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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ レオン ※
38/86

【37】※ Under the blue sky(青空の下) ※


暗い……また暗闇を落ちている。



俺は……そうだ、頭を殴られ意識を失った筈だ。



アイラが何を考え、レオンと俺を罠に嵌めたのかはわからない。



トーマの事、複数の色つき魂、誰かの言葉、意識を失った時の異質な体験、そしてこの異世界コンツェルン……

色々あり過ぎ、考え過ぎて、頭がパンクしそうだ。



『全く……やってらんないよ!!』



言葉を発した途端、俺は暗闇から青い世界へ放り出された。



青い!?……一面青い……空だった。

浮遊感はあるが、それまでとは違う。

重力に引っ張られ、落ちる感覚。



……このまま落下したら……死ぬな。……



まるで他人事のように、なんの感慨もなく思った。



……いや、魂だから大丈夫か。……



程なく、俺は地面に叩きつけられた。



『グフッ!!!』



あまりの痛みに俺は、声を上げた。





「相変わらずアリストデモスは、騙されやすいな!」



「…………。」



「……。どうした!大丈夫か!?

頭でも打ったのか?」



「……いや、大丈夫だが。……ここはどこだ?」



「!!」



「おい、誰か!!コイツを医者の所に運ぶぞ、手伝ってくれ!」



「医者?……必要ない。」



俺は倒れたまま、答えた。



「……本当に大丈夫なのか?」



「あぁ。」



修練中、小高い崖から落ちたようだ。

……しかし、一瞬だったが、変な夢を見ていた気がする。



今日は天気が良い。

雲もなく、一面の青空が広がっている。

そして、眩い光を放つ太陽。

まるで、あのお方のように、俺達を暖かく包んでくれている。



「お前、自分の名前がわかるか?」



「アリストデモスだが。

何故、そんな事を聞く?」



「…いや、崖から落ちて、ここはどこだ?とか、変な事言うからさ。」



「大丈夫だ。修練を再開しよう。」



俺はそう言うと、起き上がり、近くに転がっていた長槍を手にした。



今日の修練は、足元が不安定な崖の斜面での、槍の訓練だ。

俺達は互いに向かい合い、相手を殺すつもりで、本気で槍を交えている。

先程は、エウリュトスが仕掛けていた罠迄誘導され、足を掬われ、崖を転がり落ちた。

卑怯にも思えるが、この訓練では何でも有りなので、俺のミスだ。

己の肉体、精神に、皆誇りを持っている。

それぞれ鍛えあげているので、然程の死傷者は出ていない。



毎日が修練、それはひとえに祖国を守る為。

俺も仲間達も、祖国を愛し、君主を崇めている。

俺が産まれる前から、他国からの侵略を排除してきた歴史がある。



……俺も、祖国を守る礎となるのだ。……



ファランクスの1角を担う事が、子供の頃からの夢だった。



「アリストデモス、お前は強いなぁ。」



槍を交えながら、エウリュトスは言った。



「……だが!足元が疎かだ!」



エウリュトスの槍が、俺の足を掠めた。



「ふん、そうはいかん。」



俺は、槍を足の力でへし折り、エウリュトスの首筋に穂先を突きつけた。



「参った。さすがはアリストデモスだ。

その甘い性格さえなければ、最強だろう。」



「俺が、甘い?」



「甘い。……というか優しいんだろう、お前は。

それに正々堂々に拘り過ぎる。」



「常に、己を厳しく律しておるが?」



「あぁ、そうだな。だが、お前は他人に優しい。

今は修練だ。相手が仲間だから、必要以上に傷つける事はしない。」



「当たり前だろう。」



「だが、敵に相対した時、なんの迷いもなく、お前は相手を一刀両断出来るか?」



「……出来る!」



「俺は無理だと思うぜ。

お前はなかなか非情になれない。

指揮官も、そう思っておられたから、王の推薦があったにも拘わらず、ファランクスに入るのが遅れたのだろう。」



「…………。」



「個で戦えば、お前は、ほぼ無敵だ。

だが、集団戦術においては、一人の迷いが全滅に繋がる。」



「わかっている。

俺は俺の弱さをわかっている……。」



「そう、落ち込むなよ。

今晩は一緒に一杯やろうや。」



エウリュトスはそう言って、俺の肩を叩いた。





光輝く太陽は沈み、闇が訪れた。



俺達は修練後、束の間、お互いの健闘を(ねぎら)い合い、酒を酌み交わす。

日中の疲れと、適度な酒は、良い睡眠をもたらしてくれる。



ディエネケスが盃を掲げて言った。



「エウリュトス、産まれたんだろ?おめでとう!」



「お、おう、ありがとよ。」



松明(たいまつ)の揺らぐ光に照らされた、エウリュトスは、酒で赤くなった顔を更に朱に染め、照れ臭そうに言った。



アルペオスがエウリュトスに聞いた。



「それで、男か、女か?」



「男だったよ。」



「良かったな、女で、もしお前似だったら、嫁の行き先に苦労しただろうな。」



「ふざけんな!俺に似てたら、嫁の行き先が有りすぎて、選ぶのに苦労したわ!」



「ワッハッハッ!!そういう事にしておこう。」



仲間達は、盛んにエウリュトスをからかっている。



「で、奥さんは実家に帰っているのか?」



俺が聞くと、エウリュトスは少し表情を暗くして



「あぁ、少し産後の肥立ちが悪くてな……。」



そう言った。



「そうか。大事ないと良いな。」



「あぁ。ありがとう。」



「ところで、アリストデモスは、まだ嫁を娶らないのか?」



マロンが、俺に聞いてきた。



「そのつもりはまだない。」



俺がそう言うと、エウリュトスは言った。



「コイツは、ファランクスに入る事しか見えてなかったんだ。

それにまだ若い。

嫁は二の次って事だろ?」



「だが、ファランクスに入る条件は『跡継ぎを持つ者』に限られている。

アリストデモスは条件外だが?」



「コイツは、誰よりも強い。

レオニダス様の目に止まったのだ。例外だよ。」



……ファランクスに入ったからには、尚更、嫁など……



「……そうか、強い上に色男という訳だ。

アリストデモスは、誰かと違って、モテモテなのになぁ。」



「そりゃあ、俺の事か!?」



「自分で言うなよ。」



「「ワッハッハ!!」」



束の間の休息、仲間達との歓談、それは明日への英気を養う為だ。

今は、侵略者達の動きはない。

だが、確かに奴らは、この国をまだ狙っている。

いつ、攻め込まれても、押し返すだけの力を、俺達は日々養っておかなければならない。



「そろそろ、解散だ。

皆、明日の修練に備えて、しっかり休めよ。」



松明の火は消され、辺りは漆黒の闇に包まれた。





翌朝、太陽が昇る頃、俺達は既に戦闘訓練を始めていた。



そこへ急を告げる声が響いた。



「伝令!伝令!!ペルシア遠征軍、トラキアへ侵入せり!!」


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