、目を細め、俺を見た。

俺は少しドキリとした。



……ハルは、俺が(せい)に憑依、いや成りきっていた事に気付いているのか?……



「何故か今は、貴方に懐かしさを感じます。」



ハルの言葉に何も言えなかった。



「私は、良い方向に貴方が変わられていると思います。

そして、トーマは、貴方の変わる方向を注視している。」



「方向?」



「サミーとの言い争いをした時の、貴方の態度は……理由はわかりませんが、トーマにとっては、好ましい物ではなかったのでしょう。」



……好ましい物ではない……何がだろう?…

……にしても……



「ハルも、トーマを注視しているんだな。」



「……お解りになりますか……。

確かに、その通りです。」



……ハルが晴明なら、トーマ≒道満の動向は、気になる筈だ。……



「ハルの転移転生の望みは、トーマ絡みの物なのか?」



「!?……何故そのような事をお聞きになるのですか?」



「……いや、なんとなく……今迄の会話の流れで、そう思ったから……。」



「フフッ、ユーキはやはり、この研修中にも変わられましたね。

仰る通りです。私の望みは、元々の時空に転生する事です。」



……ハル=晴明、トーマ=道満、なんだろう。

おそらく、俺が落ちた世界とは違う時空なのだろう。……



俺は、そう思い、呟いた。



「……やはり、そうなんだ。」



「ユーキが、仰る『やはり、そう』に込められた意味はわかりませんが……。

貴方は、以前より、前向きに思考しているように、私には感じられます。」



「……そう……かな?」



「はい。

更に、周りとの関わりを直接得て、色々な事柄を経験し、思考されると良いと思います。

自己肯定をし、自信をもって生きて下さい。」



「………ありがとう、ハル。」



「もう、聞きあきたでしょうが……。

あなたにはトーマが必要です。

そしてトーマにもあなたが必要なのです。」



……トーマにも俺が必要。……



「……その……ハルは、よくそう言うけど……

何故そう思うんだろう?……」



「フフッ、気になりますか?」



「……勿論。最初の頃から聞いていたからね。」



「貴方とトーマは、お互い補完出来る間柄になると思ったからです。」



「補完?」



「足りない点を補い合って完全にすること……とでも申しましょうか。

私の『野生の勘』です。」



((ハルが『野生の勘』とか言うんだ!?))



「フフッ、レオンに言われました。」



「ビックリしたよ〜。」



「冗談はこれくらいにして……。」



……!……冗談なのか?……



「噂話という物は、いつの時代にもあります。

その真偽を見極める為には、一つの多数の意見に流されるのではなく、様々な観点から物事を見る事、自ら得た情報を分析し、自分の頭で考える事が必要です。

あなたは知識もあるし、頭も良い。出来るはずです。」



……何故ハルは、突然そんな話を俺にしだしたのだろう?……だが……



((…出来るはず…))

……多分俺には出来なかった……以前は……



「あらぬ噂を真実と思い込み、無実の者を傷つけない事を心がけて下さい。」



「……思い込み。……」



ハルの言う事は正論だ……

そして、『あの時』の心の痛みを思い起こさせた。



……『あの時』?…暗闇で何かが乖離した時か?

いや、違う気がする。

いつ、何だったのだろう。……思い出せない。……



「真面目な者ほど、思い込みは強くなります。

常に自分に問いかけてみてください。……本当に自分の思っている事は正しいのか?……と。

そして、それが本当に正しいのだとしても、正論を振りかざし、相手を追い詰めない優しさも持って下さい。」



「……正論で相手を追い詰める……?」



「……誰から見ても正しい。

自分があらゆる角度から分析し、導き出した事と合致している。

それはおそらく『正しい』のでしょう。」



「……うん。」



「しかし、相手は全く違う考えを持っている。

それは誰が見ても、自分から見ても間違っている。

それはおそらく『間違い』です。」



「……う、うん。」



「ならば、『正』の考えを持つ貴方は『誤』の考えを持つ相手を、諭すでしょう。」



「……多分……そうだね。」



「諭す事は良い事です。

ですが、追い詰めてはいけません。

相手の考えを、完膚無き迄に、叩き潰すのはよくありません。」



「叩き潰す……。」

……胸がザワついた。



「何事にも、『折り合いをつける』事は必要なのです。

世の中は正誤で、真っ二つに分けられる物ではない。

片方にとっては正でも、片方にとっては誤になる場合もあります。

……なんと言いましたか……あぁ、『ぐれいぞーん』が必要なのです。」



「グレイゾーンか……よく知っているね。そんな言葉……。」



「フフッ、ダテに転生を繰り返しては、おりませんので。」



ハルは微笑んで、そう言った。



「立場が違えば、答えが違う事も多々あります。

人が間違いを糾す時、『正義』に酔いしれ、高揚する場合もあります。

その高揚感に任せて、相手を必要以上に糾弾する事は、果たして『正』なのか……。

ぐれいぞーんには、『優しさ』もあると思われませんか?」



ハルは、少し翳りのある表情で微笑んだ。




【あとがき雑学】


グレイゾーン


︰物事の中間領域・あいまい領域の事を指す言葉。

白でも黒でもない曖昧な状態を、白と黒を混ぜた色=グレー(灰色)と喩え、どちらとも付かない状態のことを指す。



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