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ようこそ、異世界コンツェルンへ♪   作者: 三芳(Miyoshi)
※ 異世界ワーキング始動 ※
2/84

【1】※ team(チーム) ※


「お~い、ユーキ!」



お気楽な声が飛んできた。



「ユーキって、誰の事だよ。」



「おまえの事に決まってるじゃないか。わかっているくせに。」



(((ぷふっ)))



ヤツが呼びかけた時から、俺の事だとわかってはいた。



((だが、その命名はなんだ?))



「ユーキくんは、ここに来る前の記憶がない。生死も定かではない。その若さで…可哀想に…ヨヨヨ(泣)」



(((ぷふっ)))



((その若さって…見た目はお前と然程変わらない気がするが…))



ヤツの笑いながらの泣き真似にムカつきながらそう思った。



「よって、幽霊&鬼=幽鬼=ユーキ、という訳だよ。」



どや顔でいうヤツは、「トーマ」という。

太い眉と大きな目が印象的な、ガッシリとした体型の若い男だ。

入社式から馴れ馴れしいヤツだった。



((…にしても、幽霊はともかく、何故鬼がつく?))



「系統oblivion(忘却)、区分コードO、識別コード9793519307くん、なぁんて呼びにくくてかなわん。

おまえが自分の名前を覚えていない以上、ニックネームは俺に任せてもらおう。」



((何故おまえに任せる必要があるんだ?))



口には出さなかったが、心の中でツッコミを入れた。



「そりゃあ、ユーキくんの最初の友人としての義務ってもんだな。」



全く悪びれずに言い放つヤツに、俺は無言を決め込んだ。



「ユーキ、いいんじゃぁなぁい?」



横から口を挟んできたのは、「フィン」と呼ばれている女の子だ。



「名前ないと呼びにくいもの…。」



そもそも魂なので、他人の考えている事は、口に出さずとも相手をみれば、だいたいわかる。

呼びかける行為が必要かどうかは疑問だが…



「お友だちなら、名前呼びあうのって、ステキじゃなぁい?」



フィンは何かホワホワした雰囲気の子だ。

体型も幼女のようで、背中に羽を着けたら、妖精に見えるかもしれない。

全く邪気がない、澄んだ瞳をしている。



((ヤツが『お友だち』?…勘弁してほしいが…))



「…じゃ、ユーキでいいよ。」



「よし、決定な!」



(((無愛想なユーキくんも、可憐なフィンには弱いと…ぷふっ)))



「おまえなぁ…考えてる事聞こえているぞ!」



「おー、くわばら、くわばら…(笑)」



ヤツはおどけながら、その場を立ち去った。





入社式後、識別コード順に、チーム編成が行われ、今はチーム毎に割り当てられた部屋?…空間にいる。



ヤツが言っていた通り、俺とトーマは同じチームに所属する事となった。



((しかし、チームってなんなんだ?))



「まぁ…要するに個体で管理するのが面倒だから、十把一絡げで管理したいという運営の都合だろう…」



ボソッと呟いたのは近くにいた「ニモ」だった。

ニモは顔立ちがはっきりした浅黒い肌をした逞しい男だ。



「とりあえずは研修期間中の同志という事だ。」



寡黙な男のようだが、俺の疑問に応えてくれた。



「説明ありがとう。」



「……うむ。」





俺のチームは10名編成だった。


《teams WIS831322》


〔識別コード〕〔ネーム〕

9793519305  フィン

9793519306  ニモ

9793519307  oblivion(忘却) 

        改→ユーキ

9793519308  マイケル

9793519309  トーマ

9793519310  ハル

9793519311  ライラック

9793519312  アンリ

9793519313  サミー

9793519314  レオン



空間にある掲示板らしき物に文字が浮き出ている。

俺の名前は正式にユーキになったようだ。



……俺以外は最初から名前があった。おそらく皆、ここに来る前の記憶があるのだろう。……



周りの面々をグルリと見回しながら、そんな事を思った。



系統、区分とされている大枠は色々あるようだ。(俺は忘却→oblivion=O)


転生ーⅠ→Reincarnation=R

転生ーⅡ→Reincarnation in another world=RA

転移ーⅠ→Transfer time=TT

転移ーⅡ→Transfer to another world=TA

常世→Sanctuary=S

その他→another world=A


等々…よくわからないが…出自が由来なのか?…



俺は『Oー9793519307』

トーマは確か、Rと言っていた。

『Rー9793519309』

差し詰め、コードネームといったところか。

チームメンバーも、識別番号の前に、それぞれなにかしらのアルファベットがつけられているようだ。



それにしても、魂なのだろうが、皆、実体がある。

おそらく、ここに来る前の姿形…俺もそうなのだろう。



そんな事を考えていたら



「ユーキくんは、どうやら俺と同郷のようだな。」



またヤツの声がした。



「何故そう思うんだ?」



「そりゃあ、似ているだろうが。」



((こんなお調子者に似ているなんて…ふざけるのも大概にしてほしい…。))



「チッチッチ!…誰も内面なんて言ってないぜ、見た目だよ。」



ヤツは指をフリフリ、相変わらずの薄笑いで言った。



「黄色人種…は、時代によっては差別用語か?違うか?…ともかく、見た目は似てると思うぜ。それに俺の言い回しに疑問を抱かない。」



「言い回し?」



「ん~、なんというか、言葉だよ。『くわばら、くわばら』ってわかっただろ?」



((確か…恐い時に使う言葉だった…雷が落ちないように?))



「大正解!菅原道真公だ。」



ヤツは自分の推理に満足したようにニヤリとした。



「初心者のユーキくんは、同郷の大先輩を頼るといい。アニキと呼んでくれてもいいぜ。」



大真面目な顔を装い、俺の肩を叩いた。

トーマは…この世界での経験があるのだろう。



((はぁ~ユーキ……幽霊に鬼か…ろくな命名じゃない。…

それにパーソナルスペースを全く無視するコイツと同じチームか…。))



ヤツとの会話に疲れた俺は心の中でため息をついた。




【あとがき雑学】


『くわばらくわばら』


平安時代、菅原道真は藤原時平の罠に嵌り、福岡の大宰府に左遷され、失意のうちに亡くなった。

栄華を誇っていた藤原氏だったが、その後時平や時平に繋がる皇太子も急死。更に平安京に、頻繁に落雷があり、政権中枢の内裏には大火事がおき、何人もの人が焼け死んだ。

京の人たちは「道真の祟り」と恐れ慄いた。

町中にも何度も雷が落ちたが、菅原道真の屋敷があったと伝えられる『桑原』だけには、落雷がなかった。


「ここは桑原ですよ」と怒れる道真に訴えれば、雷に打たれない…と当時の人は思ったんでしょうね。

で、『くわばらくわばら』が落雷を受けない(転じて、怒りから逃れる)おまじない言葉として現存している、という事らしいです。


(※諸説あるようです)

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