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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ レオン ※
27/86

【26】※ Practical training(実技研修) part5 ※


レオンと俺は次の研修先『救助隊室』へ向かっていた。



「レオンは前回も『救助隊室』だったな?…同じ部署に2回連続というのは、珍しくないのかな?」



((ライラック達も『案内人室』の研修を2度連続でやっていたし…。))



……ただ、ライラックの『案内人室』マニュアルによると、案内する先が『本人の過去』ではなく、『異世界』という点で、異なっていたが。……



「うむ、わからんが、我らの活躍が、認められての事かもしれんな。」



……レオンやニモならば、確かに憑依された魂が宿る身体を、力尽くで取り押さえる事は、容易だったかもしれない。……



そんな事を思い、つい聞いてしまった。



「レオンは…戦士だったのか?」



……しまった!…また話が長くなりそうだ。……



「うむ、そうだな…ラケダイモンの戦士だ。君主でもあった。

だが、侵略者に敗れ、臣民を辛い目に合わせてしまった。

だから、我はここに来た。」



……ラケダイモン…?…

レオンは敗戦し、それをやり直す為にここに来たのか?…



皆、なんらかの目的を持ってここに来た。……俺以外は……。



「お前の国の『せいじか』という者達は、国の危機に臣民を従え、戦う覚悟はあるのか?」



「えっ…いや、恐らくそういう覚悟はないだろう。戦争をしないように外交的努力はするだろうが…。

それに政治家は度々入れ替わる。」



頭の中に与党と野党の論戦…あまり実りの無さそうなやり取りが浮かんできた。



「では誰が、有事に臣民を束ねるのだ?」



「…国の防衛は、金を払って他国に任せ、国民はそれに疑問も抱かない。

他国からの攻撃に迎撃出来る兵器は備えているが、もし本格的な戦いになった時、戦える訓練を受けている者は少ない。

徴兵制も無くなったからな。

国民は皆、永遠の平和を信じて、それぞれ自由に生きている。束ねる者はいないに等しい。」



……自虐だな。……実際、俺もそうだったと思う。

それに、もし今度、世界大戦が起きたら、多分最終的には、核戦争になるだろう。

日本は、抑止力となる核兵器も持たない。……



「皆、それぞれの方向を向き、束ねる者がいないのか。

…それは大変な事であろう。」



「大変?何がだ?」



「自由という事は、それぞれ自分で己の道を切り開かねばなるまい。

強い指導者がいるという事は、ある意味、楽な道ではある。」



「………。」



言っている事はわかるが、素直に肯定はできなかった。

強い1人の指導者≒恐怖政治になりがち…そんなイメージがある。



「ではお前の国では一人一人が君主であるのだな。だが、各々が別の考えを持てば、いざという時、国は乱れる。」



……『船頭多くして船山に上る』そんな諺があった…

いざとなったら?…政府はモメるだろう。総理大臣や防衛大臣は、国民を束ねて国を守れるのだろうか?……

有事ではないから、有事になる事を想像もしていないから…そんな事を考えた事もなかった。…



「レオンはここから解放されたら、どうするのか決めているのか?」



俺はいい加減、自分の国の不甲斐なさ……いや、国や戦の話から解放されたくて、そんな質問をした。



「うむ、我は己の時空に帰り、再び祖国を守る為に戦う。」



彼は迷う事なく、即答した。





『救助隊室』の入口に着いた。



「お忙しいところ、すみません。研修で参りました。識別番号9793519307、9793519314、以上2名、宜しくお願いします。」



俺は扉の向こうに声をかけた。



………………反応がない。



「そのような、か細い声では聞こえん。」



『頼もう!!研修で参った!!扉を開けて貰えぬか!!!』



耳を押さえたくなるような大声で、レオンは言った。



程なく扉が開き、中からレオンにも引けをとらぬ程の、筋肉質の大柄な男が出てきた。



「おぉ、レオン!また来たか!

ニモはどうした?」



「シン、前回は世話になった。

ニモは別の研修先だ。今回は、このユーキが同行しておる。」



すると、黒い服を着た筋肉質の大男…シンは、無言で、俺の頭から足元迄ジロジロと眺めた。

……(デジャブ)……



体格に恵まれた者は皆、こういう反応をするのだろうか?



……はい、はい、貧弱で悪かったよ!……



心の中で悪態をつきながらも、俺は先程と同じ挨拶をした。



「お忙しいところ、すみません。研修で参りました。識別番号9793519307、9793519314、以上2名、宜しくお願いします。」



「あぁ、丁寧な挨拶をありがとう。

俺はシン、ここの監督官だ。よろしくな。」



シンはそう言うと、俺達を室内に招き入れた。



室内は暗い。

そして、多数の人々が動いている気配がする。が、目を凝らしても、個々の姿を確認する事は出来なかった。

案内人室では、白い人々が蠢いていて、生理的嫌悪感を覚えたが、ここは、別の意味で不気味だった。



「ここでの研修は、レオンはもう経験済みだが、今回は少し内容が違う。」



「違う?何がだ?」



レオンは監督官に対してもタメ口だ。



「前回は特殊部隊として、抹殺任務で活躍して貰った。

だが、今回は憑依した魂を引き剥がし、保護する仕事になる。」



「うむ。」



「ユーキは初めてだから、マニュアルが必要だな。」



シンはそう言って、俺にマニュアルと、黒い布を渡してきた。



「……これは、ここでの制服ですか?」



「そうだ。それを着て任務にあたる。」



……着る。……被るんだな。……



「今回の任務は抹殺ではないが、憑依された人間の確保は必要だ。

荒事になる事もあるが、ユーキは大丈夫か?」



……大丈夫も何も、やらなければ研修がクリア出来ない。……



「はい、頑張ります。」



「なぁに、我が付いて行くのだ。心配はいらぬ。」



レオンが力強く言うと、シンは頷いた。



「とりあえず、二人ともマニュアルに目を通してくれ。

救助隊…本来の救助方法の流れを覚えてくれ。

その後で質問を受け付けよう。」



「うむ。」

「はい、よろしくお願いします。」



「では、読み終わったら声をかけてくれ。」



シンはそう言うと、部屋の奥、暗い室内に同化していった。



【あとがき雑学】


『船頭多くして船山に上る』

(せんどうおおくしてふねやまへのぼる)


意味︰

大きな船(和船)に、大勢の船頭(船長)がいると、指図をする人間が多過ぎて、意見が一つに纏まらず、船が山に上ってしまうような訳のわからない事が起きる。

指揮する人間が多いと、物事は統制がとれず、思わぬ結果になってしまう。


英語にも同じような意味を持つ格言があるそうです。


Too many cooks spoil the broth.(コックが多すぎるとスープがうまくできない)


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