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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ アンリ ※
22/86

【21】※ unnatural(違和感) ※


「お互い、何も知らぬ事にしよう。」



アンリはそう言った。



「あぁ、サミーには悟られないように、そしてあの雰囲気に決して呑まれないように、気をつけよう。」



何か企んでいるのは事実だ。

また、他にもサミーに傾倒している者がいるかもしれない。

俺とアンリは、嘘を信じた振りをしたまま、反対にサミーの動向を探り、他に洗脳を受けたメンバーがいないか、探す事を約束した。



…だが…マイケルやハルへの疑惑はほぼ解けたが、…トーマについては、俺の中で納得がいかない部分がまだあった。



サミーに唆される前から、違和感を感じていた。



……まぁ、それを餌にまんまとサミーに騙されたんだが……俺はトーマをまだ疑っている……





「早いな!我らが最初の帰還かと思ったのだが……。」



大きな声がして、振り向くとレオンとニモが立っていた。



「帰還って…戦場に行った訳でもないだろうに…。」



「…なんだ?…行ったぞ。あれは血沸き肉踊る、まさに戦場そのものであった。なぁ、ニモ。」



一緒にいるニモは無言だ。



レオンが俺の元に寄ってきた。



「ふ〜む、お前は貧弱だな。まだ兵卒といったところか。」



……兵卒…最弱の兵隊か。……



「そのような身体では、この研修、生き残れんぞ。」



……生き残る?…やはり消滅はあるのか?……



「何も戦場だけが、研修の内容ではない。私は今回ユーキに救われた。

お前では私と同様、『探索室』では点数を取れまい。」



アンリが横から助け船を出してくれたが、レオンはその言葉に反応せず、ターゲットをアンリに変えた。



「お前も貧弱だな。鍛えてやろうか?」



「…遠慮する…。」



アンリはレオンの筋骨隆々といった身体を一瞥して、不快な顔をした。



……『戦という物は人間を人間で無くする』

アンリはおそらく、レオンのようなタイプは好かないのだろう。……





それから暫くして、続々とメンバーが帰ってきた。



フィン、トーマ、マイケル、ハル。



だが、なかなかライラックとサミーのバディーが帰ってこない。



……サミーの奴、今度はライラックに何か吹き込んでいるのか?……



「ユーキ、研修はどうだった?アニキが傍にいなくて寂しかっただろ?」



トーマはいつもの調子で、ニヤけた表情で俺に言った。



……お前への疑念は、まだ晴れていないんだがな……



そう思いながら、俺もいつもの如くトーマに応えた。



「お前の過剰な干渉がなくて、実に身になる研修だった。」



「まっ、ユーキくんたら……やっぱり反抗期ね!…」



「はいはい、お母さんは悲しいんだろ!」



「人のセリフとるなよ〜(泣)…ぷふっ(笑)……ユーキもだいぶ成長したな。」



((どういう意味で、成長したとか思うんだ。泣くか笑うか、どっちかにしろよ…トーマは本当に顔芸得意だよな…。))



「お褒めに預かり、光栄の至り!…まぁ、冗談はともかく、本当の意味で少しは成長したみたいだな。」



トーマは微笑みながら、俺に言った。



……アンリの気持ちがよくわかる。

俺は、このままのトーマが好きなのだ。もし、裏の顔がある事がわかったら、俺は絶望感に襲われるだろう。

だが、まだトーマに対する疑念が払えず、ヤツの嘘を探る事を考えている。それは『そうではない』確証を得る為だが、なんと虚しい事か……


問い質せばいい…いや、直球で聞く事が恐い。……だが疑う事をやめられない。……


《お前…俺はいつもそうだ》

心の中でまた誰かが呟く。



「トーマとユーキは、相変わらず仲が良いな。」



「仲がいい?…やめてくれよ、マイケル。」



「まぁ、マイケルちゃん、わかっているじゃないの。二人は運命の糸で結ばれているの!(笑)」



「………?」



マイケルは、トーマの冗談を真に受け、呆気にとられた顔で、俺とトーマの顔を、交互に見比べている。

首を横にブンブンと振って否定する俺の横で、トーマはニヤついている。



「……戯れ言も大概にした方が、身の為ですよ、トーマ。」



横から、ハルが口を挟んだ。



すると、トーマはハルを睨みつけ、無言でふいっと横を向いた。

トーマの纏う雰囲気が、いつもの『陽』ではなく、『陰』に一瞬で変わったように感じられる。



……ハルの言葉の何が、トーマの逆鱗に触れたのだろう?……



『逆鱗』その言葉が相応しい程、トーマから発せられるオーラは怒りに満ちていた。



……俺の知っているトーマではない……





「いや、参ったよ!やっぱり最後か…遅くなって申し訳ない。」



そう言いながら、ようやくサミーが姿を現した。後ろにはライラックが憮然とした顔で立っていた。



サミーはチラッと俺を見て、片目を瞑った。俺は前と同じように微かに頷いてみせた。

そして、アンリにも同じようにウィンクをするのを、今回は見逃さなかった。



「ライラックが、監督官に食って掛かった。事態の収拾に時間がかかっちゃったんだ。」



サミーは、さも大変だったと言わんばかりに、大袈裟なジェスチャーをした。



「…………。」



ライラックは何も言わない。



……明らかにおかしい…ライラックが反論しないなんて。……



「まぁ、研修は俺がなんとか終わらせてきたから、安心してくれ。多分減点にはならない。」



いつもと違う様子に、全員喋っているサミーではなく、ライラックに視線を向けていた。



「…………。」



無言のライラックは、微かに震えている。それは、苛立ちから来るものなのか、恐怖から来るものなのか…。



「……俺達で最後だよな。じゃ、情報交換を始めようぜ。」



サミーは周囲の視線、ライラックの様子に構わず、そう言った。




【あとがき雑学】


『憮然』(ぶぜん)


本来の意味は

「失望し、どうすることもできない、ぼんやりしている様。

意外なことに驚きあきれている様。」

だそうです。


「憮然とした顔」=「怒っている顔、不機嫌な顔」

そのように、長年認識していましたが、本来の意味とは違っていたようです。


しかし最近では、本来誤りである「不機嫌」「不満」という意味で使う、自分のような人も多くなってきた為、こちらの意味を加えている辞書もあるそうです。


今回のライラックの様子は本来の『失望し、茫然とした』の意味で使っています。


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