【23】※ information exchange(情報交換会)part2 ※
「出来る訳がない。」
サミーは平然とした態度で言い返した。
「………。」
「俺を排除したら、確実にこのチームの点数は最下位に近づくぞ。チームは10人でなければならない。
1人抜ける事のリスクは、お前もよく知っている事だろう。」
……サミーは、それを知っているから、強気でいられるのか。……
「なぁ、お前ら、『消滅』と『俺との共存』、どちらを選ぶ?」
「………。」
誰も何も言わなかった。
「消滅なんざ、望んじゃいねえよな。
どいつもこいつも、転生や、合法的転移等、望む行き先があるんだろ。…なら、俺との…」
……望む行き先…退社後の未来……
「俺は望む行き先などない。」
「…『Oblivion』か…。」
もはや、ユーキとも呼ばないサミーに、俺は冷静に向かい合った。
不思議と騙された事への怒りは湧かなかった。
「あぁ、その通りだ。俺は『忘却』だ。何故ここに来たのか、自分が誰なのか、わからない。
だから例え、点数を積み上げて、めでたく退社となったとしても、行き先など選べない。望みがないからな。」
「…ほぅ、ならば何故お前は研修に参加する?」
「俺は、チームの皆が消滅するのが嫌だ。」
「これは、これは…マイケルと同じ、博愛主義者か。反吐が出る!」
「サミー、反対に聞こう。何故お前は研修に参加する?」
「……お前らみたいな阿呆が、俺の思惑通り、猜疑心で転がる様を見るのが好きだからだ。
お前らは俺の玩具のようなもんだ。」
「嘘だな。」
「!?」
「お前にだって、望む行き先があるからだろうが。
でなければ、俺のような『Oblivion』でもないお前が、ここにいる筈がないからな。」
「………。」
「だったら、素直に協力しろ!ガキじゃないんだから、大概にしろよ。」
「………遊び甲斐のありそうな玩具だな、お前は。」
「勝手に言ってろ!」
俺はサミーに啖呵を切った後、他のメンバーに向けて言った。
「情報交換会を始めよう。」
前回と同様、バディーを組んだ者同士、隣り合わせで10人でグルリと丸くなって座った。
だがライラックは、サミーの隣ではなく、フィンとトーマの間にいる。
……なんだか、色々が馬鹿らしく思えてきた。俺は一体何に怯える必要があったのだろう。……
先程のサミーとのやり取りの中で、俺は他のメンバーとの違いを再認識した。
……俺には、ここでの望みなどない。……
今は、魂の消滅、それも然程恐ろしい事とは思えない。
知識だけはあるが、自分が何者かわからず、この世界で流されているだけだ。…転生転移に何の望みも抱いていない。
魂には自己防衛本能があると聞いたが、今の自分は、このまま消え失せる事に躊躇いはない。
……だが、他のメンバーにはそれぞれ事情があるのだろう。……
アンリには、生前の話を聞いたが、退社後の望む行き先迄は聞いていない。それでも、彼の望みが叶えばいい、と思う。
「一通りマニュアルには全員目を通したな。それでは、各バディー毎に、簡単な説明をしてもらおう。」
マイケルはそう言って、俺とアンリを見た。
「ユーキ、お願い出来るか?私では『しすてむ』を説明出来ない。」
おそらく、アンリと同じように、説明しても理解出来ない者もいるだろう。なので、簡単な話をした。
「探索は、各パラレルワールドに現れる普通ではない魂を、探す作業が主だった。
見慣れない機械の操作もあるとは思うが、監督官のケイが、親切に指導してくれるから、心配はない。」
マイケルは頷き、次にレオンとニモを指名した。
「我らは戦場で戦った。当然、我々は勝利を収めた。」
「………ニモ、説明を頼む。」
マイケルが困ったようにニモを見た。
「俺達は、魂を葬った。指示されたパラレルワールドの場所へ転移し、その世界の人間に一時的に憑依し、禍々しいオーラを放つ魂を見つけ出し、消滅させた。」
……救助隊特殊部隊、マニュアルにもあったが、一時的とはいえ『憑依』するのか……
隣のアンリは、顔を顰めている。
「トーマ、フィン。」
「俺らは、事務処理だ。各支部からの要請書やら、系列会社からの嘆願書やら、それらの区分け、整理だな。本当なら、その後『すきゃなー』とかいうもんに、入れるらしいが、やらせてもらえなかった。」
「…サミー。」
マイケルは、極めて不愉快といった顔でサミーに声をかけた。
「…そんなもん、マニュアル見りゃわかるだろ。いちいち説明出来るかよ。」
「決まり事だ。」
「何がだ?…大体、なんでいつもお前が、偉そうに取り仕切っているんだ?」
「…では、お前がやるか?」
「誰がやるかよ!こんな下らない集まり…」
「でしたら、口を慎んだ方が良いですよ。サミー。」
ハルが静かに窘めた。
「ちっ、どいつもこいつも…。」
サミーは、顔を歪めた。
そして、隣にいるトーマも苦々しげな表情をしている…。
……トーマ?……
「俺と…その馬鹿女は…」
「サミーっ!!」
マイケルが叱責するのと同時に、またライラックの啜り泣く声がした。
「ふん、ともかく前と同じだよ。『案内人室』だ。これでいいだろ。」
マイケルは憤懣遣る方無い、といった様子だったが
「私とハルは『再生課』だ。
退社する魂の手続きに従事した。書類作成、チェック、退社後の希望先への案内、等だ。」
そう、簡単に説明を終えた。
……再生課…
そこへ行って、望む世界への転移転生をする事が、皆の最終目標だ。だが、俺には関係のない部署だろう。……
そう思いながら、アンリを見た。…彼は、何を望んでいるのだろう。
「…………!!」
アンリが俺を見て、何か言っている。
……そんなに慌てて…どう…した…ん…だ?……ア…ン…リ………………
目の前が暗い……
意識が遠のく……
暗い空間を落下している浮遊感…
そして、完全に俺の意識、視界は闇に埋もれた……




