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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ ハル ※
45/86

【44】※ Practical training(実技研修) part7 ※


「……そういえば、トーマの話ばかりになってしまいましたね。」



「そうだね。ハルの話も聞かせてほしいよ。」



ハルと俺は、次の研修先『異世界レセプション』へ向かっていた。



「私の話は、実につまらない物になりますが、よろしいでしょうか?」



「つまらない?」



ハルは少し寂し気な微笑みを浮かべた。



「……最初の記憶は、先程もお話させて頂いたように、貴族の公僕として仕え、その生涯を終えた……一言で表せば、そういう人生でした。

そして、1度目の転生後も、状況はほぼ同じでしたね。」



……?……ハルの言い方は、何処か投げ遣りだ。……



「……そうか。」



「五度転生を致しましたが、ここに来たのは三回目です。」



「転生が5回なのに、3回目?」



「そうですね。数が合いません。

……私も以前、不思議に思った事もありますが、今では確信しています。

転生は、何も、ここに来なくても、果たせる物であると。」



「じゃ、異世界コンツェルンがあらゆる時空、世界の魂を管理している、という話は?……誇張された話なのか?」



「……私にも、それはよくわかりません。

ただ、何かしらの望みを抱き、過去へ転生するには必要な場所なのかもしれません。」



「望み……過去?」



「私も、ですが、何度か転生を繰り返した者に聞くと、皆、ここに来た時は、必ず過去に転生しているようです。

一縷の望みを持って……。」



「じゃ、ここと関係なく転生した時は、少なくとも時間は進んでいる世界に転生した、という事なんだな?」



「はい、その通りです。」



では、チームメンバーもそれぞれ『過去』を望んでいるのか……だが、レオンはここに来て、俺の話を聞き、希望の転生転移先を未来に変えた。……



「なぁ、今のハルは過去に戻りたいのか?」



「……そうですね。今回は望みを抱いて参りましたので。」



……ハルの望み?…何なのだろう?……

しかし、なんとなく聞く事は躊躇われた。



「ここに来ずに転生した時は、どんな感じだったんだ?」



「どんな感じ……そうですね、死亡してから、特に何もなく新たな人生が始まりました。

まぁ、この世界に来て、それ迄の記憶が甦ったので、わかった事ですが。」



……『何かの目的を持って過去に戻る望みを抱く事』が、この会社の社員になる条件と言えるのかもしれない。

それに、転移はわからないが、転生は、この会社と無関係にあり得る事なんだ。

だとしたら、この異世界コンツェルンの存在意義とは…『過去』が関係するのか?……



「…………。」



「ユーキ、もう着いてしまったようです。」



「……着いてしまった?」



ハルに言われた言葉が、一瞬わからなかった。

顔を上げると、『異世界レセプション』と書かれた部屋の前にいた。



……そうだった、ハルと次の研修部署に向かっていたんだっけ…。



「あぁ、ごめん。色々考えていて、すっかり状況を忘れていたよ。」



「フフッ、ユーキはやはり真面目ですね。」



ハルは俺に微笑むと、すぐに表情を引き締め



「それでは、参りましょう!」



そう言って、ドアをノックした。





「お忙しいところ、恐れ入ります。研修で参りました。ユーキ識別コード9793519307、ハル識別コード9793519310、以上2名、宜しくお願い致します。」



ガチャリとドアが開いた。

中から、黒いスーツに身を包んだ、長身で品の良い男性が姿を現した。



「ようこそ、『異世界レセプション』へ。

お待ち申し上げておりました。」



白人で四十代くらいだろうか、その紳士は、研修生の俺達に向かって深くお辞儀をし、そう述べた。



……えっ!?……



「ユーキ様、ハル様、どうぞこちらへ。」



思わずハルを見ると、ハルも面食らった表情をしている。



……俺達は研修生として、ここに来たんだよね?……まるで何処かの高級レストランにでも来たような?……



男性は俺達を部屋へ招き入れ、豪奢な椅子を引くと



「どうぞ、お掛け下さい。」



そう言って座る事を勧めた。



周りを見渡すと、まるで高級ホテルのロビーのような空間が広がっていた。



「あ、あの………。」



「はい、ユーキ様。御用でございますか?」



「あの、俺達は研修に来たのですが……。」



「はい、存じております。

(わたくし)は、貴方様方のお世話をさせて頂きます、監督官のガスパールと申します。

『ガスパー』とお呼び下さい。」



「……ご丁寧なご挨拶、痛み入ります。

……申し訳ございません。研修先で、このように手厚く饗して頂いた事が、ございませんので、少々戸惑っております。」



さすが、ハル!

流れるように、言葉を発している。

すると、長身の紳士はその綺麗に分けられた、七三分けの髪を撫で付けながら言った。



「……では、これからは通常通りで、お話させて頂きます。」



「は、はい、よろしくお願いします。」



「それでは、お二人とも、こちらをどうぞ。」



差し出されたのは、マニュアルと黒い布だった。



……制服か……また被るんだな。……



「マニュアルをお読み頂ければ、こちらでの仕事内容はおおよそお解り頂ける、と思われますが……お解りにならない所は後程ご質問頂ければ、と思います。。」



ガスパーは、そう言うと俺達2人を交互に見た。



「ユーキ様、敬語の使い方はご存知でしょうか?」



「は、はい、ある程度は…。」



ガスパーは微笑むと、次はハルに向かって言った。



「ハル様は、完璧なようでございますね。」



……通常通りで、この話し方か。……



「それでは、まずマニュアルをご覧下さい。その後、(わたくし)から具体的な説明をさせて頂きます。」



……『メニューをご覧下さい。その後、料理の内容を説明させて頂きます。』頭の中で勝手に置換されたような気がする。……



「御用がございましたら、お呼び下さい。(わたくし)は一度下がらせて頂きます。」



そう言うと、ガスパーは一礼をし、その場を去った。

俺とハルは無言で顔を見合わせた。



「……ここは、独特ですね……。」



「ハルも、ここでの研修は初めてなんだ?」



「はい。『異世界レセプション』という部署の事は、聞いた事もありません。」



「……とりあえず、マニュアルを読もうか?」



「そうですね。」



俺とハルは、視線を落とし、マニュアルを読み始めた。



【あとがき雑学】


『一縷』(いちる)


意味:

「ごくわずかであること・ひとすじ」「一本の糸」


「一」=「わずか・ちょっと」

「縷」=「細々としたひとすじ」


『一縷の望み』とは「わずかな希望」という意味です。



同じ「わずかな希望」という意味がある『一筋の光明』(ひとすじのこうみょう・こうめい)という言葉があります。

「光明」とは「明るい見通しや希望」という意味で、仏教用語では仏の発する光を指しています。



『一縷の望み』は自分や当事者が自ら(糸のように細く掴みづらい)希望を掴む。

『一筋の光明』は自分以外の物事が困難や絶望から救ってくれる。


2つの言葉には、そういったイメージの違いがあるようです。


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