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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ アンリ ※
25/86

【24】※ confusion(混濁) ※


身体が熱い……



時折、寒風が顔に当たるが、少しも寒くはない。

俺の周りは人で埋め尽くされている。



……入社式…か?……



いや、違う。

周りの異様な熱気に加え、俺自身の身体も燃えるように熱い。



……なんだろう…身体の底からどす黒い感情が吹き出してくる。


……………………………………………。


………俺は『俺』を忘れた。



「殺せ!殺せ!殺せ!」



不穏なシュプレヒコール…

聞こえてきた声の波に乗り、俺も自然と声を上げた。



「殺せ!殺せ!殺せ!」



『憎い』『嫉ましい』『恨めしい』……次々と湧き上がる負の感情に、俺達の怒りはピークに達した。



誰かが、罪人に石を投げた。すると追随する者が続出し、無数の石礫が空を飛び、罪人や執行人、断頭台に次々にあたり、跳ね返る。



「よさんかっ!!被処刑人への暴行は罪にあたるぞ。

止めねば逮捕する!!」



そんな声が聞こえたが、誰も止める者はいない。

熱にうかされたように、皆、足元の石を拾っては投げ続ける。

俺も止めなかった。



そして…いよいよ執行の時がきた。

柱の間に、目隠しをされた罪人が、うつ伏せに寝かされた。



投石やシュプレヒコールは、ピタリと止み、期待に満ちた静寂が訪れた。



そして……

落下してきた刃が、被処刑人の首を切断した。

瞬間、広場中に歓声が湧き上がった。

冷たい外気の中、人々の熱気で湯気が立ち昇っている。

抱き合って喜んでいる者達もいる。



死刑執行人が、落とされた首から目隠しをとり、無造作に髪を掴んで持ち上げた。大量の血がボタボタと滴っている。

周りの群衆に、見せつけるように首を掲げた。



「わ〜っ!!」



歓声が一段と大きくなった。

俺も声を張り上げていた。



「しかし呆気ないな。あいつは、ギロチンで楽に死なせるより、八つ裂きの刑が相応しかった。」



「国王や、金持ち達は、俺達民衆を虐げてきた。当然の報いだ。

俺達の痛みを知り、苦しみながらジワジワと死ぬべきだったんだ。」



誰かが言った言葉に俺も賛同した。



「その通りだ。あんな圧政を敷いた国王は、八つ裂きの刑が相当だろう。ギロチンでは物足りない。」



そう言って、再び断頭台に視線を向けた俺は、そこに首を掲げる執行人の姿を見た。



彼は職務として、その役割を粛々と進めたが、今は泣きそうな、苦しそうな、切ない表情をして、微動だにしない。



不意に、怒りや憎しみの感情が薄れ、代わりに別の感情が溢れ出てきた。

それは『悲しみ』『虚しさ』『哀れみ』……



俺の瞳から涙が溢れてきた。



「…おい、こいつ泣いてやがる。

俺達に賛同するふりをしていただけか!?

実は、王政擁護派か!?貴様っ!!」



処刑の興奮冷めやらぬ男は、いきなり俺の顔面を殴りつけた。



「やめろよ。揉め事起こすと逮捕されるぞ。そんなヤツ放っておけ。」



広場から離れる、人の群れに押されながらも、俺は流れる涙と鼻血を拭いもせず、その場に佇んでいた。

死刑執行人から目が離せなかった。



彼は、先程迄無造作にぶら下げていた首を、押し頂いた。

そして、用意されていた箱の中に丁寧に、その首を収めた。



痛々しい程、彼の姿は憔悴しているように見えた。



ふと、執行人が、こちらに視線を向けた。



…………!!……アンリ!!!………



……俺は『俺』を思い出した。



……崇拝する国王の首を、自ら落とし、髪を掴み、群衆に見えるようにその首を晒す…その行為に伴う苦痛は如何ほどのものか。……

……アンリ……アンリ、今のお前は、俺には計り知れない程の、哀しみに満ちているのだろう。……



俺はアンリを見つめたまま、声をかける事も出来ず、立ち尽くしていた。



「……何故……」



……?……



「……何故……お前は……」



……何か聞こえる?……



「……何故…ここにいる……」



……誰かの声がする。……



「……何故……何度も苦しめる……」



……アンリの声か?……



『……お前は…何者…なんだ!?…』



目をカッと見開き、唇を動かしている……

はっきりと聞き取れた声は、切断された首から発せられたものだった。






「うわ〜っっ!!」



俺は自分の叫び声で、意識を取り戻した。



「ユーキ、大丈夫か?」



目を開けると間近にアンリの顔があった。



「………大丈夫だ……。」



「急に倒れたので、心配した。だが、すぐに意識を取り戻してくれて良かった。」



「……すぐにか?」



「あぁ、ほんの数分といったところだな。」



周りを見るとサミー以外全員が、俺を見ている。



……今のは、何だったんだろう?……



「…悪い。…報告会中断させちゃったみたいだな。」



「中断という程の間ではない。

それよりユーキ、どうした?大丈夫か?」



マイケルの問いかけに



「…いや、なんか…悪い夢を見たようだ。」



……あれは、夢ではない。……



そう思いながらも、そう答えた。



……あれは、夢なんかじゃない。実際の体験としか思えない。……



「魂が夢なんぞ見るかよ。」



トーマがいつになく、冷たい声色で、ぼそっと言った。



………トーマ……?……



「まぁ、ユーキも大丈夫なようですし、次はバディーの話し合いですね。」



……もうバディーの発表があったのか。……



ハルの言葉に、そう思いながら掲示板を見た。



そこには、既に次のバディー組みと行き先が表示されていた。




【あとがき雑学】


『押し頂く・押し戴く』(おしいただく)


①物を恭しく顔の前面の上方にささげ持つ事。

②その人を敬って組織の長として迎える事。


自分としては

①の意味は知っていました。

「賞状を押し戴く」等…

②の使い方は馴染みがありませんでした。


一つの言い方でも、色々な意味を持つ。やはり日本語は、世界でも理解するのが難しい言語の一つなのでしょう。


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