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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ レオン ※
28/86

【27】※ Practical training(実技研修) part6 ※


……しかし、『救助隊』と聞いた時は、特殊部隊か!と嫌な気分になったが……



俺はマニュアルを読みながら、そう思った。

今回の仕事は、純粋に救助だ。消滅させる=殺すのではない。

まだ侵食が進んでいない、魂を救うのだ。



……『殺す』……あの時、俺は叫んでいた。

「殺せ!」と……



忘れていた訳ではない。敢えて思い出したくはなかった。


熱気に包まれたあの場所では、実際に肉体があったように感じられた。

顔に当った冷たい風、怒りによる身体の火照り、男に殴られた時の痛み…全て、ここに来る以前に持っていたであろう五感が感じた物だ。

あれは夢ではない。



「ユーキ、どうした?呆けているぞ。何かわからぬか?」



「…いや、大丈夫だよ。」



マニュアルには『救助隊はその世界の人間に一時的に憑依する』とある。

実際に憑依したら、あの時の事が少しはわかるかもしれない。



Case【オレンジ、赤】


①救助隊は『探索室』が発見した色付の魂がいるパラレルワールドに渡る。


②その世界の人間に憑依する。(一時的に憑依する人間は、なるべく弊害が出ないように、相性の良い者とする。)


③色付の魂を持つ人間を確保する。


④小型吸魂機で魂を吸う。


⑤小型分離機で魂を分ける。


⑥本来の魂を人間に戻す。


⑦一時的に憑依した人間から離れる。


⑧時空を渡り『救助隊室』へ帰還する。


⑨持ち帰った魂を『浄化室』へ送る。


(※)全て速やかに行う事。確保に手間取る時は、一時撤退し再び②からやり直す事。



Case【黄】


上記と同

但し、③⑤⑥の手順を除く。



マニュアルの説明事項は簡潔だった。

他部署と同様、今迄の事例も膨大な桁数とともに記載があったが、どれも同じような流れで任務は完了していた。



……『吸魂機』……その文字が目に焼き付いた。

……トーマが入社式に『あぁ、吸魂機に吸われたのか…』と言っていたような気がする。

『街をフラフラしている時に、掃除機のような物に吸われた』それが俺に関する記憶の全てだ。


……吸魂機だとしたら、何故、俺は吸われたのだろうか?……



「うむ、途中迄は前回と同じだな。」



「……そうか。……」



「④迄は同じだ。そもそも持っていく機械の種類が違う。」



「……そうか……。」



「前回は、分離機ではなかった。」



「……そうか……。」



「……どうした?やはり、悄然としておるぞ。しっかりせいっ!!」



レオンに背中を叩かれ、ハッとした。



「…すまない。少し考え事をしていた。」



「お前は頭がデカいな。」



「…?…デカい?」



「あぁ、頭ばかり使い、身体を鍛えぬから、頭がデカい。」



……『頭でっかち』という意味か?……



「まぁ、そう言われても仕方がないか……。」



「そうであろう。己の知恵等、底が知れている。

実際に身体を動かし、仲間の助言に耳を傾け、どのように判断すべきか、改めて考える。

己の頭の中だけで、あれこれ考えても埒があかんぞ。」



……レオンは、きっとそうやって国を治めていたのだろう。……



「そうだな。ありがとう、レオン。」



「うむ。」





「そろそろ、いいだろうか?」



暗闇の中から声がした。

ヌッと姿を現したのはシンだった。



「何か、質問があれば、答えよう。」



「②の(一時的に憑依する人間は相性の良い者とする)ですが…。

相性の良し悪しはどのように判断するのですか?」



「判断は特にはしない。

相性の良い人間に、魂は勝手に惹かれる。

だが、ごく稀にだが、近くにそのような人間が全くいない場合もある。

その場合は、魂のまま活動をせねばならない。」



「魂のまま……出来るんですか?」



「……補助的な役割は果たせる。

俺達は、会社を離れると一般の魂と同じように、自己防衛本能が働き、憑依先を求めがちだ。

故に、いなかった場合、惹かれもしない人間に、憑依をしたくなる。

だが、決して憑依してはならない。

一瞬で双方の魂に疲労が溜まる。」



……魂の疲労……『ミイラ取りがミイラになる』になりかねないという事か……



「強靭な精神力が求められる現場である。ユーキも覚悟せよ!」



レオンが、再び俺の背中を叩きながら言った。……気合でも入れてくれているのだろうか?



「そもそも、相性が良くとも、自分の身体でない以上、長居は危険だ。

だから、迅速に事が運ばなかった場合、②からやり直す。」



「わかりました。」



「研修生には、私も同行する。

それほど心配する必要はないぞ。レオンもいるしな。」



「うむ。」

「心強いです。」



レオンと俺は制服に着替えた……というか、黒い布を被った。

『案内人室』の制服とは違い、全身黒だが、顔だけは見える。

『全身タイツ』状のピッタリした素材で、これまた『案内人室』のユッタリした物とは違った。



((ターゲットに忍び寄るには、やはり黒、アクティブな任務だから、動きやすいピッタリした物がいいのか……))



「半分正解だな。

黒の制服は、探索室のモニターに余計な魂が映らない為だ。

ユーキは探索室の研修を終えただろう?」



「そうでした。失念してました。」



「ユーキは素直だな。」



「そうであろう。我も今回バディーを組んで、ユーキの人となりを知った。

鍛え甲斐のある男である。」



「…いや、レオンに鍛えられるのは、ちょっと……。」



「はっ、はっ!確かに…俺でも御免蒙りたい……。」



シンは大声で笑った後、急に表情を引き締めて言った。



「行くぞ!!」



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