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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ レオン ※
32/86

【31】※ conversation with~(会話)  レオン③  ※


レオンがサミーに聞いたという話は、俺がトーマに聞いた話と全く一緒だった。

トーマとサミーが、示し合わせでもしない限り、それが本当の情報であると思えた。


……トーマへの疑いは間違いだったのか?…いや、何かがまだ引っ掛かる。……



「そういえば、お前はサミーに喧嘩を売っておったな。」



「喧嘩?…あぁ、あれか。」



「記憶がないのは、知っておるが……本当にお前には、望む行き先がないのか?」



「……今はな。

だが、この会社に入ったという事は、何かしらの望みがあったのかもしれない。

だが、今はどうでもいい。」



「そのように言うでない。

記憶さえ戻れば、思い出すのであろう?

ならば、来るべき日に備え、今、力を尽くす……それこそが、必要な事であろう。」



「……一応、俺なりに力を尽くしているつもりだが……。」



「そうだな。それは認めよう。

だが、今のお前は『他人の為に』だ。

『己の為に』は考えてはおらん。」



「……?……」



「己が好きでない人間は、どこか危うい。自分を好ましく思わぬ者は脆い。

ユーキからは、己を尊重する気配が全く伝わって来ぬ。

少しは自分に自信を持て。」



……と言われても、自分の事が何1つわかっていない俺に、どう自信を持てと…?……



「レオンは、自分に自信があるんだな。

最初は申し訳ないが、戦好きの脳筋だと思っていたが、今は見直している。」



「『のうきん』とはなんだ?」



「う〜ん、『脳まで筋肉』の略?……肉体派で、思考が単純という意味かな…。

とにかく、失礼した。謝る。」



「そのような事を気にする我ではない。謝罪も要らぬ。

他人にどう思われようと、確固たる己を持てば、自ずと人は集まる。

己の力量を知れば、恐怖心など吹き飛ぶわ。

君主たる者、臣民の手本とならねばならぬ。」



……他人にどう思われようと……

《お前『俺』は、気になって仕方あるまい……》

心の隅で誰かがまた囁く。



「……レオンは王様だったんだよな。」



「確かに。我は君主であった。そして戦士でもあった。」



「君主と戦士、どちらの自分にも誇りがあったんだな。」



「その通りだ。…だが、我には心残りがある。故に、ここに来たのであろう。」



「心残り?」



「うむ。我は戦場で果てた。

しかし、『神託』でそうなる事は、わかっておった。

君主が死すか、国が滅びるか…どちらかであれば、当然我は死を選ぶ。」



……レオンとの会話は、やはり戦の話題に戻るな。……



「レオンの国はどこの国と戦っていたんだ?」



漂う雰囲気から、レオンは、相当古い時代から来たようにも思えた。

俺が知らない国かもしれないが、なんとなく聞いてみた。



「ペルシアだ。」



……ペルシア?……今のイランか……



「我らはラケダイモンだ。

ギリシア世界で最強の重装歩兵軍、陣形ファランクスは無敵だった。

ペルシア戦争では、ペロポネソス同盟の盟主となり、テルモピュライで、我がスパルタ兵の重装歩兵300名を含む、ギリシア連合軍7000名程を率いて戦った。

200万程のペルシア軍にも引けは取らなかったわ。

だが、我はその戦の最中、戦死した。」



「スパルタ……都市国家か。……」



「知っておるのか?」



「…あぁ、俺の国に『スパルタ教育』って言葉がある。

厳しい教育を指す言葉だ。」



「それは光栄だ。

我が国では、女子供であっても、兵士として戦える為の厳しい教育を施していた。」



……ペルシア戦争……確か、紀元前の出来事ではなかったか?……

…だとしたら、レオンは……



「しかし…引けを取らなかったのに、何故レオンは死んだんだ?」



「裏切り者、内通者がいたのだ。」



レオンは渋い表情で言った。



((……裏切り者……内通者……))

………………。



「テルモピュライには崖に囲まれた隘路がある。敵の大群をその狭い道で迎え討った。

だが、内通者は裏の抜け道をペルシア軍に教え、我々は挟み撃ちにあった。

我はその戦いの中、命を落とした。

我が軍は『君主』という旗印を無くし、おそらく敗退した…のであろう。」



レオンは苦しげに、表情を曇らせた。



……しかし…確か歴史では、ペルシアは、スパルタを手中に出来なかった筈……



「だが、同盟軍は撤退しただろうが、我が軍はスパルタの掟『決して撤退せぬ』を遵守し、最後迄戦った筈だ。」



……レオン、いや、『レオニダス』は国を統治し、強い自国に誇りを持っていたんだ……だから、俺の国の在り方に、色々言いたい事があったのだろう。……



「……『神託』が正しいとすれば……だが、レオンが死ななければ、国は滅んだんだろう?…

それでもレオンはその時空に戻るのか?」



レオンは一瞬息を呑んだ。



「うむ……。」



……しまった!余計な事を言ったかもしれない……



「……我は……ラケダイモンの誇りを捨てた内通者が許せない。

時空を超えて、再びあの場に立っても、我はまた死ぬのだろう。

だが、その前に内通者を我が手で成敗したい。

さすれば、我が臣民の犠牲が減る。」



……その為だけに?

ここでの仕事をやり遂げ、転移転生するのは多分容易な事ではない。

その目的の為だけに、時空を渡るなんて。……



「許せない気持ちはよくわかるよ。

だが、俺の時空の歴史では……レオンの死後も、レオンの国スパルタは、ペルシアの侵攻を悉く排した。

『我らの英雄レオニダスの仇を討て!』を合言葉にして…。

『神託』は当たっていたのかもしれないな。」



「それは本当か!?」



「あぁ、俺の知識が正しければ、間違いない。」



……紀元前の話だ。どこ迄本当かはわからないが、ヘロドトスが書き残している史料があったと記憶している。……



「……そうか、それならば良い。

我は転移、あるいは転生先を変える事にする。」



「当てはあるのか?」



「お前のいた時空のスパルタだ。」



「…スパルタはもうないよ。都市国家は、もうどこにもない。

俺のいた時空では……そうだな、ギリシャ共和国という大きな国になっている。」



「国王はいるのか?」



「国王はいない。多分俺の国と同じような体制だな…大統領はいたと思う。」



「『だいとうりょー』とはなんだ?」



「政治家のトップ、国を率いる人だよ。」



「お前の国と同じ……では、やはり他国に依存しておるのか?」



……依存?あぁ、軍備の事か……



「いや、確か徴兵制があるから、ちゃんと自国で国を守っている筈だ。」



「そうか!!」



レオン…いや、レオニダス1世はとても嬉しそうだ。



彼が転生したら、大統領になれるかもしれないな…そんな事を思った。


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