表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ ハル ※
44/86

【43】※ conversation with~(会話)  ハル①  ※


「貴方とゆっくりお話出来る機会は、初めてですね。」



ハルはニコリと微笑みながら、そう言った。



今回の俺のバディー相手はハルだった。

ハルは、常識人に思えるし、何よりこの世界の経験者だ。

色々有益な話が聞けるかもしれない。

そう、期待したのだが……。



「あなたにはトーマが必要です。」



……またその言葉か……今はそのトーマから疎まれているんだが。……



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


先程も、俺はトーマの(集団内と2人だけの時の)態度の違いの理由を問う為、1人でいたトーマに



「俺に何か言いたい事があるなら、ハッキリ言ってくれ!」



そう言ったが



「……別に……。」



トーマは俺の顔を見る事もなく、そう一言だけ言った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ハルは、……よくはわからないが、貴族だったのか?」



俺は先程の出来事を振り払うように軽く頭を振り、話をはぐらかした。



「貴族…そうですね、少なくとも平民ではありませんでした。

正確に言えば、貴族に仕える公僕とでも思って頂ければ。」



……やはり…ハルの立ち居振舞いは、どこか気品がある。……



「俺と時代は違うが、同郷な気がするけど…」



「同郷?」



「いや、トーマに言われたんだよ。同じ国の出身って事だと思うけど。……」



「あぁ、そうですね。トーマがそう言ったなら、私もあなたと同郷なのでしょう。」



「ハルはトーマとは……その、昔の知り合いなのか?」



「そうですね…元々は同じ公僕でした。

転生を繰り返す度、同じ時代を生きたりもしました。」



「…トーマが貴族の公僕?気品とは無縁な気がするが……。」



フッとハルが微笑んだ。



「トーマは柔軟なのです。

私のように昔のままではなく、時代や他人に合わせられる…頭の良い男です。」



「頭が良い…と言うなら、ハルの方が良さそうだけど…。」



「ふふっ、ありがとうございます。

しかし、頭の良さというのは、学問や知識の能で決まる訳ではありません。

学問が出来たからと言って、実際にそれをどう活かすか…それが出来なければ意味はありません。」



……耳が痛い。……知識はあっても活かす術を俺はあまり知らなかったと思う。……



「ただ、トーマは正直過ぎました。

私達の仕えていた貴族社会というものは、権謀術数にたけた者の集まりでした。

トーマの頭の良さを以てしても、数々の謀略には太刀打ちできなかった。」



「そうなのか……。」



「トーマは人の気持ちや状況に同調する事が出来る男でした。

真面目で頭は良いが、情に脆い。

一つの集団の中では、周りに合わせる事が、往々にして必要です。

例え、間違っていると思っていても…です。」



「…凄くよく…わかるよ。」



「時代が変わっても、日本人は変わらない…という事なのでしょうか…。」



ハルは寂しそうに微笑むとそう言った。



「ただ、トーマには『思い込み』が強い一面もあります。

特に自分が気に入った相手に対して…。」



「思い込み?」



「『コイツはいいヤツだ。俺はコイツが好きだ。だから、コイツはこうあらねばならぬ。』そのように思うのでしょう。

自分の思い描いた人物像を押し付けてしまう。

そして、理想とは違う一面を見せたり、自分の助言を少しでも聞かないと、急に勝手に離れていく。

……トーマの欠点ですね。」



「………理想の押し付け……。」



「なんとも思っていない相手には、そんな事はしません。

卆なく無難に付き合う事が出来ます。

おそらくは、気に入った相手に、甘えているのですよ。

手の平をかえしたような態度をとる人間は、内気、臆病な人間であるとも言えます。

『何が悪い』とハッキリと指摘はしない。

相手が怖いからなのか、『それぐらい自分で気付け!』という意地悪な考えなのか……。

ともかく、自分の態度が変わった事で、相手が変わってくれる事を、自分勝手に期待する。

いわば、歪んだ正義感とでもいうのでしょうか……。」



「歪んだ正義感?」



「『自分が思う、理想の人物像に近づく事が、ひいてはその相手の為になる。』勝手な思い込みで、傲慢な考えです。

そして、なかなか、自分の思い通りにならなかった場合、途中で見捨てる。つまり、大嫌いになる。」



「……確かに、やられた方は堪ったもんじゃない……。

訳がわからないうちに、好意が悪意に変わるのか。」



「でも、まだ自分に寄り添う姿勢を見せてくれるかどうか、トーマはとても気にしている。

チラチラとユーキの反応を見ているでしょう?」



「……ハル、なんでわかったんだ?」



トーマは、明らかに俺を無視していた。だが、チーム内では今迄通りの振る舞いをしていたのに……



「ふふ…、長い付き合いですからね、トーマとは……。」



「……。」



「……後、考えられるのは…『利害関係者』の存在ですが……

誰かに入れ知恵をされ、何らかの利益の為に、操り人形となり、急に態度を変える…

トーマの場合、そのような事はないと思いますが…。」



……『ステークホルダー』か。……

ハルはないと言うが、あるかもしれない。……



「何にせよ、ユーキは気にしなくて大丈夫ですよ。トーマはユーキをとても気に入っています。

そのうち、痺れを切らして、トーマの方から歩み寄ってくるかもしれません。」



「あぁ、ありがとう。ハル。」



「しかし、トーマは、学習していませんね。」



「……学習?」



「トーマが、以前、身を滅ぼす原因を作ったのは、今の貴方と同じ、気に入った人物の裏切りでした。」



……裏切り……?



「トーマは、常日頃から周りに合わせる事は出来ていました。

しかし、あの事件。……

私は、短気を起こさぬよう、止めましたが、トーマは集団の決定に異を唱えてしまいました。弱い者を守る、己の正義感に従っての行動でしたが…。」



「!?」



((それでトーマはどうなったんだ?…))



「……貴族社会から追放されました。

そして、トーマに関する悪い噂は、貴族社会のみならず、世の中を席巻し、彼は失意のうちに、市井の片隅で亡くなりました。」



「……そうだったのか。……」



「……しかも、その噂の出処は、トーマが庇い、そしてトーマを裏切った者、とされています。

その者は、貴族社会で伸し上がりました。

トーマが生存中に、その事を知る事はなかったと推測します。それだけが救いかもしれませんね。」



「……そうかもしれないな。」



「ユーキは、ご自分の記憶が失われているのですね?」



「えっ?…うん、そうだけど…。」



「記憶がない事は、不安で辛い事だとは思いますが、考え方を変えれば『真っ新』という事です。」



「まっさら?」



「何物にも染まっていない、そのような意味合いでしょうか。

だから、これからご自分で染め上げていけば良いのです。ご自分の色に。」



……ハルは、例え方も優雅だ。……



「そうだね。ハルの言う通り、これからどうするかが、大事なんだろうな。」



俺がそう言うと、ハルは微笑んだ。




【あとがき雑学】


①『ステークホルダー』

ビジネスにおいては、取引における「利害関係者」の事。


(『黒幕』が「ああしろ、こうしろ」と入れ知恵をする。

本人にとっても何らかの利益がある場合、相手の言いなりになることを拒まない。

その結果、他者に対して態度を一変させることもあり得る。)



席巻(せっけん)

元々の意味は「席を巻く」で、藁で編んだ敷物を、端からクルクルと丸めて巻き取るように、戦で他領土を攻め落としていく事を指す。

今では「激しい勢いで広まる」という意味で広く使われる。



市井(しせい)

元は、井戸のある所に人が多く集まり、市が立った所。

庶民が多く集まり住む町や巷の事。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ