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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ ハル ※
47/86

【46】※ Different world Reception desk(異世界レセプション) part① ※


「マニュアルにありました通り、来訪されるお客様に寄り添い、なるべく御本人のご希望を詳しく聞き出して下さい。

不安等の相談があれば、専任の担当者に引き継いで下さい。

身だしなみとお辞儀、そして敬語、これは必須です。」



ガスパーは、チラッと俺に視線を向け言った。



……はい、はい、気をつけますよ!

これでも一応、ビジネス上の会話で困らない程度には、敬語を使える筈……多分。……



俺が心の中で、ガスパーに文句を言っていると、突然ハルが口を開いた。



「しかし、この『異世界コンツェルン』では、何故、魂を『お客様』扱いするのでしょうか?

私は前々から、不審に思っておりました。

是非、ガスパール殿の見解を伺いたいのですが?」



「……大変申し訳ございませんが、そのご質問にもお答え出来かねます。」



「 ガスパール殿は、ご存知ないのでしょうか?

もし、ご存知ないとしても、私は、ガスパール殿が、どのような見解をお持ちなのか、伺いたいと思ったのですが?」



意外な事に、ハルがグイグイ攻めている。



「……ハル様は聡明な方でいらっしゃる。

しかし、(わたくし)の見解など、特にはございません。」



「承知致しました。

色々と失礼な質問を致しました。大変、申し訳ございません。」



「いえ、いえ。

……しかし、ハル様が、研修後の勤務先に『異世界レセプション』を選ばれたとしたら、何か解る事もあるように思われます。

是非、ご検討をお願い致します。」



「それは、『同調訓練』の事ですか?

あるいは『お客様』の件でしょうか?」



「……その件で、今お話し出来る事は、(わたくし)には、一切ございません。」



「失礼致しました。

御厚情、心より感謝致します。」



……なんと言うか……怖かった。

お互い、言葉は丁寧だったが、緊迫していた。

しかし、ハルも魂を『お客様』扱いする事に疑問を持っていたのか。

訪れる魂がお客様なら、魂は何らかの対価をコンツェルンに払っている、という事になる。……あるいは、別の誰かが……か。……



「それでは、(わたくし)も同行させて頂きますので、担当の部屋へ参りましょう。

まずは、制服に着替えて頂きますように。」



ガスパーの号令で、俺達は制服に着替えた……というか、布を被った。



ハルは、黒いスーツ姿がとても似合っていた。

やはり、気品という物は、衣装が違っても滲み出る物なのだろう。

俺は……自分で全体を把握出来ないが、おそらく『くたびれたサラリーマン』といった感じだろう。



「お二人とも、よくお似合いです。

ユーキ様、御髪(おぐし)が乱れております。失礼。」



そう言って俺の髪を直してくれた、ガスパーのお世辞は、真実味がある。

ハルは上品に着こなしているし、俺は多分着慣れている。



「それでは、参りましょう。」



広いロビーを横切って行く。

その先には、白い扉が無数にあったが、その1つの前で、俺達は立ち止まった。



「こちらでございます。どうぞお入り下さいませ。」



扉を開けてくれたガスパーが、ハルと俺に、先に入るよう促した。



入った先は、カウンターの中だった。

驚いた事に、カウンターの前には、説明を聞いていたロビーとソックリな広い空間があった。

そして、ロビーにある椅子とテーブル席には、たくさんの人々…いや、魂々が座っていた。

ガスパーは、カウンター内にいた前任者達に声をかけた。



「研修で訪問された『ハル様』と『ユーキ様』です。

ここは代わりますので、休憩に入って頂けますか?」



「畏まりました。

『ハル様』『ユーキ様』、研修頑張って下さいね。」

「ファイトです!」



その女性達の言い方は、ガスパー程、慇懃無礼っぽくなく、少しホッとした。



「彼女達もまだ来たばかりで、敬語が得意ではないのです。

失礼致しました。」



……いや、少しも失礼じゃないから。……



「それでは、最初はユーキ様が主に接客をご担当下さい。」



……最初、俺かい!……



「わかりました。」



『お客様達』は行列も作らず、席にいる。



『ピンポーン!番号札30769番のお客様、カウンター迄お越し下さい!』



アナウンスが流れた。



……銀行のようだな。……



(((……お客様がカウンターに来られたら、お二人とも「お待たせ致しました。」と言って、30度のお辞儀をして下さい。)))



ガスパーの指示通りに、最初の魂に挨拶をした。



「お待たせ致しました。」

「お待たせ致しました。」



……30度は『敬礼』、言葉を発し、言葉の語尾と共に頭を下げる。

確か、先言後礼…だったな。……



(((ハル様、もう少し頭を下げて下さい。ユーキ様と同じ位迄。)))



ハルは、下を向いたまま、俺を確認しながら、頭の位置を調整したようだ。



「俺さぁ、冒険の旅がしたいんだけど、何処か面白そうな所、紹介してよ!」



まだ、十代と思える『お客様』はそう言って、カウンターに肘をついた。



「冒険の旅でございますね?」



(((カウンター右にパンフレットがございます。『冒険』の棚から、一部出し、お渡し下さい。)))



「こちらに、ご参考となるパンフレットがございます。

ご覧頂いて、お気に召す世界がございましたら、お申し付け下さい。」



俺はそう言って、ハルが棚から出したパンフレットを受け取り、渡した。



(((申込み用紙も、お忘れなく。)))



「失礼致しました。

お客様、申込み用紙もお持ち下さいませ。」



「……このパンフレット見て、気に入った世界があったら、書けばいいんだよね?」



「仰る通りでございます。」



「わかった。」



「ご記入頂く内容は、可能な範囲で、詳細にお書き下さい。

また、ご不明な点がございましたら、何なりとお聞き下さいませ。」



「うん、ありがと。」



(((「ありがとうございました。」と言って、再びお辞儀をして下さい。)))



「ありがとうございました。」

「ありがとうございました。」



(((ハル様、もう少し頭を…そうです。

ユーキ様、完璧でございます。)))



((ありがとうございます。))



……変身!ビジネスモード!って感じだな。……



思った通り、俺はある程度、敬語の使い方やお辞儀の仕方を知っているようだった。





【あとがき雑学】


『先言後礼』(せんげんごれい)


まずは「ありがとうございます」などの言葉を発してから、その言葉の語尾と共に頭を下げます。


頭を下げながら発声すると声が聞こえにくくなり、表情が見えないと言葉は心に届きにくいものという理由から。

接客の現場ではよく使われる言葉だそうです。



また、お辞儀ですが、首だけ曲げるのはNG!

背筋を伸ばし、腰から頭にかけて一直線になるように腰を曲げます。

種類や角度(深さ)にも色々あります。


①会釈(角度は15°)

ちょっとした挨拶。


②敬礼(角度は30°)

初対面で挨拶する際やお見送りの際にする挨拶。一般的に『お辞儀』と言えばこれ。


③最敬礼(角度は45°~90°)

謝罪やクレーム応対時などに使う。深く謝罪をする時などは90°位。それ以上ではかえって大仰に見える場合もあるそうです。

(角度については諸説有)

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