【41】※ Bulletin board(掲示板) ※
「よく、ここがわかりましたね。」
「あ〜、ユーキには2つ、謝らねばなるまい。」
「……なんですか?」
「1つは、お前が拘束されている傍らで、ロビンとアイラの会話を盗み聞いていた事だ。」
「……だいぶ前からいたんですね?」
「まぁ、そうだな。
お前には悪いと思ったが、あのまま喋らせていれば、重要な話を労せずとも聞けるか、と思ったからな。」
「別に悪くはないと思います。
俺が監督官の立場でも、同じ行動をとったでしょう。
2つ目は?」
「お前達に監視をつけた事だ。
俺は、あのバイキングの件で、お前達全員に監視をつけた。
要するに疑っていたのだ、お前もレオンも……。」
「あぁ、レオンが言っていましたからね。
多分、監視されているのだろうと自覚していました。
疑うのも当然だと思うし、何より、監視されていたから、助けてもらえた。
結果オーライです。」
「………いや、そう言って貰えると助かる。
……が、『けっかおーらい』とはなんだ?」
「ん〜、物事が、紆余曲折を経て、最終的には問題の無い結果に終わること……みたいな意味かな?……ともかく助けて頂き、感謝します。」
「ユーキは……何か変わったな…。」
「……はい?」
「なんというか…わからんが、研修の時と少し雰囲気が違うように感じる。
だが、レオンが言っていた通り、見所がある。
どうだ?研修終了後は『救助隊室』へ来ぬか?…俺が、直々に鍛えてやろう。」
「それは……レオンに鍛えられる事の次に嫌です。」
「わっはっは!そうか、そうか!」
「ところで…レオンは?」
「先に、チームの部屋に戻った。だいぶ時間をとったからな。
『アイラを拘束したら、メンバーに事情を説明してこい』と俺が言った。」
……レオンが事情を説明?……
「どうした?」
「ちゃんと伝わるか、少し不安です。」
「わっはっは!!
アイツは、口下手だからな。
後でお前が、改めて説明しろ。」
「はい。」
やはりレオンの説明では、皆の理解は得られなかったようだ。
部屋に帰ってから、質問攻めにされた。
挙げ句………
マイケル
「研修先で色目を使うなど、不謹慎な話だ。それに非合法転移など……
あ〜、ユーキじゃない、その女だ。」
ライラック
「だいたい『Oblivion』って名乗るなんて、馬鹿じゃない!
不用意にも程があるわ。
それにその女……妄想に生きてるのね。ウェッ、気持ち悪い。」
サミー
「モテモだね〜。
本当は彼女と転移したかったんじゃないの!?残念だったね〜。」
ハル
「何はともあれ、無事で安心しました。」
フィン
「『危ない!』って、お友達が言ってたよ。
誰も助けてくれなかったら、ユーキも、お友達を呼べばよかったんだよ。」
ニモ
「……お前がどうなろうと、俺は構わないが、チームの足を引っ張る事は許さん。」
アンリ
「ユーキは優しいが、簡単に人を信じ過ぎる。
だが、このような事は、そうそうある事ではないだろう。
今回は運が悪かったな。」
レオン
「悪かった、ユーキ。
今回は我の落ち度である。
あの場で助けられなかった事も悔やまれる。」
トーマ
「お母さんの言う事聞かないから、誘拐されるのよ~。
お母さんは素直なユーキちゃんが好き。」
…………等等等……色々言われた。
拉致事件後、次の研修を終え、
今は報告会も終わり、所謂自由時間である。
まだ次のバディーと研修先は発表されていない。
掲示板に浮き上がっているのは、あの事件の経緯だ。
結局、『チームWIS713209』は、脱落……いや、消滅した。
非合法転移、転生を目論んだ罪は重い。
だが、バイキングの件に拘っていたかは不明との事。
それに『あのお方』……その文言はなかった。
アイラ、ロビンは無論の事、あのチームの他のメンバーも、この一件に加担していた事が明るみに出て、厳しい尋問の後、『浄化室』へ送られ、全員消滅したとの事だった。
「ユーキはすっかり有名人になったな。」
掲示板を見ながら、アンリが言った。
「……なんで?」
「この掲示板は、他のチームにもあるだろう。
レオンとユーキの名が載っている。」
「俺にとっては不名誉な事だけどな。
拉致され、女の玩具にされそうになった……なんて、男として情けない。」
「いや、ユーキはただの被害者だ。
実際、非合法転移した訳でもないし、事件は未然に防がれた。
不名誉な事では決してない。」
……シンやレオンのように、身体を鍛えていたら、簡単に拉致などされなかったのかも。……
ムキムキの自分を想像した。
何故か、レオンの肉体に自分の顔がのっている……
『いや、ないな。』
少し不気味で、身震いがした。
「ありがとうな、アンリ。」
掲示板に、わざわざこの事件の顛末を晒すのは、多分抑止の意味もあるのだろう。
違法行為は、バレますよ!&消滅しますよ!的な……。
しかし、『あのお方』一派が本当にいるとしたら、きっと脅しにもならないだろう。
そんな事は百も承知で、色々やっていそうだ…。
「『あのお方』は本当におるのだろう。」
レオンがそう言った。
「あぁ、俺もそう思う。
アイラと俺の違法転移は、すぐにも実行可能って感じだったしな。」
「ソヤツが、何を考え、企んでいるかはわからぬが……強敵である事は間違いあるまい。
特に我とユーキは気をつけねばな。」
「レオンと俺?……」
「結果的に、我々はソヤツの思惑を打ち破ったのだ。そして、掲示板で、大々的に名がしれた。」
……そうか。……なんとなく、レオンの言わんとする事がわかった。
わざわざ名を出したのは、会社側が俺達を『餌』にする為。
『あのお方』を釣る為の餌……。
「そうだな。お互いに気をつけよう。」
「うむ。」




