【35】※ information exchange (情報交換会) part3 ※
チームの部屋に戻った。
そこには既に、マイケル、ニモ、トーマ、フィンがいた。
「おぉ、ご帰還か!意外に遅かったな。」
トーマが俺達……いや、レオンに声をかけた。
「オレンジ色が、多数おったのだ。」
……レオンは一対一で話せば、深い話も出来るのに、何故話の取っ掛かりが下手なのだろう。……
「……色付きの魂がたくさんいたという事か?」
マイケルが、俺に説明を求めるように問いかけてきた。
「あぁ、モニターでは、確かに色付きは1つだったが、実際に行ってみると、オレンジ色のヤツラが十数人もいた。」
「……そんな事があるのか?」
「監督官も初めてのケースだと言っていた。
それに、ヤツラの中の1人が、立ち去る時に俺達の誰かを見て笑った。」
「……それは……」
「それは、ユーキを見て笑ったんだろうさ。
なんせユーキは『Oblivion』だからな。」
マイケルの言葉に被せるようにトーマが言い放った。
「そのような理由で、名指しするとは何事か!!
ユーキでは、決してない!」
「例え冗談だとしても、憶測で軽々しく仲間を貶めるな。
口を慎め、トーマ。」
レオンとマイケルの言葉に、トーマは肩を竦め、
「ヘイ、ヘイ、わかりましたよ〜。」
そう言って、その場を立ち去った。
「……お前たち、あんなに仲が良かったのに……喧嘩でもしたのか?」
「……喧嘩した覚えはないが。」
マイケルが不審がるのも当然だろう。
前から、薄々気付いてはいたが、トーマの俺に対する態度は、明らかに以前とは違う。
……トーマの機嫌を損ねるような事をした覚えはない。……
……いや、あるな。
トーマを疑い、トーマはそれに気付いていたようにも思える。……
トーマが立ち去った方を見ると、目が合った。
トーマは、ふぃっと視線を逸らした。
……やはりな。トーマは俺に思う所があるらしい。
だが今は……そんな事よりも考えるべき事がある。……
マイケルが言った。
「情報交換会の時に、皆に詳しく話してくれ。」
「うむ。」
「わかった。」
一通りの会話が終わると、フィンが俺に近づいてきた。
「ユーキはトーマ嫌い?」
唐突に聞かれた。
「……いや、嫌いではないと思うよ。トーマが俺をどう思っているかは知らないが……。」
すると、フィンはニコリと微笑んで、何も言わず、ニモの隣に帰っていった。
「?」
アンリ、サミー、ハル、ライラックが帰ってきた。
アンリもサミーも、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
今回2人は、バディーを組んでいた。
おそらく、協力などする筈もなかった事だろう。
ライラックは、ハルと普通に会話をしている。
その様子から、落ち込んだ状態から、少し立ち直ったように見える。
ハルがうまくフォローしたのだろう。
「全員揃ったな。情報交換会を始めよう。」
いつもの如く、車座になり、それぞれの研修マニュアルを交換して、情報を共有した。
レオンと俺のマニュアルを読んだ者達は、一様に驚いた様子で、俺達を見た。
サミーとトーマを除いて。
「マニュアルにある通り、『救助隊室』では、異例な事態が起こった。
レオン、ユーキ、詳しく説明をしてくれるか?」
俺達は、入室から退室後の他のチームとの話し合い迄、経緯を細かく話した。
だが、レオンは、俺がまた倒れた事は伏せてくれた。
「監督官も初めての事例だと言っていた。そして……多分だが、俺とレオンには、今後監視がつくらしい。」
「!?…そう言われたのか?」
「いや、レオンの『勘』だが、俺もそうなるように思う。」
「研修生と色付きの魂……接点があるとは思えんな。」
「他チームとの情報交換に行くのか?」
「我らは行かぬ。」
「それが賢明な判断だ。」
「いえ、行くのも有りだと思うわ。
事実を明らかにする為にも、敵チームを探る事は必要よ。」
『敵チーム』……ライラックは完全復活を果たしたようだ。
サミーに甚振られた傷は塞がったのだろう。
他のチームを『敵』と見做す。以前のように好戦的だ。
「否。
この状況は、何者かの計略によって引き起こされた物と考えられる。
敢えて敵地に乗り込む事はせん。防衛に徹する。」
レオンらしい考え方かもしれない。
スパルタは、侵略ではなく、自国を守る、防衛戦をしていた。
「しかし、手を拱いていても埒が明かないのでは?」
「……待てよ。…お前らは馬鹿か!?」
突然サミーが口を開いた。
「……どういう意味だ!?」
マイケルが顔を顰めながら、サミーに言った。
「お前らは、そのオレンジ野郎が、誰かに笑いかけた……それを前提で話しているだろう。
その前提は本当に正しいのか?」
少なくとも、レオンは『特定の誰か』と言っていた。
それに俺にも、確信はないがそう思えた。
「おそらくは……。」
「ほら、みろ!当の本人が確証を持っていない。
だったら、単に金品強奪に成功し、殺したヤツラの亡骸を眺めて、勝利の快感で笑っただけかもしれないだろ。」
「否。我は自身を信じる。
故に、あれはそのような笑いではなかったと思う。」
「『思う』ね〜。お前は自分が絶対に正しいと断言出来るんだ。
たかが人間のくせに……。」
「サミー、口を慎め!」
マイケルがサミーの発言を断ち切った。
「チッ!」
レオンは何も言い返さない。
そういえば、『まぁ、外した事も1度あるがな……。』
そう、寂し気に言っていた。
「モニターに不具合はなかった。
どちらにしても、今迄には起きた事のない、異常事態だ。
これからも、何か起こるかもしれない。
皆、今迄以上の緊張感を持って、研修に臨んだ方がいいと思う。」
俺がそう言うと、殆どのメンバーが頷いた。
「…お前がいない場所では、ないだろうよ。」
ボソッと呟くトーマの声が耳に入った。
「いいねぇ、ラブラブの2人が痴話喧嘩中か?」
サミーが気配を察し、ニヤニヤと笑い、口を挿んできた。
「い〜や、俺らは、いつもラブラブだ。
羨ましいか?羨ましいだろ!サミー。」
トーマもニヤけた顔をサミーに向け、言い放った。
「チッ!喰えないやつだな、お前も。」
「お褒めに預かり、光栄の至り!」
「………フンッ。」
「2人とも、無駄口はそれで終わりか?…
では、報告会を続けよう。」




