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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ アンリ ※
23/86

【22】※ Dissonance(不協和音) ※


異様な空気感の中、マイケルが口を開いた。



「…その前に…サミー、お前、ライラックに何をした!?」



マイケルが険しい顔でサミーを睨みつけている。



「何も()()ないさ。」



サミーは肩を竦めて即座に言い返した。



「では、何故ライラックは、このような状態なのだ!?」



「俺が知るかよ、直接本人に聞けよ。」



「……………。」



ライラックは相変わらず一言も喋らない。



近くにいたアンリと目が合った。微かに頷くアンリに俺も応じた。

……勿論、サミーが原因だろう……



「……くだらん。早く情報交換をすべきだ。次の研修はすぐだ。

我々は一時的には同士だが、仲間ではない。己の事は己で解決すればいい。」



驚いた事に、いつもは口数が少ないニモがそう言った。



「ニモ!?お前は…何を言っているんだ……。」



マイケルが呆けたように言うと



「……だそうだ。皆、お前程お人好しじゃないみたいだぜ。」



サミーは片頬を上げて皮肉げに微笑んだ。



「一時的な同士…確かに。

だが、今はチームの能力が問われているのだ。謂わば運命共同体、軍隊とも言える。

それぞれは一人の兵士だが、軍としての統率を欠くことがあるのであれば、その原因は糾明せねばなるまい。

些末な事でも放っておけば、全軍が滅ぶ事もある。であるならば、原因を探し、潰す事も必要であろう。

この場にいる全員が、死力を尽くしてこそ、堅牢な砦をも落とせるというものだ。」



戦いに擬えた、長々としたレオンの演説に、アンリが顔を顰めている。



「『千丈の堤も蟻穴より崩るる』ですね。あなたの仰る事も、もっともです。

ですが、ここでサミーやライラックに、事の次第を聞き出すのは難しそうです。

ならば、情報交換の場で、マニュアルに目を通せば、事の顛末もわかるのでは?」



ハルはそう言ったが



「それでわかった気になれるのは、『聡明な』お前くらいだろうよ。俺ら凡人にはわかるまい。」



トーマが皮肉な笑みを浮かべて一蹴した。



……なんだ?このやり取りは?…この場の不穏な雰囲気は?…



それぞれがバラバラの方向を向いている。

トーマですら、棘のある言葉を吐いている。



……トーマがトーマではなくなっている……



俺は、気持ちが沈み込んでいくのを感じていた。





「やめよ。ねぇ、みんな仲良くしなきゃダメだよ。」



少女の愛らしい声がその場に響いた。



「サミーは、みんなに『ごめんなさい』しよう。

ライラックもみんなを信じよう。

誰もそんな事思ってないよ。大丈夫だからね。」



……誰もそんな事思っていない?…フィンは何を言っているんだ?……



フィンは、ライラックの傍に寄り、頭を撫でた。



「………うっ、うっ、うわ〜んっ!!」



ライラックが突然、泣き出した。



「サ、サミーが……」



……やはり、サミーか。……



「…サミーが、わ、私はここにいるべき、た、魂じゃないって…、わ、私は…人間じゃないって…、み、皆は…お、お前を、め、迷惑なお荷物だと……お前の事を…か、怪物だと思っているって……うっ、うわ〜んっ!!………。」



「サミーっ!!」



マイケルが声を荒げた。



「やはりお前の仕業じゃないか!!」



「お前は何か()()か?と言った。俺は何も()()ないさ。()()嘘は言っていない。心の声で()()()だけだ。」



「貴様というヤツは!!」



だが、サミーはマイケルの怒号を無視し、フィンに言った。



「お嬢ちゃん、なかなかやるじゃないか。実際に言葉は発していない、心の声だ。その場にいなかったのに、よくわかったな。」



「…わかるよ。お友達が教えてくれるもん。」



「…お友達だと?…まぁいい。」



サミーはそう言うと、俺とアンリを、怪しく光る紅い瞳で睨め付けた。



「お前達も、もう気づいているんだろ?」



((あぁ、気づいているよ。俺もアンリも…お前が俺達を騙していた事は…))



「お前達がバディー組んだ時点で、こりゃバレるのも、時間の問題だと思っていたぜ。意外に早かったな。」



サミーは薄ら笑いを浮かべている。



「何故、一貫性のない出鱈目な嘘で、私達を騙した?」



アンリは、感情を押し殺した静かな声を発した。



「何故って…そりゃ、『面白い』からに決まっているじゃないか。」



サミーは、さも当たり前の事のように言い放った。



「…お前は……人の感情を弄んで、何が面白い!!」



アンリの白い肌は怒りで真っ赤になっている。



「俺はキッカケを与えただけだ。まぁ、話は盛ったがな。乗ってきたのはお前らの勝手だろ。」



サミーは冷たい笑みを浮かべたまま、続けて言った。



「友情だ、友愛だ…そんな物は上辺だけの物に過ぎない。俺の口車に乗って、信じる物を見失った。

お前らは結局、俺の誘惑に負けたんだ。実に()()()()()じゃないか。」



「……サミー、貴様はこのチームの和を乱し、メンバーを裏切った。覚悟は出来ているんだろうな…。」



マイケルは怒りを抑えた低い声で、サミーに言った。



「チームの和ねぇ…。先程のあのバラバラ状態を称して『和』と言うのか…笑えるね。

皆、自身の願望の為、仕方なく協力しているだけだろう?」



「…貴様を排除する!!」



怒りに燃える眼差しでサミーを見据え、マイケルはそう言い切った。



【あとがき雑学】


『千丈の堤も蟻穴より崩るる』

(せんじょうのつづみもぎけつよりくずるる)


〈類語〉

・千里の堤も蟻の穴から

・江河の大潰も蟻穴よりす

・蟻の穴から堤も崩れる

・蟻の一穴天下の破れ  等々


千丈=一丈(3m)✕1000=3000m

堤=溢水を防止する為、湖、沼、川・、池などの岸に沿って土を高く盛り上げた土手。堤防の事。


〈意味〉

ほんのわずかな不注意や油断から、大きな失敗や損害に至るという事。

(蟻が堤防に作った小さな穴でも、放置すれば段々大きくなり、ついには大きく頑丈な堤防を崩してしまうことがあるという事から)


(ことわざ)は、古くからあり、教訓、憂さ晴らし、時には諷刺として伝わりました。

古い時代からの物も、近年になってからできた物もあります。

いずれにしても、人々が好んで使ってきた物は残り、あまり使われなかった諺は忘れられてきたということでしょう。


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