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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ レオン ※
30/86

【29】※ rescue team(救助隊)part② ※


……ここ…は…地獄か?……


鋭利な刃で背中から切りつけられ、血を吹き倒れ伏す男性。髪を掴まれ首にナイフを突き立てられ、絶命する女性。

屈強な男達に、次々に殺されていく人々。

床はもう血の海と化し、倒れているいずれの人間にも、もう魂は宿っていない。



あまりの光景に、俺は絶句した。目の前で次々に人が殺された。

隣にいた「アイラ」と呼ばれる女性の魂は震えている。



(((う〜ぬ、我に元の肉体があれば、このようなヤツラなど…!!)))



レオンの視線の先には…不敵に笑い、金品を奪う海賊?のような姿をした男達。……



……バイキング…か?…

……しかし、あれは!!……



オレンジの魂が幾つも見える。

……こいつら全員、色付きなのか!?……



モニターで見たオレンジ色の点は、確かに一つだった。

……なのに何故……。



略奪者達は、一通り金目の物を漁ると、空中で浮遊する事しか出来ない俺達に背を向けて、部屋を後にした。


そして…最後の1人がこちらを振り向き、ニヤリと笑った。


それは戦果に満足した表情なのか、あるいは……俺達を嘲笑う笑いなのか…。





「……1度目はすまなかったな。

研修なのに、完全にイレギュラーだった。

通常は、2回目のような案件の筈だったのだが……。

……アイラ、大丈夫か?」



シンは重々しい口調で言った。



「……はい。」





あの異例の案件の後、すぐに別の任務をクリアして、俺達は再び時空を渡り『救助隊室』の部屋にいる。



2度目の救助活動は、通常通りの流れで、赤色の魂を確保し、既に『浄化室』へと送っている。



……しかし、惹かれる人間へ憑依はしたが『あの時』とは違った。

『あの時』はなんの抵抗感もなく、まるで元から自分の身体であったかのように思えたが、今回は元の魂の抵抗にあった。

なんとか宥め、一時同居をさせてもらい、更に主導権を握ったという感じだ。

浮遊感も、救助隊の時は、上に上がる感じだったが、『あの時』は下に落下する感じだった。……



見張りの役目は

『他の人間に気づかれないか見張り、怪しまれたら、適当な事を言って納得させ、確保業務を邪魔させない』

というものだった。

俺とアイラは、別々の場所に配置される筈だった。

が、彼女は前回任務の恐怖が消えないようで、憑依後、俺にピッタリくっついて離れなかった。



レオン達の確保行動は、一度怪しまれたが


「あの男が突然暴れ、彼女が被害に合いそうになりました。

そこへ偶然、あの方達が通りかかり、助けてくれたのです。」


俺はそう言って乗り切った。

貧弱な俺にくっついて、震えている彼女を見れば、説得力もあっただろう。



「……あの…ごめんなさい……。」



アイラは震える小さな声で、謝ってきたが、



「大丈夫だよ。

むしろ、今の言い訳は使えると思わない?」



俺がそう言うと、彼女は少し安心したように微笑んだ。



「……私は……

チームWIS713209、識別コードR-7290854002。

アイラと言うの。よろしくね。」



「俺は、ユーキ。

チームWIS831322、識別コードO-9793519307。

協力は、今回だけかもしれないけど、その先もお互い頑張ろう。」



一瞬彼女は驚いたような表情を見せたが、ニコリと笑い、先程より、もっとその身体を寄せてきた。





先程の顛末を思い出し、何気なくアイラを見ると、彼女と目が合った。

彼女は嬉しそうに微笑んだ。



……なんだか妙に懐かれたな。……



俺は軽く会釈をして、そんな事を思った。



「リンディスファーン修道院は、俺達が行った時空では、793年から、度々バイキングの襲撃を受けていた。

凄惨な現場だったが、これは覆せない事実だし、俺達が拘る事でもない。

問題なのは、モニターでは、オレンジの点が1つであったのに、実際には襲撃者全員が色付きの魂を持っていた事だ。」



シンは難しい顔をして言った。



「システムの不具合ではないのですか?」



ロビンがそう問うと、シンは即座に答えた。



「俺達が次の現場に行っている間に、探索室のケイに調べて貰ったが、それはないそうだ…。」



「システム開発部に問い合わせた方が良いのでは?」



「それは、ケイが既にやっている。」



ロイドが険しい表情をしながら



「あの場合、例え我々が憑依を終えた後でも、対処は難しかったですね…。」



そう言うと



「…そんな事はないだろう。

我々なら、全てとは言わないが、少なくとも複数の色付きは確保出来た。

レオンと俺なら、やれたと思う。」



ジェイが応じた。



「………否。あの状況では、例えシンが加勢したとしても、我らでは及ばなかったと推測する。」



意外な事に、レオンがそう言った。

……レオンは、冷静な状況判断が出来ている。やはり、脳筋ではないようだ。……



「ロイドとレオンの言う事は正しい。

バイキング1名に対し、修道院にいる一般人が立ち向かっても、存命中に『確保』『吸魂』『分離』を行うのは、難易度が高い。

非常にタイトな現場になっただろう。

バイキングの中に、レオン、ジェイが憑依出来る人間がいれば、少しは難易度も下がっただろうが…。

それどころか、バイキング全員色付きとはな…。」



……『存命中』か……魂の回収の有無に拘らず、あの場にいた一般人は結局死んだという事だ。

俺達の仕事は歴史を変える事ではないから。……



「通常でも、複数の色付き魂を確認した場合、正社員でも要員を増やし、20名程で行う。

場合によっては、特殊部隊も入れて…。」



「……バイキングが立ち去る時、こちらを見て、笑った気がしますが……相手に我々が見えていた、という事は考えられませんか?」



俺が問うと



「そのような事例は報告されていない。

……が、今回は異例案件だ。

検証の余地はある。」



シンはそう答えた後、下を向き、暫く目を瞑って黙っていたが



「いずれにしても、ここでの研修はこれで終了だ。皆、よくやってくれた。

マニュアルは持ち帰って構わない。

あの案件は、上層部へ報告の上、こちらで対処する。

以上、解散。」



そう言って、顔を上げた。



【あとがき雑学】


『タイト』英語:「tight」


語源である英語の意味は、「(主に時間的に)きつい」「窮屈」です。


(タイトスケジュール)

 =時間的余裕のないスケジュール

(タイトスカート)

 =体のラインにピッタリと密着した形をしたスカート


カタカナとしての「タイト」は、本来の意味より幅広く使われているようです。


また、英語のスラング表現として「いいね」「カッコいい」という意味もあります。


ネット上の「いいね!」は

「That’s tight!」だそうです。



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