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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ レオン ※
35/86

【34】※ Drop dawn(落下)① ※


……今の体験は……?

まるで俺の鮮明な記憶、体験。

いや、俺の時空では、戦争など100年も昔の事だ。

あの子に憑依していたのか?……違う。魂の抵抗に合わなかった。



そう考えている間にも、俺は暗い空間をグングン落ちて行く。



どれ位落ちているのか……それは永遠とも、一瞬とも判断が出来ない……

いや、落ちているのか、上がっているのか、それすらもわからなくなってきた……



突然、浮遊感がなくなった。



しかし、相変わらず、周りは暗闇だ。



「……此処はいったい……。」



呟く俺の目に、眩しい光が射し、視界が奪われた。眩しい。

……何も見えない……





「………何を考えているんだ!?」



「………。」



「………は、俺達だけの秘密だった筈だろう!?」



……誰かの怒りに満ちた声が聞こえる。……

ズキンと胸が痛んだ。……



「何故何も言わない!?…弁解の1つも出来ないのか!?」



「……お前が……。」



「俺が、なんだと言うんだ!?」



「お前が、裏で色々画策していた事を聞いた……。

信じていたのに……。最初に裏切ったのは、お前の方だろ!?」



「……誰がそんな事を言ったんだ!?」



「………だ。」



「っ!」



「その反応……やっぱりな……お前こそ、いったい何を考えているんだ!?」



「俺は、何もやっていない。」



「何もか……。だが、匂わせるような事は言ったんだろう?

……そうでなければ、アイツが俺に思わせぶりな話をする訳がない!!」



「……お前は…俺を信じられないのか?」



「……あぁ、もう……少しも信じられない……。」



「……わかった……。」



ダァーンッと何かがぶつかる音がした。



「……何を!……俺を殺す腹積もりでもあるのか!?」



「…決裂だ!!

このプロジェクトも、お前との仲も、何もかも終わりだ!!」



「………。」



「だが、禁忌だ。絶対に他に漏らすな!

それだけは約束しろ!」



「…わかっている……。」



何故だろう……このやり取りは、妙に俺の心を搔き乱す……

胸が圧迫されるように痛い。

……何かが乖離した。



2人の男の会話は途切れた。辺りは闇と静寂に包まれた。

波立った俺の心も、静かに闇に同化していった。……

……………………………………………………。



……どうして此処にいるのだろう?……



そうだ、崖から落ちた……いや、もっと高い所から、突き落とされた気がする。



……俺は…誰なんだ?……これから何処へ行けばいい?……



「……お前はユーキだ。」



……そうだ、俺はユーキだった。……



「帰ればいい。あの場所へ。」



「あの場所?」



……あぁ、そうだった。異世界コンツェルンへ帰ればいいんだ。……



「お前が、やれ。」



「やる?」



……何を?……



「俺はもう、動けない…。頼む……。」



闇の中に、会話相手を探したが、誰の存在も確認出来なかった。



「…頼む、…終わらせて…やってくれ…」



闇から漏れ出る、微かに聞こえる哀願するような声……



突然、背中に衝撃が走った。



「!!?」





誰かが、俺の背中を叩いている。



「ユーキ!ユーキ!」



俺の目に、眩しい光が射し、一瞬、視界が奪われた。眩しい。

……何も見えない……



「ようやく、目覚めたか!?」



「…?……此処はいったい……。」



「何を寝惚けておる。」



薄く開いた瞼の隙間から、体格の良い男の姿が見えた。



「……レオン?……」



「そうだ。お前はまた、倒れたのだぞ。大丈夫か?」



「あぁ、すまない。世話をかけたみたいだな。」



「?……ユーキ…か?……何か少し違和感がある。」



「違和感……。」



「……いや、我の思い違いか……。」



「俺はどれ位、寝ていたんだろうか?」



「……僅かの間だが……。」



「そうか……。本当にすまなかった。」



「うむ。ともかく、無事で安心したぞ。」



「……ありがとう。」



……違和感……レオンに言われる迄もなく、俺も感じている。

先程迄の俺とは、何かが違う。自分でも何なのかはわからないが。……



意識がハッキリするにつれ、今迄の記憶が戻ってきた。

たが、相変わらずここに来る前の記憶は戻らない。

意味もなく、指を曲げ伸ばししながら、自分の手の平を眺めた。



「どうした?身体に不具合が残っておるのか?」



「……いや……大丈夫だ。……なぁ、レオン……。」



「なんだ?」



「レオンは戦で人を殺す時、何を思っていた?」



「……そうだな。何も思ってはおらなかった。

殺すのは人だ。おそらくは、守るべき者や、ソイツなりの矜持、人生があったのであろう。

だが、戦の場には、そのような思いを持ち込むものではない。

相対する、ただの敵だ。獣を倒すのと変わりはない。

喰うか喰われるか、ただ、それだけの事だ。」



「殺される恐怖はなかったのか?」



「恐怖か。なかったとは言えまい。

だが、己の力量を知っておったからな。然程の恐怖を覚えた事はない。」



「そうか……。」



「……どうした?目覚めた途端、戦の話など……お前らしくもない。」



「いや…ただ俺がもし、戦いの場面に身を置いたとしたら、どうなるのかな…と思った。」



「そうだな……ユーキは恐らく、己が殺される恐怖から、相手を殺す。

それは、抗いがたい本能の為せる事であろう。

だが、恐怖心だけで動けば、先が知れている。いずれ殺される。」



「……やはり、そうか。」



「更に言えば、お前は、喰い合いの最中に、相手を人間として認識し、殺す手が鈍る。

結果、殺される。

お前は『他人』の事を考え過ぎる……まぁ優しいと言えばそうなのだが、戦いの場には邪魔な感情だ。」



「結局俺は死ぬか……。」



「いや、そうとも言えまい。

頭を使え。己の弱点を知れば、自然、戦い方も見えてくるものよ。」



……己の弱点を知る……

自分の弱さを認め、恐怖を自分で制御し、行動する意志を己で持つ……



「……即ち…勇気だな。」



俺が呟くと、レオンは一瞬驚いた顔をしたが、



「あぁ、そうだ。お前の名と同じだ。」



そう言って、破顔した。




【あとがき雑学】


Drop(ドロップ) = 落ちる

Fall(フォール) = 落ちる


どちらも同じ意味の英語です。

しかし、落ち方のイメージに違いがあるようです。


《drop》

急にストンと落ちる、直線的に落ちる、落ちる位置(落ちた地点)


《fall 》

ある程度の時間をかけて落ちる、曲線的に落ちる、落ちる過程(落ちてから到達する地点迄の道程)


そして、英語の《drop》には「落ちる」以外に「落とす」という意味もあります。

「何かが勝手に落ちる」以外に「誰かが何かを落とす」と言う時にも使われるそうです。

《fall》にはそのような意味はありません。


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