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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ 異世界ワーキング始動 ※
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【4】※ lecture(レクチャー)part1 ※


「まずは…そうだな、お前は魂だ。」



「それはわかっているよ。」



「そしてここは超空間だ。」



「超空間?」



「地球上、全ての時空、全ての世界の管理をする場所だと思え。」



「???」



「もうわからない…って顔してるな…ぷふっ!それじゃ先が思いやられるぜ。」



「話が大きすぎてついていけない。」



「別に理解なんてしなくていい。自分がここでやるべき事さえわかっていれば、それでよし!」



「そういうものなのか…」



「正直、何度も来てる俺だって、全体を把握出来ている訳ではない。」



((何度も…))



「あぁ、そうだな。俺だって初めて来た時は戸惑ったさ。

訳のわからないこの空間に放り込まれ、聞いたことのない用語、見たことのない肌色のヤツ……それについては、お前は特に驚いてはいなかったな?」



「ビジネス用語については知っている…多分。肌色の違う人間なんか普通に街を歩いていた…と思う。」



「そうか…同郷だとは思うが、俺とお前のいた時間にはだいぶズレがあるようだな。」



「そうだな…」



「ここで俺たちがやるべき事は…一言で言えば魂の管理だ。」



「魂の管理?」



((魂の俺たちが魂を管理?))



「ユーキがそう思うのも無理はないが…管理するのは、通常の魂じゃない。所謂迷える魂だ。」



「迷える魂?」



「お前は寝ている間に夢を見た事があるか?」



「多分…もちろん、ある…と思う。」



「『多分』『…と思う』か…まっ、記憶がないんだからそういう言い方にもなるわな。」



トーマは少し笑いながら言った。



「寝ている間に魂が身体から抜け出て、この超空間にある無数の入り口から様々な世界へ入る。そこで体験した事を覚えていた場合、夢を見た…と思うのだ。」



「…だが、夢の内容なんて、あり得ない荒唐無稽な内容ばかりだった…ような気がするが…」



「あり得ない?荒唐無稽?…そんな事はないさ。この超空間から行ける世界はそれこそ無限に拡がっているのだから。」



「無限に…?」



「そう、そして今も拡がり続けている。」



俺は絶句した。



「壮大な話だよな。だが、本当にそうらしい。

この無限の世界は人間が作っている。人間は産まれてから死ぬ迄、自分の人生を生きる。その道程で、様々な選択をして一生を全うする。

だが、その無数の選択の過程で…選ばなかった道の先の世界も存在するんだ。」



「…それって……」



「そうさ、1人の人間でも選択の場面は山ほどあるだろう。選択の数だけ、そいつの生きている世界は拡がる。

それが、全人類、あらゆる時間軸ともなれば、それこそ切りも果てもない。」



((…パラレルワールド…タイムパラドックス…))

俺は俄に頭痛を覚えた。



「なんでそんなに…」



「本当の所は知らねえよ。だが、『この世界を滅ぼさない為』って説もある。

実際、滅んだ世界も確かにあるらしいが、それ以前に誰かが違う選択をしていたその世界は未だに繁栄してるって話だ。」



「………」



「それら全て…ほんっとバカみたいな数の世界の魂を管理しているのがこの異世界コンツェルンさ。」



「………」



「言葉もないか…まぁ無理もない。だが、これは予備知識だ。深く考える必要なんぞねえよ。」



「…予備知識?」



「そうさ。実際の現場にはそれぞれのマニュアルがある。」



「マニュアル…手引き書か…。」



「そうさ、そこでの決まり事とか、仕事をする上で必要な知識は、それを読めばわかるし、仕事の前には簡単な説明もある。

だが、基本、俺たちの仕事はおもに迷える魂を救う事だからな。」



『主よ、この迷える魂をお救いください!』



……そんな文言が頭を過った。



今の俺の心持ちにピッタリの言葉のような気がした。



「夢を見る為だけにここを訪れるのは普通の事だ。元の時空の自分の身体に戻るからな、何の問題もない。

だが、自分の人生をやり直したいと、ここに来て、自分の過去に戻る魂も多くいる。これは本来、普通ではないが、然程問題ではない。」



「過去に戻る?」



「ああ。」



「魂が過去に戻ると元の時空の人間はどうなるんだ?存在自体消えるのか?」



「いや、消えない。魂は分裂するんだよ。そして融合もする。そうでなきゃ、選択で別れた世界の片方には魂のない人間が存在する事になる。」



「……分裂、融合……」



「…お前の生死がわからない、と俺は言っただろうが。お前は今ここにいる。魂が唯一の物なら、お前の死は確定さ。」



「…生きていても、分裂した魂なら、ここに来ていても不思議ではないということか…。」



「そういう事だ。」



「………。」



「分裂して本人の魂に融合する分には、時空を超えても何の問題もないんだが…まぁ、案内は必要だから、そういう仕事もある。

だが、魂が本人以外の魂に憑依する場合もある。それは問題だ。魂が疲弊するからな、色々と弊害が起きる。それを阻止したり、魂を分離させたりする仕事もあるな。」



「…憑依…」



「また、入り口を間違えて、違う世界から抜け出せなくなる魂もいる。

夢を見る為だけに訪れた筈が、帰り道がわからなくなって、違う世界をさ迷う魂もいる。

望んで、あるいは望まれて異世界に行く魂もある。

それも本人の魂と融合する訳ではないから、色々と問題が起きる。」



「………」



俺は更に頭を抱えた。




【あとがき雑学】


『荒唐無稽』(こうとうむけい)


「言動に根拠がない、現実味のない事」「出鱈目な事」


『荒』は「広い、大きい」「中身がなく虚しい事」

『唐』は「広い、大きい、口を張って大言する」

『無』は「無い」

『稽』は「考える」


それぞれの漢字に意味があるようです。


因みに『出鱈目』の語源は、サイコロが使われていた賭博から生まれた言葉、という説が有力視されているらしいです。

サイコロは、思い通りの目は出ない…いい加減だ!という事。

鱈は当て字で意味はないようです。


加えて、よく使われる『デマ』は『出鱈目』の略語ではなく、demagogyデマゴギーの略。「意図的に流される虚偽の情報」という意味だそうです。

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