【47】※ Different world Reception desk(異世界レセプション) ②※
『ピンポーン!番号札30770番のお客様、カウンター迄お越し下さい!』
「お待たせ致しました。」
「お待たせ致しました。」
(((ハル様、もう少し頭を下げて下さい。)))
……ハルは、お辞儀が苦手なのか?いや、慣れていないのか。……
「申込み用紙、記入終わったんですけど。」
「お預かり致します。」
俺は、二十代らしき女性から、パンフレットと申込み用紙を受け取った。
「『転生巫女の成り下がり〜普通のおばさんに戻ります』の世界って、倍率高いの?」
(((倍率はパンフレットの左下に、タイムリーに表示されます。
合格は、申込み用紙の内容、適性等によって決まる事を、ご説明下さい。)))
「お客様、こちらの世界の倍率は現在3.8倍となっております。」
「ライバル多いわね。」
「倍率はあくまでも目安とお考え下さい。
合否につきましては、ご記入頂いた申込み用紙の内容、適性等で決まります。」
「ふ〜ん、そうなのね。」
「よろしければ、ご一緒に、お申込み内容の確認をさせて頂きますが、如何なさいますか?」
「じゃあ、お願い。」
「畏まりました。」
……にしても、変なタイトルだ。
小説、いや、ゲームの世界か?……3.8倍!?
そんなに、おばさんに戻りたい……いや、面白い世界なのか?……
「『希望理由』欄ですが、もう少し、具体的にお書き頂く事は可能でしょうか?」
「じゃ、こんなのどうよ?」
彼女はその場で『理由欄』を書き直した。
((記入された文章が『ナイスミドルでモテモテになってみたい』ですが、何か他に良い言い方はありませんか?))
俺はガスパーに助けを求めた。
(((『心も身体も成熟した、素敵な女性に憧れています。』等、如何でしょうか?少なくとも、その方が印象がよろしいかと思われます。)))
「お客様、このような文言を書かれては如何でしょう?」
俺はガスパーが言った通りの文章をメモした物を、女性に見せた。
「……でも、書き直すのは面倒だし、これでいいわ。
言いたい事は同じだし。」
……同じといえば、似ているかもしれないが……まぁ、いいか。本人がそれでいいと言うのなら。……
彼女の不合格は確定のように思えた。
……しかし、この考え方はマニュアルの『お客様に寄り添う』からは外れているな。
だが、これ以上突っ込むのも、怒りを買いそうだし。それに……
「『備考』欄は、空白でございますね。可能でしたら、ご記入頂いた方が、よろしいかと思われますが。」
「だって、特に特技とかないし……。大体スキルって何よ。」
「スキルとは、努力して身につけた『技能』や『技術』の事でございます。
特に、お持ちでないのであれば、異世界転生の際に欲しい『スキル』…いえ『アビリティ』、つまり潜在能力をご記入下さいませ。」
「能力?……そんな物なくても大丈夫でしょう?
どうせ結末はわかっているんだから。」
……『結末はわかっている』?
彼女は小説なり、ゲームなりの世界で、自分が疑似体験した通りの人生を、送れるつもりでいるのだろうか?……
何か違う気がする。
「……異世界転生の合否判定には、少なからず関係してくる物と思われますが。よろしいでしょうか?」
「わかったわよ!書けばいいんでしょ!?」
彼女は、申込み用紙に雑な文字で『モテる!アビリティ』と書いた。
……余程、モテたいんだな。……
「ありがとうございます。」
彼女はやはり機嫌を損ねたのか、返事もしない。
「私の至らぬ対応に、お怒りでしたら、大変申し訳ございませんでした。」
俺は、そう言いながら、謝罪の意思を示す為に、最敬礼(90度)をした。
ハルも一緒に頭を下げているが、最敬礼にはなっていない。
「そ、そんな謝らなくていいわよ。……前にも申し込んだのに、落とされたから、少しイラついていたのよ。
私の方こそゴメンね。あなた、いい人ね。」
「ありがとうございます。
私には、勿体ないお言葉でございます。
それでは、お申込みを受け付けさせて頂きます。
ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
俺は、今度は30度のお辞儀とともにそう言った。
(((ユーキ様、素晴らしいご対応でございます。先程は大変失礼致しました。
良い意味で、私の見込み違いでございました。深謝致します。)))
((お誉め頂き、ありがとうございます。))
(((いえ、いえ。
それでは、ハル様と交代して下さい。)))
(((承知致しました。
ユーキ、本当に貴方は凄い人ですね。)))
ガスパーはともかく、ハルにそう言われると、素直に嬉しい。
((ありがとう、ハル。))
ハルは俺に微笑みながら、俺のいた場所に移った。
俺もハルのいた場所へ移動した。
……今度は補助的な役割だ。少しホッとするな。
ハルなら、俺以上に巧くやるだろう。お辞儀以外は。……
『ピンポーン!番号札30771番のお客様、カウンター迄お越し下さい!』
「お待たせ致しました。」
「お待たせ致しました。」
(((……ハル様、もう少し頭を下げて………)))
ガスパーの心の声が聞こえた。
……ハルは、やはり苦手なのか?やはり、公僕とはいえ、貴族だったから、お辞儀をした事がないのか。………
30°に身体を傾けながら、そんな事を思った。
すると、身体がグラッと揺れ、眼前が真っ暗になった。
段々、周りの音も聞こえなくなる。
……貧血!……ではない。またあの『落ちる浮遊感』に襲われた。
……今、気を失ってはまずい!研修の最中だ。チームの点数が…。……
そう思ったのが最後、再び俺の意識は暗闇に沈んだ。
【あとがき雑学】
『SKILL』(スキル)
※「技能」「技量」「能力」
スキルは「獲得可能な技能」というニュアンスがあります。
生まれつきの先天的な能力は、スキルとは呼ばれにくく、獲得可能な能力(経験、知識など本人の努力によって得られる能力)はスキルと呼ばれやすい傾向があります。
特に、訓練して身につけた特殊技能や高度な技術を指すことが多く、ビジネスではこの意味で使われています
この両者をあわせもった能力を表す場合は、ABILITYです。
「能力」を意味する点で「スキル」と共通点があります。
しかし、「アビリティ」とは生まれ持った「能力」(その人が持っている特性や性質)を指す場合が多いそうです。




