【28】※ rescue team(救助隊)part① ※
シンを先頭に、レオンと俺は暗い空間へ入った。
レクチャーを受けていた場所からは、ただの暗闇にしか見えなかったが、いざ入ってしまうと、周りの様子が見えるようになってきた。
……段々目が慣れてきたのか。……
『救助隊室』の暗闇の中には、大きなホールが有り、その先には入口らしき扉が幾つもあるようだった。
「ここで、暫し待て。」
シンはそう言うと、その場を離れた。
周りには大勢の人間…魂がいたが、それぞれ列をなして並んでいる。
レオンと俺も、シンの指示通りの列の最後尾についた。
……まるで、学校の朝礼風景だな。……
「ユーキは、このように隊列を組んだ事はないのであろうな?」
レオンの問いかけに、
「……あると思う。」
そう答えた。
「お前達の国では、兵役がなく自由だと聞いたが、皆で心を一つにし、隊列を組む事もあったのか?」
……心を一つ…には多分していなかったが。……
「多分、学校で……。」
「がっこうとはなんだ?」
「う〜ん、子供の頃から、ある程度大きくなる迄、教育を受ける所…かな…。」
「教育か!それならば我が祖国でも臣民に施しておったぞ。」
((レオンの国の教育……軍事訓練か……))
「それだけではない。学問も、だ。
優秀な兵士になる為には、知識と、それを活かす知能がなければならぬ。」
……言われてみれば尤もな話だ。……
「あぁ、そうだな。失礼した。」
「だが、何故お前達は、隊列を組んだのだ?兵士になる訳ではあるまいに…。」
……何故?…何故だろう。
子供の頃から『前へ倣え!』『起立、礼!』等の掛け声で集団行動をやらされていたような気がする。……まるで戦時下の軍隊のように。……
《他人と同じなら安心だ。お前『俺』はそうやって、育った。》
また心の中で誰かが囁く。
「…なんでだろうな…。」
そう言いながら横を見ると、隣の列がいなくなっていた。
レオンと話をしている間にも、次々と他の列は姿を消していたようだ。
シンはまだ姿を現さない。
「レオン、列ごとにいなくなっていく気がするが……シンが来ない内に動いたらどうするんだ?」
「その、心配はいらぬ。まだ隊員が揃っておらぬ。
加えて、シンは、我が隊の隊長であるからな。
隊長命令がなくば、隊は動かぬ。」
「……えっ?今回の研修は3人で行うんじゃないのか?」
「無論、3人ではない。バディー3組と監督官の7名で一つの隊だ。」
((……物思いに耽り、肝心な所を読み飛ばしていたか……いや、マニュアルには簡潔な説明しかなかった。))
「マニュアルには、そんな説明あったか?」
「……なかったな。だが、前回は7名で出陣した。」
「……違うチームのバディーが来るのか?」
「うむ。いわば、一時同盟を組むという事だな。」
……違うチームの人間に会うのは、初めてだ。
お互いライバルとも言える。……
「誰が来ても、我らは引けをとらぬ。そうであろう?ユーキ。」
俺の心を見透かしたようにレオンは言った。
「……そうだな。」
「待たせたな。」
シンの声がした。
顔を上げると、シンの後ろには、2人の全身黒タイツがいた。
2人とも、レオン程ではないが鍛えられた体躯をしている。
彼らは俺達の後ろに並んだ。
「これで揃った。では、最初に点呼をとる。」
「アイラ!」 「はい!」
「ロビン!」 「はい!」
前から返事が聞こえた。
……先客がいたのか。……
「ユーキ!」 「…はい!」
「レオン!」 「うむ!」
「ジェイ!」 「おぅ!」
「ロイド!」 「はい!」
「よろしい、それでは各人の役割について発表する。」
……シンに、先程迄の親しげな様子は微塵もない。完全に『隊長』に成り切っている。
「まず、見張りだが…アイラとユーキ。」
「はい!」
「はい!」
「確保はレオンとジェイ。」
「うむ!」
「おぅ!」
「そして、機械担当はロビンとロイド。」
「はい!」
「はい!」
シンは2人に手の平に乗る程の小さい機械を渡すと、力強く宣言した。
「任務に失敗は許されない!各自、心するように!
それでは、これよりミッションを開始する!」
シンに先導され、俺達はホールの先にある扉の一つに入った。
扉の中には、丸い床の部分があり、壁にはモニターが嵌め込まれていた。
意外に狭い。7人で立ち、少し余裕がある位の小部屋だ。
「このモニターに、探索室が探し当てた、色付の魂の居場所が映っている。」
画面右上には『793/ENGLAND/No.004123794………』の表示があった。
地図上で見ると、イギリスの北部の島辺りにオレンジ色の点がある。
「それでは、転送する。全員中央の床に乗れ。」
シンの指示で全員が中央に集まった。
モニターの下にある機械を外し、シンがその機械のスイッチを押した………
途端、上へ身体が引っ張られる感覚がし、続いて浮遊感を覚えた。
瞬間、周りの景色が一変した。
海に囲まれた小さな島の空中に、俺達は浮いていた。
中央に修道院らしき建物が見える。
(((それでは、それぞれ惹かれる人間に入れ。)))
シンの声が頭に響く。
相性の良い人間……判断せずとも自然に惹かれる筈だ。
俺…いや全員、島にある建物へと吸い込まれていく。
建物の外には人の気配がない。
建物内部に入った。
何かに引き寄せられる感覚…この先に俺の宿主がいる…そう確信した。
しかし、途中でその感覚が途絶えた。
((シン、引き寄せられる感覚がなくなりました!))
(((シン、私もです!)))
(((我もだ!)))
俺以外にも続々とシンへの訴えが続く。
(((……今回のミッションは…撤退せざるを得ない……来てみろ……)))
シンの存在する場所を感じ取って移動し、扉をすり抜けて部屋へ入ると……
そこには殺戮の光景が繰り広げられていた。




